【絶対に知っておきたい】医療法人理事長の退職金相場(功績倍率法)とは

この記事の監修者

中込政博
税理士法人シーガル
代表社員 税理士・公認会計士

あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、医療専門の税理士法人シーガルを設立。
税金に関する相談はもちろんのこと、公認会計士ですので、医業経営についてもぜひご相談ください!

遠藤大樹
税理士法人シーガル
代表社員 税理士

医療特化会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、医療専門の税理士法人シーガルを設立。
医師・歯科医師に対する税務顧問の他、相続税申告や相続対策・医業承継も対応できます!

医師・歯科医師専門の税理士法人シーガルです。

医療法人を設立してから数十年経つと親族内承継やM&Aにより理事長を退職することになりますが、ご自身がどれくらいの役員退職金をもらうことができるのか把握しておりますでしょうか。


役員退職金を医療法人の経費にするためには役員退職金の相場を理解しておくことが極めて大切です。

この記事では、役員退職金とは、役員退職金のメリット・デメリット、役員退職金相場と経費として認められるために必要なことを解説していきます。

この記事は次の方にオススメです。

・役員退職金の相場がわからない方

もくじ

医療法人の役員退職金とは

医療法人の役員退職金とは理事長・理事・監事などの役員であった人が任期満了や辞任などの理由によって役員を退任した場合に支払われる金銭です。

医療法人において役員退職金を支給する場合には、役員退職金規定の作成や社員総会および理事会の決議が必要となります。

役員退職金として支給するメリット

役員退職金として支給するメリットを理事長個人側、医療法人側に分けて記載します。

理事長個人側のメリット

他の収入と比較すると退職金は優遇されているため手取りが多くなる

医療法人の理事長であればその医療法人から支払われている役員報酬が年間2,400万円だとすると、所得税・住民税は920万円、社会保険料は160万円を負担することになるため、手取り額では1,320万円、手取りとして残る割合は55%(1,320万円÷2,400万円)となるのです。

しかしながら、医療法人の理事長として20年就任した場合の役員退職金として1億円が支払われるとすると、所得税・住民税は2020万円、社会保険料の負担はゼロとなるため、手取り額では7,980万円、手取りとして残る割合は79%(7,980万円÷10,000万円)となるのです。

このように、役員退職金における所得税・住民税、社会保険料は役員報酬における所得税・住民税、社会保険料よりも優遇されていることから手取りが多くなることがメリットです。

役員退職金の所得税・住民税の計算式は以下のとおりですので、ご参考にしてください。

医療法人側のメリット

多額な役員退職金が経費として認められれば節税効果がある

医療法人の役員退職金は1億円を超えることもあり、経費として認められれば医療法人の利益を圧縮することが可能になるため医療法人が本来収めなければならない、法人税等の節税効果がとても大きいです。

また、持分あり医療法人の場合に役員退職金を支給すると一時的に純資産価額が引き下げられることにより出資持分の価額も引き下げられ、出資持分の贈与もしやすくなります。

経費として認められるために必要な考え方については「役員退職金が医療法人の経費として認められるには「相当な額(相場)」であることが必要」の箇所で解説いたします。

退職金は社会保険料の負担がないことから医療法人の半額負担もない

理事長個人側のメリットでも記載いたしましたが、退職金は社会保険料の負担がありません。

社会保険料は労使折半という考え方により、社会保険料の総額を労働者(従業員、役員)と使用者(医療法人)とで半額ずつ負担することになりますが、そもそも退職金は社会保険料の負担がないことから、医療法人からしても役員報酬で支給するより役員退職金で支給するほうが社会保険料の負担が少なくなります。

役員退職金として支給するデメリット

理事長個人側のデメリット

ご逝去されるまでに役員退職金を使いきれないと相続財産になり相続税が増えてしまう

理事長個人側のデメリットというものはあまり無いですが、強いて挙げるとすると役員退職金をご逝去されるまでに使い切れない場合、相続財産になり相続税が増えてしまいます。

医療法人側のデメリット

役員退職金の支給原資である多額の金銭を準備しておく必要がある

理事長個人に対して役員退職金を支払おうとしても、その原資である金銭が医療法人に蓄えられていない場合には支払うことができません。

一般的には過去からの剰余金のほか、保険金で役員退職金の準備をしておくことが多いです。

「原資が無く役員退職金を支給できない!」ということがないように、前もって準備しておきましょう。

役員退職金が医療法人の経費として認められるには「相当な額(相場)」であることが必要

法律上の記載について

役員退職金については法人税法第34条2項において定められています。

<参考>
法人税法第34条
2 内国法人がその役員に対して支給する給与(前項又は次項の規定の適用があるものを除く。)の額のうち不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

つまり、役員に支給する役員退職金について、不相当に高額な部分については経費として認められないということです。

役員退職金の相当額の計算方法「功績倍率法」=退職金相場

不相当に高額とされない、つまり、相当な役員退職金の計算方法として裁判例では功績倍率法という方法を重視しており、実務上も功績倍率法を使用することが多いです。

功績倍率法による役員退職金の相当額の計算は以下のとおりです。

つまり、退職前最後の役員報酬が月額250万円で勤続年数が20年の理事長が退任される場合に、功績倍率法を用いた役員退職金の相当額を計算すると1億5,000万円ということになります。

功績倍率については、昭和55年5月26日の東京地裁判決において示された社長3.0、専務2.4、常務2.2、平取締役1.8、監査役1.6という功績倍率が最高裁においても支持されたことにより、一般的にはこの功績倍率を用いることが多いです。

役員退職金の相場を考える際にも功績倍率法で考えれば問題ございません。

その他の判断基準としての形式基準と実績基準

その他に「不相当に高額」と判断される場合の判断基準として、形式基準と実質基準の2つがあります。

そのため、功績倍率法により計算したからといって必ずしも「相当な役員退職金」ということは出来ず、形式基準と実績基準をクリアしてはじめて「相当な役員退職金」として経費に認められるということです。

形式基準

社員総会等の決議または定款の規定により定められている役員退職金の限度額以内となっていることが必要です。

実質基準

以下の4つの条件に照らし、役員報酬として相当であると認められる金額となっていることが必要です。

  • 役員(理事長・理事・監事)の職務の内容
  • 会社(医療法人)の収益
  • 使用人(従業員)に対する給料の支給状況
  • 事業規模が類似する同業他社の役員退職金の支給状況

まとめ

役員退職金は受け取る側の税メリットがとても大きい一方で、不相当に高額と判断されてしまうと医療法人の経費として認められなくなり法人税等の追加納税が発生してしまうので、支給する前にはよく注意してください。

私たちは医師・歯科医師専門の税理士法人ですので、税務顧問業務のほか、医院経営に関するご相談、医療法人設立、一般社団法人による診療所開設、事業(医業)承継対策も対応可能です。

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