【医療専門税理士解説】医療法人の役員貸付金の消し方(解消方法)

この記事の監修者

中込政博
税理士法人シーガル
代表社員 税理士・公認会計士

あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、医療専門の税理士法人シーガルを設立。
税金に関する相談はもちろんのこと、公認会計士ですので、医業経営についてもぜひご相談ください!

遠藤大樹
税理士法人シーガル
代表社員 税理士

医療特化会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、医療専門の税理士法人シーガルを設立。
医師・歯科医師に対する税務顧問の他、相続税申告や相続対策・医業承継も対応できます!

医療専門の税理士法人シーガルです。

医療法人の理事や理事長に対して貸付を行う役員貸付金が知らず知らずのうちに気づけば多額になってしまっているケースがよくあります。


医療法人の決算書に役員貸付金がのっていると色々なリスクを生み出してしまいますので、一刻も早く解消することが必要です。

そこで今回は、役員貸付金とは、役員貸付金がどうして発生してしまうのか、役員貸付金が存在することのリスク、役員貸付金の消し方(解消方法)について解説していきます。

この記事は次の方にオススメです。

・役員貸付金がある医療法人の役員の方

もくじ

役員貸付金とは

役員貸付金とは医療法人から役員に対して貸しているお金です。

役員貸付金という名前のとおり、役員側からすると役員貸付金の金額分だけ医療法人に対してお金を返済しなければなりません。

医療専門税理士として様々な医療法人の決算書を拝見する機会がありますが、おおよそ20%ぐらいの確率で見受けられます。

役員貸付金はどうして発生してしまうのか

役員貸付金は主に以下の理由によって発生してしまうことが多いです。

①顧問税理士と顧問先のコミュニケーション不足
②役員個人の資金不足の補填や私的な経費支払

①顧問税理士と顧問先のコミュニケーション不足

毎月の月次処理を顧問税理士が行っている場合に、顧問先に都度不明点を質問し回答していただけるような関係性であればよいのですが、顧問税理士と顧問先の関係性が悪くコミュニケーションが不足している場合には、顧問税理士が考えてもよく分からない資金支出を役員貸付金として処理していることがあります。

②役員個人の資金不足の補填や私的な経費支払

役員個人の資金が不足しているときに、個人的な事情によりまとまったお金が必要な場合に医療法人から支払を行うことで役員貸付金が増加します。

また、医療法人のお金で家族を帯同した旅行をしたり、ゴルフ用具を買ったり医療法人の事業に関係のない私的な支払いを行うことでも役員貸付金は増加します。

医療法人に役員貸付金が存在することのリスク

医療法人に役員貸付金が存在することのリスクとしては以下があげられます。

  • 医療法人に対する金融機関からの評価が下がり融資が通りにくくなる
  • 役員貸付金を返済する義務が相続人に引き継がれてしまう
  • 長期間返済されない場合には税務調査で実質的に役員報酬であると指摘される
  • 医療法第54条の剰余金の配当とみなされ医療法人設立認可の取消しになる可能性がある

①医療法人に対する金融機関からの評価が下がり融資が通りにくくなる

医療法人の決算書に役員貸付金が載っている場合に、金融機関側からすると「医療法人に融資したとしても、その融資額が事業とは関係のない役員の個人的なものに使われてしまうのではないか」と考えられてしまうため融資が通りにくくなってしまいます。

②役員貸付金を返済する義務が相続人に引き継がれてしまう

役員貸付金はその役員が返済する義務を負っていますが、その役員に相続が発生してしまうと返済義務が相続人に引き継がれてしまいます。

役員貸付金の金額が少額であればよいですが、数百万円・数千万円になってしまうと引き継いだ相続人が返済することが困難になる可能性があります。

③長期間返済されない場合には税務調査で実質的に役員報酬であると指摘される

役員貸付金について長期間返済がされておらず適切な利息を徴収していない場合には、税務調査で実質的に役員賞与であると指摘が入る可能性があります。

役員貸付金ではなく役員賞与と認定されてしまうと役員貸付金としていた金額について、法人税と源泉所得税の追徴課税のほか不納付加算税といったペナルティも受けることになります。

④医療法第54条の剰余金の配当とみなされ医療法人設立認可の取消しになる可能性がある

役員貸付金について税法上は適切な対応をしていれば問題になることは少ないですが、医療法ではかなり問題があります。

理事長貸付金がある場合には医療法第54条で禁止されている剰余金配当行為にあたるとして、各都道府県から是正を求めてくることがあるからです。

医療法54条
医療法人は、剰余金の配当をしてはならない。

多額の役員貸付金があると最悪の場合には医療法人設立認可の取消しになる可能性もありますので、できるだけ速やかに役員貸付金を解消することが必要です。

医療法人における役員貸付金の消し方(解消方法)

医療法人における役員貸付金の消し方(解消方法)としては以下があげられます。

  • 役員報酬で毎月少しずつ返済する
  • 役員個人の資産を医療法人に売却して返済する
  • 役員退職金で返済する
  • 建物保証金と相殺する

①役員報酬で毎月少しずつ返済する

毎月支払っている役員報酬のうち一部を役員貸付金の返済に充てる方法です。

メリットは初歩的で王道な方法であるため誰にでも分かりやすいという点です。

デメリットは所得税・住民税・社会保険料を控除した後の手取り額で返済しなければならないことから、役員貸付金が多額の場合には完済までに長期間が必要になるという点です。

②役員個人の資産を医療法人に売却して返済する

役員個人で所有している土地や建物などの資産を医療法人に売却して返済する方法です。

メリットは役員報酬で返済する場合よりも大きな額で返済することが可能という点です。

5年超保有している土地や建物を売却する場合であれば所得税と住民税を合わせた税率が20.315%となり役員報酬よりも少ない税金になることが多いです。

デメリットはそもそも医療法人に売却できる資産が無いと使えないという点や、土地や建物を売却する際には名義変更に伴う司法書士への報酬支払や登記費用が必要になるという点です。

③役員退職金で返済する

医療法人の役員を退職する際に支給される役員退職金で返済する方法です。

メリットは退職金は所得税や住民税の計算において優遇されていることから、役員報酬で返済する場合よりも大きな額で返済することが可能という点です。

役員退職金に関しては以下の記事をご参照ください。

デメリットは役員退職時にしか返済することができないことから、早期に役員貸付金を解消する必要がある場合には使いづらいという点です。

④建物保証金と相殺する

役員個人が所有している建物を医療法人に貸している場合に建物保証金を設定して役員貸付金を相殺する方法です。

第三者からテナントを借りるときには保証金として家賃の6~10ヶ月分の保証金を差し入れるのが一般的ですが、役員個人から医療法人に建物を貸し付ける場合には差し入れていないことが多いです。

そのような場合には、建物保証金を役員貸付金と相殺することが可能です。

メリットは税金が課税されずに役員貸付金を相殺することができるという点です。

デメリットは役員貸付金と変わらず建物保証金も債務ですので、返済する義務が相続人に引き継がれてしまうという点です。

まとめ

医療法人の役員貸付金は税法上のリスクだけではなく医療法上のリスクもあります。

医療法人に詳しくない税理士の場合には、税法上だけの話で終わってしまう可能性があり極めて危険です。

私たちは医療専門の税理士法人ですので、税務顧問業務のほか、医院経営に関するご相談、医療法人設立、一般社団法人による診療所開設、事業(医業)承継対策も対応可能です。

医療専門の税理士法人シーガルでは
代表税理士が直接お客様を担当いたします。
初回相談は完全無料です。

ご興味を持っていただけましたら、
お問い合わせフォームよりお話を聞かせてください。

もくじ