医療法人の交際費とは?平均額は?いくらまでなら問題ない?注意点は?

この記事の監修者

中込政博
税理士法人シーガル
代表社員 税理士・公認会計士

あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、医療専門の税理士法人シーガルを設立。
税金に関する相談はもちろんのこと、公認会計士ですので、医業経営についてもぜひご相談ください!

遠藤大樹
税理士法人シーガル
代表社員 税理士

医療特化会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、医療専門の税理士法人シーガルを設立。
医師・歯科医師に対する税務顧問の他、相続税申告や相続対策・医業承継も対応できます!

茅ヶ崎駅から徒歩4分の個人開業医・医療法人専門の税理士法人シーガルです。医療法人
医療法人専門の税理士として税務顧問をしていると「他の医療法人の交際費の相場や平均額について教えてほしい」聞かれることが多いです。
そこで今回は、交際費とは、他の医療法人の交際費の相場や平均額、いくらまでなら問題ないか、注意点について解説していきます。

この記事は次の方にオススメです。

・医療法人の交際費の相場や平均額を知りたい方

もくじ

交際費とは?

交際費の定義

医療法人における交際費とは、医療法人の経営に関連して外部の人に接待や贈答などを行ったときの支出をいいます。

交際費の定義については租税特別措置法に規定されています。

【租税特別措置法第61条の4】(交際費等の損金不算入)
6 第一項、第三項及び前項に規定する交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下この項において「接待等」という。)のために支出するもの(次に掲げる費用のいずれかに該当するものを除く。)をいい、第一項に規定する接待飲食費とは、同項の交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用(専ら当該法人の法人税法第二条第十五号に規定する役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。第二号において「飲食費」という。)であつて、その旨につき財務省令で定めるところにより明らかにされているものをいう。
一 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
二 飲食費であつて、その支出する金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額が政令で定める金額以下の費用
三 前二号に掲げる費用のほか政令で定める費用

租税特別措置法第61条の4

租税特別措置法において「交際費等の損金不算入」と記載されているように、会計上は「交際費」として経費になっていたとしても、税金の計算上は「交際費等の損金不算入」として経費にならない部分が発生することがあります。

例:会計上の交際費2,000万円ー損金不算入1,200万円=税金上の交際費(損金算入額)800万円

詳しくは後述の「交際費はいくらまでなら問題ないか」にて解説いたします。

医療法人の交際費の平均額

資本金が1億円未満の利益が出ている医療法人の交際費額の平均は186万円(56,468百万円÷30,423社)となります。

医療法人の交際費の平均額については国税庁 会社標本調査から読み取ることができます。

以下はこの記事執筆時点で最新の令和4年度会社標本調査をもとに利益が出ている医療法人の年間交際費等支出額を一覧にした表です。

この表から読み取ると、資本金が1億円未満の利益が出ている医療法人の交際費額の平均は186万円(56,468百万円÷30,423社)となります。つまり、交際費を1か月あたり15万円以上使っているような場合には業界平均と比較して金額が多いので、税務調査で指摘される可能性が高くなるということです。

つぎは欠損(赤字)が出ている医療法人の年間交際費等支出額を一覧にした表です。

この表から読み取ると、資本金が1億円未満の欠損(赤字)が出ている医療法人の交際費額の平均は143万円(33,916百万円÷23,566社)となります。当然、利益が出ている医療法人よりも欠損が出ている医療法人のほうが交際費は少なくなっています。

交際費はいくらまでなら問題ないか

医療法人の交際費の平均額を超えて交際費を使う医療法人もあると思いますが、交際費はいくらまでなら問題ないのでしょうか。
医療法人の場合、交際費が税金上の経費(損金算入)にできる金額には限りがあります。

交際費の損金参入の上限額

資本金1億円以下の医療法人における交際費の損金参入の上限額は以下のいずれかの金額となります。
1.年間800万円まで
2.交際費のうち、飲食費×50%に相当する金額まで

注:1、2に関係なく、1人あたり10,000円以下の飲食費は経費として認められます。
注:資本金1億円超の医療法人の上限額は「2.交際費のうち、飲食費×50%に相当する金額まで」だけで判定します。

つまり、資本金1億円以下の医療法人の会計上の交際費が2,000万円全額が飲食費だった場合、1を選択すれば800万円まで、2を選択すれば2,000万円の50%である1,000万円まで交際費を損金(税金上の経費)にすることができるため、2のほうが有利です。

ただ、よほど大規模な医療法人でない限り、交際費が年間800万円を超える可能性は少ないので資本金1億円以下の場合にはそこまで気にする必要なないでしょう。

交際費の注意点

医療法人の交際費では注意点がいくつかありますのでご紹介いたします。

注意1:役員の個人的な支出ではないか

役員の個人的な支出の場合には、交際費ではなく役員賞与として判断される可能性があります。

医療法人として支払っている交際費の中に役員の個人的な支出がないか注意しましょう。
たとえば、役員が個人的に友人を招待して食事をしたり、出張を兼ねて家族旅行をした場合などが役員の個人的な支出に該当します。

個人的な支出と判断されたとしても一部が経費として認められないだけであまり影響はないと考えがちですが、実は影響は多岐にわたります。
まず、交際費のなかに役員の個人的な支出がある場合には、それは交際費ではなく役員に対する賞与と判断されます。役員賞与の場合には税務署に対して事前に届け出をしない限り全額損金不算入となります。
また、医療法人では役員賞与として支払ったときに源泉徴収をしなければならなかったため、源泉徴収漏れということにもなります。
そして、交際費として消費税額を消費税の課税仕入れとして控除しているのであれば、役員賞与では課税仕入れとすることはできませんので消費税納付漏れということにもなります。

役員の個人的な支出に該当してしまうと経費にもならず、源泉徴収漏れにもなり、そして消費税納付漏れにもなりますので実務上は「トリプルパンチ」といわれることもあります。

注意2:参加者の氏名、関係性などを説明できるか

医療法人の経営に関連して外部の人に接待を行ったと説明できなければ経費になりません。

租税特別措置法第61条の4(交際費等の損金不算入)では交際費は「その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待」とされています。

【租税特別措置法第61条の4】(交際費等の損金不算入)
6 第一項、第三項及び前項に規定する交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下この項において「接待等」という。)のために支出するもの(次に掲げる費用のいずれかに該当するものを除く。)をいい、第一項に規定する接待飲食費とは、同項の交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用(専ら当該法人の法人税法第二条第十五号に規定する役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。第二号において「飲食費」という。)であつて、その旨につき財務省令で定めるところにより明らかにされているものをいう。
一 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
二 飲食費であつて、その支出する金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額が政令で定める金額以下の費用
三 前二号に掲げる費用のほか政令で定める費用

租税特別措置法第61条の4

事業に関係のある者に対する接待であるかを説明できなければ、交際費には該当せず経費になりませんので説明できるように準備しておきましょう。
具体的には領収書やレシートの裏側に以下のようなメモを残しておくことをオススメしています。

  • 接待の相手先の氏名
  • 相手先との関係性
  • 接待の目的、理由

「反面調査」といって接待を受けた相手先に事実関係を問い合わせることもありますので、嘘のメモを書くことはやめておきましょう。

注意3:持分なし医療法人で純資産額が約1.6億円を超えると800万円の損金算入上限額が使えない

持分なし医療法人は期末純資産額が約1.6億円を超えると800万円の損金算入上限額が使えません。
計算式:(期末総資産簿価ー期末総負債簿価ー当期利益(または損失))×60%

持分なし医療法人は出資金という概念がありませんので、どれだけ医療法人の規模が大きくなったとしても交際費の800万円の損金算入上限額が使えると勘違いされている方も多いのですが、それは誤りです。
法人税法や法人税法施行令で「出資の金額に準ずる額」として計算式が定められており、その計算式で算定された金額を出資金(資本金)の額とみなして判定することになります。

計算式:(期末総資産ー期末総負債ー当期利益(または損失))×60%

つまり、持分なし医療法人の場合には期末純資産額(期末総資産ー期末総負債)が約1.6億円(1億円÷60%)を超えると出資の金額に準ずる額が1億円を超えてしまうことから交際費の800万円の損金不算入額が使えなくなってしまいます。

持分なし医療法人に利益を積み上げたとしても税務上の株価が上昇しないことから毎期利益を積み上げていることも多いと思いますが、交際費の面ではデメリットがありますので注意してください。

まとめ

医療法人の交際費について大枠を理解いただけましたでしょうか。
医療法人においては配当ができないことから毎期利益が積み上がり純資産が多額になることが多いため、交際費だけでなく役員報酬や役員退職金と医療法人に残す利益のバランスを考えることも必要です。

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