開業医はインボイス制度に対応する必要ある?【開業医専門税理士解説】
この記事の監修者
中込政博
税理士法人シーガル
代表社員 税理士・公認会計士
あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、医療専門の税理士法人シーガルを設立。
税金に関する相談はもちろんのこと、公認会計士ですので、医業経営についてもぜひご相談ください!
遠藤大樹
税理士法人シーガル
代表社員 税理士
医療特化会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、医療専門の税理士法人シーガルを設立。
医師・歯科医師に対する税務顧問の他、相続税申告や相続対策・医業承継も対応できます!
茅ヶ崎駅から徒歩4分の個人開業医・医療法人専門の税理士法人シーガルです。
令和5年10月1日より制度が開始されたインボイス制度ですが、何が始まったのか分からない方も多いと思います。
インターネットで検索すると、医療法人・個人開業医はインボイス制度に対応する必要がないと出てきますが、本当に正しいのでしょうか。
今回は、インボイス制度の概要、インボイス制度が医療法人・個人開業医に与える影響を詳しく解説していきます。
この記事は次の方にオススメです。
・医療法人の理事長または個人開業医だが、
インボイス制度が分からず困っている先生
消費税の基本的な考え方
インボイス制度について説明する前に、インボイス制度と密接な関係にある消費税の基本的な考え方を整理したいと思います。
消費税とは、商品を売ったりサービスを提供するなどの取引に対して課税される税金です。
消費税は、最終的に商品を利用したりサービスの提供を受けた消費者が負担し、事業者が納付します。
図で表すと、消費者Dさんが99,000を支払うとそのうち9,000が消費税になりますので、生産者A社が納付した3,000、問屋B社が納付した1,000、スーパーC社が納付した5,000の合計9,000を負担しているのは消費者Dさんになるということです。
消費税の納付額計算方法
消費税は消費者ではなく各事業者(生産者A社、問屋B社、スーパーC社)が納付することになりますが、納付額は以下のように計算します。
仕入税額を差し引くことを仕入税額控除といいます。
仕入税額控除をするための要件
仕入税額控除(売上税額から仕入税額を差し引く)を行うには要件があるのですが、インボイス制度が開始されたことにより、仕入税額控除の要件が変わったということが一番大きなポイントになります。
今までとは異なり、令和5年10月からはインボイスの保存が必要になります。
裏を返せばインボイスの保存ができていないと仕入税額控除をすることができないため、消費税の納付額が増えてしまいます。
なぜインボイス制度が導入されるのか
現在、日本国内においては消費税10%と8%が混在しておりますので、買い手(請求書、領収書の受領者)において消費税の仕入税額控除(売上税額から仕入税額を差し引くこと)の金額を正しく計算するために導入されました。
「正しく計算するために導入される」と記載しているとおり、インボイス制度導入前の消費税の納付額の計算において、一部正しく計算できていない点があります。
言葉だけではなかなか理解がしづらいので、具体例をもとに解説いたします。
インボイスとして認められるために
必要な記載事項
今後はインボイスとして認められた書類の保存が必要ですので、単に受け取った領収書や請求書を保存するだけでは、仕入税額控除をすることはできなくなります。
では、どういった記載事項があればインボイスとして認められるのでしょうか。
適格請求書に必要な記載事項は以下のとおりです。(下線を引いている箇所が、インボイス制度開始に伴い追加された記載項目です。)
①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
②取引年月日
③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④税率ごとに区分して合計した対価の額及び適用税率
⑤税率ごとに区分した消費税額等
⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
記載の変更点のうち一番大事なのは、登録番号の記載が必要な点です。
登録番号は消費税を納める義務のある事業者が申請をすることで取得できる番号になります。
例えば、ご主人1人で切り盛りしている小料理店なので年間の売上規模も大きく無く、消費税を納めてなさそうなのに、消費税が10%分が請求された経験がありませんか?
実は、インボイス制度導入後は登録番号の記載有無によって、その事業者が消費税を納めているのかどうか確認することができるようになるのです。
インボイス制度導入後の計算方法
(一般会社の場合)
インボイス制度導入前の消費税の納税額について整理したいと思います。
問屋である当社は生産者A社から仕入れたものをスーパーに販売しますが、当社は売上規模も小さいので消費税免税である場合を見てみましょう。
スーパーC社は当社が発行した請求書を確認しても、当社が消費税を納税している事業者かどうか確認する手段が無いので、仕入れた際に支払った15,000から割り戻した10%分の1,000を納付額の計算上、差し引くことができています。
では、インボイス制度が始まるとどう変わるのでしょうか。
スーパーC社は当社が発行した請求書を確認すると、登録番号の記載がないことがわかりました。
そうすると「インボイスとして認められるために必要な記載事項」の要件を満たしていませんので、インボイス制度開始前まで差し引くことが出来ていた1,500を差し引くことが出来なくなってしまいます。
したがって、スーパーC社の納付額は1,000から2,500に増えてしまうのです。
こうなってしまうと、スーパーC社は当社が免税であることが理由で、消費税の納付額が増えてしまっておりますので、当社に対して「消費税を納税して登録番号の記載をしてほしい」とか「消費税分だけ値引き(この例でいうと15,000から1,500を差し引いた13,500)してほしい」と要請してくる可能性があります。
このようにインボイス制度が始まることで事業者の取引価格にも影響が出てしまうので、インボイス制度開始前は色々と反対運動が起きておりました。
インボイス制度導入後の計算方法
(医療法人または個人開業医の場合)
今度は医療法人または個人開業医の場合どうなるか整理したいと思います。
当医院は医薬品卸A社から仕入れた医薬品を使用してCさんに保険診療を行いますが、当医院は自費診療が少なく消費税免税である場合を見てみましょう。
インボイス制度開始前、開始後であっても患者Cさんは消費者であり消費税の納付はゼロですので、このケースですと納付額は何ら変わらないのです。
そのため、医療法人または個人開業医はインボイス制度に対応する必要がないと言われています。
ただ、企業向け健康診断やワクチン接種を多額に行っている医院ですと消費税を納める義務がある場合もありますので、インボイス制度に対応していないと相手先の消費税納付額が増えてしまうことになります。
おわりに
医療法人または個人開業の場合のインボイス制度について、理解できましたでしょうか。
インボイス制度は消費税と関係のある制度になりますので、理解するのが大変な制度です。
ちゃんと理解できている税理士も多くはないと感じています。
弊社は医療に特化した税理士法人であるため、インボイス制度に限らず医療経営全般の知識もありますので、ぜひご相談ください。
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