【医療専門税理士解説】医療法人の理事・監事・社員の責任とリスク

この記事の監修者

中込政博
税理士法人シーガル
代表社員 税理士・公認会計士

あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、医療専門の税理士法人シーガルを設立。
税金に関する相談はもちろんのこと、公認会計士ですので、医業経営についてもぜひご相談ください!

遠藤大樹
税理士法人シーガル
代表社員 税理士

医療特化会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、医療専門の税理士法人シーガルを設立。
医師・歯科医師に対する税務顧問の他、相続税申告や相続対策・医業承継も対応できます!

個人開業医・医療法人専門の税理士法人シーガルです。

社団医療法人の場合には医療法によって理事・監事・社員を就任させる必要がありますが、どういった責任(義務)やリスクが存在するのか把握していますでしょうか。


知り合いに頼まれたからといって気軽に就任するのは極めて危険です。

そこで今回は、医療法人の理事・監事・社員の関係と役割、役員が負う責任(義務)とリスクを解説していきます。
この記事は次の方にオススメです。

・知り合いや家族に頼まれて理事や監事に就任してほしいといわれている方

もくじ

医療法人の理事・監事・社員の関係

社団医療法人の場合には、理事・監事・社員を置くことが求められており、それぞれの関係は以下の図で表すことができます。

医療法人の社員の役割

医療法人の社員は最高意思決定機関ともいわれます。

社員は社員総会で他の社員から選任を受け、就任(入社)することが可能です。


社員という名前が大変ややこしく、従業員を指すと勘違いされる方もいるのですが実は違います。

医療法人における社員とは株式会社における株主と同じようなものであり、社員は社員総会において1人につき1議決権を有しています。


社員総会では医療法人の運営に関する重要な事項が決議されますが、主なものは以下のとおりです。

  • 定款の変更
  • 基本財産の設定及び処分(担保提供を含む。)
  • 借入金額の最高限度の決定
  • 社員の入社及び除名
  • 本社団の解散
  • 他の医療法人との合併契約の締結
  • 理事、監事の選任・解任
  • その他重要な事項

医療法人の理事(理事長)の役割

医療法人の理事は執行機関ともいわれ、理事は株式会社における取締役、理事長は代表取締役と同じようなものです。

理事は社員総会で社員から選任を受け就任し、理事長は理事会で他の理事からの互選により就任することになります。

理事会では医療法人の業務執行に関する意思決定が決議されますが、主なものは以下のとおりです。

  • 医療法人の業務執行の決定
  • 理事長の選定及び解職
  • 重要な財産の処分・譲受け
  • 多額の借財
  • 重要な役割を担う職員の選任・解任
  • 従たる事務所その他の重要な組織の設置・変更・廃止
  • 定款の定めに基づく役員等の責任の免除

医療法人の監事の役割

医療法人の監事は監査機関ともいわれ、株式会社における監査役と同じようなものです。

監事は社員総会で社員から選任を受け就任することになります。

監事は医療法人の重要な会議に出席し、理事等の職務執行の状況の確認や重要な決算書類等を閲覧することにより、医療法人の事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書の監査を行います。

医療法人の役員の責任(義務)とリスク

理事と監事は医療法人の役員となりますが、医療法人の役員が負う責任(義務)とリスクは、対 医療法人,社員と対 第三者の2つに分けられるため分けて解説します。
なお、社員は役員ではないことから責任(義務)を負うことは基本的にありません。

役員が医療法人,社員に対して負う責任(義務)とリスク

役員は医療法人,社員に対して以下の5つの義務を負っており、その義務を果たせない場合には医療法人や社員から訴訟が提起される可能性があります。

①善管注意義務(医療法46条の5第4項)

医療法46条の5
4 医療法人と役員との関係は、委任に関する規定に従う。

医療法人は理事や監事などの役員に対して一定の職務執行を委任するという委任関係にあります。
委任関係にあると「善良な管理者としての注意義務」の略称である善管注意義務を負うこととなり、医療法人の役員であればある程度高いレベルの注意義務が課せられることになります。

②報告義務(医療法46条の6の3)

医療法46条の6の3
理事は、医療法人に著しい損害を及ぼすおそれのある事実があることを発見したときは、直ちに、当該事実を監事に報告しなければならない。

③忠実義務(医療法46条の6の4、一般社団法人法83条)

医療法46条の6の4
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第七十八条、第八十条、第八十二条から第八十四条まで、第八十八条(第二項を除く。)及び第八十九条の規定は、社団たる医療法人及び財団たる医療法人の理事について準用する。この場合において、当該理事について準用する同法第八十四条第一項中「社員総会」とあるのは「理事会」と、同法第八十八条第一項中「著しい」とあるのは「回復することができない」と読み替えるものとし、財団たる医療法人の理事について準用する同法第八十三条中「定款」とあるのは「寄附行為」と、「社員総会」とあるのは「評議員会」と、同法第八十八条の見出し及び同条第一項中「社員」とあるのは「評議員」と、同項及び同法第八十九条中「定款」とあるのは「寄附行為」と、同条中「社員総会」とあるのは「評議員会」と読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。
一般社団法人法83条
理事は、法令及び定款並びに社員総会の決議を遵守し、一般社団法人(医療法人)のため忠実にその職務を行わなければならない。

④競業避止義務(医療法46条の6の4、一般社団法人法84条1項1号)

一般社団法人法84条
理事は、次に掲げる場合には、社員総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。

1 理事が自己又は第三者のために一般社団法人(医療法人)の事業の部類に属する取引をしようとするとき。

⑤利益相反取引回避義務(医療法46条の6の4、一般社団法人法84条1項2号,3号)

一般社団法人法84条
理事は、次に掲げる場合には、社員総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。

2 理事が自己又は第三者のために一般社団法人(医療法人)と取引をしようとするとき。
3 一般社団法人(医療法人)が理事の債務を保証することその他理事以外の者との間において一般社団法人(医療法人)と当該理事との利益が相反する取引をしようとするとき。

役員が第三者に対して負う責任(義務)とリスク

役員は第三者に対しては医療法48条の特別責任を負っており、その責任を果たせない場合には第三者から訴訟が提起される可能性があります。

医療法46条の5
1 医療法人の評議員又は理事若しくは監事(以下この項、次条及び第四十九条の三において「役員等」という。)がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があつたときは、当該役員等は、これによつて第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
2 次の各号に掲げる者が、当該各号に定める行為をしたときも、前項と同様とする。ただし、その者が当該行為をすることについて注意を怠らなかつたことを証明したときは、この限りでない。
① 理事 次に掲げる行為
イ 第五十一条第一項の規定により作成すべきもの(貸借対照表、損益計算書など)に記載すべき重要な事項についての虚偽の記載
ロ 虚偽の登記
ハ 虚偽の公告
② 監事 監査報告に記載すべき重要な事項についての虚偽の記載

悪意又は重大な過失があって初めて役員が第三者に損害賠償責任を負うことになりますので、それ以外の重大ではない軽度の過失によって発生した損害賠償まで負うことはありません。

まとめ

医療法人の役員に就任すると少なからず責任(義務)を負い、それを果たせない場合にはリスクがあります。
そのため、知り合いやご家族にお願いされたからといって安易に就任するのは好ましくありません。

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