【開業医・医療法人専門税理士解説】節税で賢く手取りを増やす方法

この記事の監修者

中込政博
税理士法人シーガル
代表社員 税理士・公認会計士

あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、医療専門の税理士法人シーガルを設立。
税金に関する相談はもちろんのこと、公認会計士ですので、医業経営についてもぜひご相談ください!

遠藤大樹
税理士法人シーガル
代表社員 税理士

医療特化会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、医療専門の税理士法人シーガルを設立。
医師・歯科医師に対する税務顧問の他、相続税申告や相続対策・医業承継も対応できます!

茅ヶ崎駅から徒歩4分の個人開業医・医療法人専門の税理士法人シーガルです。

比較的所得(利益)が多くなりやすい個人開業の場合には、少しでも節税をしたいと考えている方も多いのではないでしょうか。


そこで今回は個人開業医にオススメする節税方法、個人開業の経費として認められるもの、個人開業医の節税対策の注意点を解説していきます。

この記事は次の方にオススメです。

・少しでも節税したいと考えている医師・歯科医師の方

・今の顧問税理士から節税に関してアドバイスがもらえていないと不安な医師・歯科医師の方

もくじ

個人開業医の節税対策の重要性

個人開業医には、所得税、消費税、事業税、住民税、固定資産税など様々な税金がかかってきますが、特に所得税の対策としての節税対策がとても重要です。

ご存知の方も多いと思いますが、収入が多くなればなるほど所得税も多くなる税金です。

そのため、所得税は累進課税方式とも言われます。

以下の図のとおり、段階的に所得税率が変わっていき、所得が4,000万円超になると45%の税率がかかってきます。

参考:国税庁 所得税の税率

個人開業医の場合には比較的所得が高額になりやすいので、節税対策が重要というワケです。

個人開業医にオススメする節税方法

医療法人化する

個人開業医である程度所得が出ている医師・歯科医師の場合には医療法人化することをオススメします。

個人開業医には所得税がかかってきますが、医療法人の場合には法人税がかかってきます。

個人開業医の場合には、利益(所得)が増加するにつれて所得税率が増加するのに対し、医療法人は利益が800万円までであれば法人税率が15%、それ以降はどれだけ利益が増加しても法人税率は23.2%になります。

そのため、利益(所得)金額が900万円を超えると個人開業医より医療法人のほうが納める所得税が少なくなるのです。


医療法人化に関する詳細は「【医療専門税理士が徹底解説】医療法人化のメリット・デメリット20選」にて解説しておりますのでご興味がありましたら、ご確認ください。

概算経費の特例(租税特別措置法26条)の活用

個人開業医である医師・歯科医師は社会保険診療報酬が年5,000万円以下で、かつ、総収入金額が7,000万円以下の場合には、概算経費によって所得を計算することができます。

一般的に概算経費の特例、措置法26条、特措法26条といわれている特例です。

概算経費の特例を適用するための要件

概算経費の特例を適用するための要件として主なものは以下の3つです。

  1. 医業または歯科医業を営む個人事業主や医療法人であること
  2. 社会保険診療収入が5,000万円以下であること
  3. 総収入(※)が7,000万円以下であること

※総収入金額とは社会保険診療収入のほかワクチン接種収入や健康診断収入などの自費収入も含めた合計額のことをいいます。

社会保険診療に関する概算経費の計算方法

概算経費の特例は、小規模な診療所の事務処理の軽減を図ることを目的に作られた特例となりますので、以下の速算表に当てはめて計算可能です。

社会保険診療報酬社会保険診療の
概算経費率の速算表
2,500万円以下社会保険診療報酬×72%
2,500万円超3,000万円以下社会保険診療報酬×70%+50万円
3,000万円超4,000万円以下社会保険診療報酬×62%+290万円
4,000万円超5,000万円以下社会保険診療報酬×57%+490万円

実額経費と概算経費のどちらか有利な方を使える

概算経費の特例の使いやすい点は、実額経費と概算経費のどちらを使っても問題ないという点です。

つまり、確定申告の時期に年間で実際にかかった経費を計算したあとに、概算経費を計算しどちらか多い方を経費として申告することができます。

そのため、比較的経費が少ない診療科である精神科では実額経費よりも概算経費のほうが多いため、実際に支払っている金額以上に経費として申告することができることになり、結果として節税対策にも効果があります。

親族へ支給する給与額の見直し

個人開業医の医師・歯科医師の配偶者が診療所の受付や経理・事務の手伝っており、その配偶者に給与を支払っているパターンが多いのではないでしょうか。

この配偶者に支払っている給与額を見直しすることでも、節税効果があります。

例えば以下のように、親族合計では額面3,000万円を支払っている場合でも、配偶者Bの額面金額を200万円から500万円にすることで所得税を73万円も節税することが可能になります。

ただし、個人開業医が親族に支払う給与は他の従業員と比較して多すぎると経費として認められないためご注意ください。

医療法人の場合には、親族が理事に就任することで経営責任も負うことから他の従業員と比較して給与を多くすることも可能ですが、個人開業医の場合には経営責任を負うのは医師または歯科医師本人のみですので、親族に対してプラスαで払ってはいけないイメージです。

賃上げ税制の活用

個人開業医が従業員に払う給与額を前年より増加させた場合、一定の要件を満たしていればその増加額の一部を所得税から控除することができる制度のことを「賃上げ税制」といいます。

賃上げ税制の詳細については細かい点が多いため割愛いたしますが、気になる方は経済産業省が出している「中小企業向け 賃上げ促進税制ご利用ガイドブック」をご参照ください。

賃上げ税制の適用要件のイメージとしては従業員(親族は除く)に支払った1年間の給与・賞与総額が前年と比較して1.5%以上増加した合には増加した給与・賞与総額の15%を所得税から控除(ただし、所得税の20%が上限)できます。

また、もし従業員(個人開業医本人や親族は除く)の研修費用を負担しており、1年間の研修費用総額が前年と比較して10%以上増加した場合には控除率が10%と上乗せされ、増加した給与・賞与総額の25%を所得税から控除(ただし、所得税の20%が上限)できます。

確定申告を顧問税理士に頼んでいたとしても、そもそも賃上げ促進税制の検討すらしていない税理士も多いのでご注意ください。

従業員に対する生命保険の加入

個人開業医本人に対する生命保険の加入は経費にはなりませんが、生命保険料控除として保険料を10万円支払った場合には最大5万円まで控除されています。

しかし、従業員に対する生命保険を加入する場合には、金額の上限は無くその契約内容に応じて支払った保険料のうち全額または一部を経費として計上することが可能ですので、節税になります。

また、副次的な効果として従業員の福利厚生にもなるという点がメリットです。

私の経験ですと、従業員に対する福利厚生に加入している医院の方が、給料が他の医院より低くてもが採用も有利になり、短期で退職せず長期に渡って働いて貰える傾向が多いと感じています。

個人開業医の経費として認められるもの

個人開業医の場合の経費の考え方の基本

個人開業医の場合には所得税法という法律が適用されますが、所得税法第45条第1項および所得税法施行令第96条において所得税法における経費の考え方の基本が規定されておりますので見ていきましょう。

所得税法第45条
居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は、その者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない。
1項:家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの
⇛私用分については経費として計上できない。

所得税法施行令第96条
法第45条第1項第1号(必要経費とされない家事関連費)に規定する政令で定める経費は、次に掲げる経費以外の経費とする。
1項:家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費
⇛支払った金額のうち大部分が事業用で、かつ、私用と事業用とで明確に分けることが出来る場合には、事業用については経費として計上できる。

つまり、私用と事業用が混在している場合には、明確に分けることができる場合に限り、事業用分のみを経費計上することができるのです。

これは個人開業医の経費計上ではいちばん大事なポイントですので、ぜひ覚えてください。

交際費

交際費は接待や贈答を目的とした経費で、近隣の医院や大学病院の医師・歯科医師の方との食事代やお年賀・お中元・手土産などが例として挙げられます。

個人開業医の場合、患者を診療することが事業になりますので、事業用と説明する場合には患者を診療するために交際費が必要だというゴールで明確に説明できる必要があります。

私用と事業用の線引が難しいため税務調査でもよく論点になりますので、弊社では交際費のレシートの裏面に、誰と行ってどんな話をしたかを書いていただくようにお伝えしています。

旅費交通費

旅費交通費は医院への通勤のための交通費や、出張に伴う交通費・宿泊費などが挙げられます。

個人開業医の場合、車で通勤する方も多いと思いますが、その車で休みの日に買い物に行っている場合にはガソリン代も事業用と私用で分けて経費計上することが必要です。

弊社では年間の診療日数や毎日の往復通勤距離で事業用と私用で区分していただくようにお伝えしています。

福利厚生費

福利厚生費は健康診断や従業員の福利厚生などが挙げられます。

小規模医院の場合には、医院で働いている人が医師・歯科医師本人と配偶者の2名であることも多いかと思います。

その場合の福利厚生費として支払ったものが家族に対して支払ったものですので、ほぼ全てが私用として判断される可能性が高く、経費計上することは難しいのでご注意ください。

福利厚生費として最大限利用したいのであれば、親族以外の従業員も雇用し、全従業員平等に福利厚生を利用できるようにしていただくことをオススメします。

減価償却費

減価償却費は一括で費用にならない医療機器や通勤時の車を複数年に按分して経費計上するものです。

医療機器の場合には、第三者から見ても事業用と分かるため問題はないですが、通勤時に使用している車両については注意が必要です。

「旅費交通費」と重複いたしますが、その車で休みの日に買い物に行っている場合には車の減価償却費も事業用と私用で分けて経費計上することが必要です。

弊社では年間の診療日数や毎日の往復通勤距離で事業用と私用で区分していただくようにお伝えしています。

個人開業医の節税対策の注意点

節税と脱税の違いを理解

節税したい!とご相談に来られる医師・歯科医師の中には節税ではなく、脱税になっている方も多いです。

節税は法律で認められている範囲内で税金を少なくする行為ですが、脱税は法律で認められていないのをわかった上で不法に税金を少なくする行為です。

近隣の医院の医師・歯科医師の方と食事をした際に支払った金額を交際費として経費計上するのであれば、それは「節税」ですが、本当は家族で食事をしたのに医師・歯科医師の方と食事したとウソをついて交際費として経費計上するのであればそれは「脱税」です。

脱税の罰則はとても厳しく、本来納めるべき所得税を納付するのはもちろんのこと、延滞税、加算税、刑事罰などがかかる場合もございます。

過度な節税は資金繰りが悪くなることも

所得税をなんとか減らしたい!として過度な節税を行ってしまうと資金繰りが悪くなることもあります。

仮に所得税を減らすために500万円の交際費を使った場合、所得税は最大225万円節税できていますので、500万円使ったけど支払う税金が225万円減ったので差し引き275万円のお金が出ていっています。

しかし、その交際費が本来必要ない交際費だった場合はどうでしょうか。

500万円の交際費を使用しなければそのまま500万円お金が浮くわけです。

所得税は累進課税方式ですので高所得者になる個人開業医の方の所得税も高くなるため、節税をしたい気持ちもよく分かりますが、それが本当に必要なものかどうかは一度考えてみてください。

まとめ

短期的な節税対策を行うと資金繰りも悪くなり、結果として節税メリット以上のデメリットになる可能性が高いです。

個人開業医の節税対策を行う上では、ぜひ長期的な視点で計画的に実施することが必要です。

私たち、医療専門の税理士法人シーガルは医療専門の代表税理士がお客様のことを直接担当することを約束しており、担当者が変わることはありませんので、長期的な節税計画であっても対応可能です。

ご興味を持っていただけましたら、ぜひご相談ください。

医療専門の税理士法人シーガルでは
代表税理士が直接お客様を担当いたします。
初回相談は完全無料です。

ご興味を持っていただけましたら、
お問い合わせフォームよりお話を聞かせてください。

もくじ