措置法(特措法)26条とは?概算経費特例の節税を税理士が解説

この記事の監修者

中込政博
税理士法人シーガル
代表社員 税理士・公認会計士

あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、医療専門の税理士法人シーガルを設立。
税金に関する相談はもちろんのこと、公認会計士ですので、医業経営についてもぜひご相談ください!

遠藤大樹
税理士法人シーガル
代表社員 税理士

医療特化会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、医療専門の税理士法人シーガルを設立。
医師・歯科医師に対する税務顧問の他、相続税申告や相続対策・医業承継も対応できます!

医師・歯科医師専門の税理士法人シーガルです。

一時期X(Twitter)でも話題になっていましたが、租税特別措置法第26条(以下、「措置法26条」という)について知っていますでしょうか?


措置法(特措法)26条は実際に支払っていなくても経費として認められる部分があることから、「概算経費の魔法の特例」ともいわれます。

診療科目によっては措置法26条を上手く活用することで、大きく節税することができます。

そこで今回は、措置法26条とは、活用した場合の節税メリット、計算方法、注意点について解説していきます。

この記事は次の方にオススメです。

・措置法(特措法)26条について知りたい方

もくじ

措置法26条とは

措置法26条とは「概算経費の魔法の特例」とも言われています。

措置法26条の特例を利用するには一定の条件はあるものの、その名のとおり「概算経費」の額が「実際に支払った経費の額(以下、「実際経費」という)」を上回る場合には、概算経費の額を経費として申告することで節税できるので、非常に有利な特例となります。

利用するための条件

措置法26条を利用するための条件として主なものは以下の3つです。

  1. 医業または歯科医業を営む個人事業主や医療法人であること
  2. 社会保険診療収入が5,000万円以下であること
  3. 総収入(※)が7,000万円以下であること

※総収入金額とは社会保険診療収入のほかワクチン接種収入や健康診断収入などの自費収入も含めた合計額のことをいいます。

医療法人においても条件を満たせば措置法26条を利用できますが、医療法人の場合には役員報酬が経費として計上できることから、措置法26条を利用することでむしろ不利になるケースが多いため、医療法人で利用することは少ないでしょう。

措置法26条の計算方法

社会保険診療収入と自由診療収入のどちらの収入もある場合を前提に計算方法を解説します。

この場合には、自由診療収入にかかる経費と社会保険診療にかかる経費とに分けて計算します。

自由診療収入割合の計算

自由診療収入割合の計算においては①収入割合による計算②診療実日数割合による計算のいずれか有利な方を採用可能です。

収入割合による計算

自由診療収入と社会保険診療収入の金額をもとに自由診療割合を計算いたします。

診療実日数割合による計算

自由診療を行った日数と社会保険診療を行った日数をもとに自由診療割合を計算いたします。

調整率

調整率は診療科目に応じて以下のように定められております。

診療科目調整率
産婦人科、歯科75%
眼科、外科、整形外科80%
上記以外(内科、皮膚科など)85%

自由診療収入にかかる概算経費の計算

自由診療割合をもとに自由診療収入にかかる概算経費を計算いたします。

社会保険診療収入にかかる概算経費の計算

社会保険診療収入にかかる概算経費については以下の表から簡単に計算可能です。

社会保険診療報酬概算経費率の速算表
2,500万円以下社会保険診療報酬×72%
2,500万円超3,000万円以下社会保険診療報酬×70%+50万円
3,000万円超4,000万円以下社会保険診療報酬×62%+290万円
4,000万円超5,000万円以下社会保険診療報酬×57%+490万円

具体例による計算方法の確認

内科の診療所を例に計算方法を確認して行きたいと思います。

各数値の例は以下のとおりです。

社会保険診療収入35,000,000円
自由診療収入2,000,000円
原価および経費総額18,500,000円
うち 自由診療収入分の経費300,000円
うち 社会保険診療収入分の経費700,000円
うち 共通経費17,500,000円
調整率85%(内科)

<自由診療割合の計算(収入割合による計算)>
2,000,000円÷(35,000,000円+2,000,000円)×85%=4.59%


<自由診療収入にかかる概算経費>
(18,500,000円-1,000,000円)×4.59%+300,000円=1,103,250円

<社会保険診療収入にかかる概算経費>
35,000,000円×62%+2,900,000円=24,600,000円


<措置法26条を利用した場合の概算経費の総額>
1,103,250円+24,600,000円=25,703,250円

措置法26条を利用した場合の節税メリット

「具体例による計算方法の確認」の具体例を元に節税メリットを考えてみましょう。

社会保険診療収入35,000,000円
自由診療収入2,000,000円
原価および経費総額18,500,000円
うち 自由診療収入分の経費300,000円
うち 社会保険診療収入分の経費700,000円
うち 共通経費17,500,000円
調整率85%(内科)

<実額経費を元にした所得税の計算>
35,000,000円+2,000,000円-18,500,000円=18,500,000円(事業所得)
18,500,000円×40%-2,796,000円=4,604,000円(所得税)

<概算経費を元にした所得税の計算>
35,000,000円+2,000,000円-25,703,250円=11,296,750円(事業所得)
11,296,000円×33%-1,536,000円=2,191,680円(所得税)


概算経費で申告すると2,412,320円節税可能

注意点

実額経費も把握しなければ有利不利の判定ができない

ご相談に来られる方の中には、措置法26条を利用すれば必ず節税効果があると思っている方もいらっしゃいますが、それは誤りです。

「措置法26条を利用した場合の節税メリット」の計算例でも表しているとおり、概算経費と実額経費を比較して有利な方を利用できますので、節税効果を最大限に活用するには基本的には実額経費の把握も必要です。

医療法人であっても利用できる

勘違いしている税理士も多いですが措置法26条の特例は個人開業医だけではなく、医療法人においても利用できます。

しかしながら、医療法人の場合で措置法26条の特例を利用したほうが節税になるパターンは極めてまれです。

医療法人の場合には、理事長である医師や歯科医師ご本人の役員報酬が経費として計上されておりますので、概算経費よりも実額経費のほうが多いことが多いためです。

一番メリットがある診療科目とは

措置法26条を利用することで一番メリットがある診療科目は、精神科や心療内科です。

結局のところ、実額経費が多くなりやすい診療科目においては措置法26条を利用したとしても、大きな節税効果は生まれません。

しかしながら、精神科や心療内科は多額の医療機器を購入したり、広いテナントを借りる必要もないことから他の診療科目と異なり、実額経費がかかりづらいため節税効果が大きいです。

ただ、措置法は政策的な観点から税に関する時限立法として位置づけられていることもあり、いつ廃止や改正がされるかもわかりません。

そのため、現時点で措置法26条を利用して大きな節税効果が期待できるという理由だけで、精神科や心療内科で開業するのは危険です。

まとめ

措置法26条を利用することで大きな節税効果が生まれる場合があることを理解していただけましたでしょうか。

なかには措置法26条を利用することで逆に納税額が増える方もいらっしゃいますので、ぜひ税理士にご相談いただき間違いのない選択をしてください。

私たちは医師・歯科医師専門の税理士法人ですので、今回ご説明した措置法26条の特例以外の特例についても熟知しております。

税務顧問業務のほか、医院経営に関するご相談、医療法人設立、事業(医業)承継対策も対応可能ですので、ご興味をもっていただけましたら、ぜひご相談ください。

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