2025.5.11
医療法人の社宅導入で今抑えておきたいこと【医療専門税理士解説】
茅ヶ崎駅から徒歩4分の医療法人・個人開業医専門の税理士法人シーガルです。
「社宅で節税できる!」とYoutubeで見たり、友人・知人から聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。確かに、社宅はうまく活用することで節税につながります。
しかし、医療法人の場合には、税法のほか医療法にも注意が必要であり、安易な導入は都道府県の医療法人課から目をつけられてしまうリスクを高めることもあります。
そこで今回は、医療法人で社宅を検討する際に、節税効果だけでなく、医療法や税務上の注意点など、導入前に必ず抑えておきたいことを医療専門の税理士が分かりやすく解説いたします。
この記事は次の方にオススメです。
・医療法人で社宅を導入し、賢く節税したいと考えている先生
社宅導入による個人の手取り増加と法人の節税効果
社宅を導入すると節税になると聞いたことがある方も多いとは思いますが、どのように節税効果があるのかを、株式会社Aの社長であるBさんのケースを具体例にご説明します。
【前提条件】
役職:株式会社A 社長
氏名:B
家賃:月額30万円
役員報酬:月150万円
所得税・住民税の税率:43%(所得によって税率が変わる累進課税制度が適用されます)
社宅の賃貸料相当額(仮定):月額10万円(固定資産税課税標準額を基に計算され、一般的に市場家賃よりも低くなる傾向があります)
社宅を「利用しない」場合の個人の手取り(概算)
Bさんがご自身で不動産オーナーと賃貸契約を結び、月30万円の家賃を支払う場合、税引き後の手取りから家賃を支払うことになります。
Bさんの課税所得は、役員報酬から社会保険料や所得控除額などを差し引いた金額になります。仮に、社会保険料や所得控除額を考慮しない単純なケースで考えると、月150万円の役員報酬に対して所得税と住民税が課税されます。
社宅を利用しない場合の手取りを概算計算すると以下のようになります。
月額役員報酬:150万円
所得税・住民税:150万円 × 43% = 64.5万円
税引き後の手取り(家賃支払い前):150万円 - 64.5万円 = 85.5万円
月額家賃負担:30万円
税引き後の手取り(家賃支払い後):85.5万円 - 30万円 = 55.5万円
社宅を「利用する」場合の個人の手取り(概算)
株式会社AがBさんに社宅を提供する場合、Bさんは一定額の家賃を株式会社Aに支払います。この一定額は、後述する賃貸料相当額に基づいて計算され、一般的に市場家賃よりも低くなります。
今回の例では、賃貸料相当額を月額10万円と仮定します。
社宅の家賃は、税引き前の給与から控除されるため、課税対象となる金額が減少します。
社宅を利用する場合の手取りを概算計算すると以下のようになります。
月額役員報酬:150万円
所得税・住民税:150万円 × 43% = 64.5万円
税引き後の手取り(社宅家賃支払い前):150万円 - 64.5万円 = 85.5万円
社宅の従業員負担額:10万円
税引き後の手取り(社宅家賃支払い後):85.5万円 - 10万円 = 75.5万円
社宅導入によってどう変わったか
株式会社Aの社長であるBさんのケースの場合、手取りが以下のように計算できたことからB先生の手取りが月額で約20万円増加する可能性があります。
社宅を利用しない場合の手取り(家賃支払い後):約55.5万円
社宅を利用する場合の手取り(社宅家賃支払い後):約75.5万円
これが、Bさん個人の手取り増加効果と言えます。
また、株式会社Aにおいても、社宅の家賃(月額30万円)を経費として計上できるため、法人税や法人住民税などの税負担軽減効果が見込めます。
仮に法人税等の税率を30%とすると、年間で約108万円(30万円 × 12ヶ月 × 30%)程度の節税効果が見込める可能性があります。
社宅の種類:「借上げ社宅」と「自己所有社宅」の違い
社宅には「借上げ社宅」と「自己所有社宅」があり、それぞれご説明します。
借上げ社宅は法人が不動産業者から借りている社宅を指し、自己所有社宅は法人が土地や建物を自社で所有する社宅を指します。
大きな違いとしては社宅となる物件の所有者が他社か自社かという点ですが、その他にも細かな違いがあります。

私が過去に担当した顧問先の中では、
従業員に貸与する場合: 物件の選択肢が広く、多様な従業員のライフスタイルや家族構成などのニーズに合わせた住まいの提供が可能なため、「借上げ社宅」を選ぶケースが多いです。
役員に貸与する場合: 法人が物件の管理を直接行えるため、セキュリティ面や修繕などにおいて柔軟な対応が可能になること、また、土地や建物が長期的な資産となるという理由から「自己所有社宅」を選ぶケースが多いです。
借りる人が「従業員」の社宅の場合:賃貸料相当額の求め方と給与として課税される範囲
借りる人が従業員の社宅の場合に計算する必要がある賃貸料相当額の求め方(前述の具体例でいう「社宅の従業員負担額10万円」)については国税庁タックスアンサー 「No.2957 使用人に社宅や寮などを貸したとき」として以下のように記載されています。
【概要】
使用人に対して社宅や寮などを貸与する場合には、使用人から1か月当たり一定額の家賃(賃貸料相当額の50パーセント以上)を受け取っていれば給与として課税されません。
【賃貸料相当額とは】
賃貸料相当額とは、次の(1)から(3)の合計額をいいます。
(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2パーセント
(2)12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
(3)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22パーセント
(注)会社などが所有している社宅や寮などを貸与する場合に限らず、他から借りて貸与する場合でも、上記の(1)から(3)を合計した金額が賃貸料相当額となります。
したがって、他から借り受けた社宅や寮などを貸す場合にも、貸主等から固定資産税の課税標準額などを確認することが必要です。
【給与として課税される範囲】
(1)使用人に無償で貸与する場合
賃貸料相当額が給与として課税されます。
(注)看護師や守衛など、仕事を行う上で勤務場所を離れて住むことが困難な使用人に対して、仕事に従事させる都合上社宅や寮を貸与する場合には、無償で貸与しても給与として課税されない場合があります。
(2)使用人から賃貸料相当額より低い家賃を受け取っている場合
受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額が、給与として課税されます。
ただし、使用人から受け取っている家賃が、賃貸料相当額の50パーセント以上であれば、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額は、給与として課税されません。
(3)現金で支給される住宅手当や、入居者が直接契約している場合の家賃負担
社宅の貸与とは認められないので給与として課税されます。
従業員社宅について具体例で確認
給与として課税される範囲について具体例でみてみましょう。
【前提条件】
役職:医療法人A会 スタッフ
氏名:Cさん
社宅種類:借上げ社宅
家賃(市場相場):月額12万円
給料:月40万円

医療法人A会支払う家賃が4万円にすると、支払う家賃が賃貸料相当額に占める割合が50%以上を超え、かつ、無償でもないため、課税される総額が一番少なくなり節税となります。
借上げ社宅であっても賃貸料相当額の計算が必要
注意するべき点としては、法人が所有している社宅の場合(自己所有社宅)に限らず、他社から借りて貸与する場合(借上げ社宅)であっても当該計算式に則って賃貸料相当額を計算する必要があるということです。
賃貸料相当額を計算するには「固定資産税課税明細」が必要となりますので、借上社宅の場合には社宅が所在する役所にいっていただき取得していただくことになります。
茅ヶ崎市の場合には以下のようにホームページに記載がされていますのでご参考にしてください。
質問:自分が借りているアパートとその敷地である土地の税額を知りたいのですが。
回答:借家人(対価が支払われるものに限る)などは、公課証明等を請求できます。
税法改正により、平成15年度からは借地・借家人についても公課証明等を請求できるようになりました。
借地人は土地のみ、借家人は家屋及びその敷地である土地が証明の対象です。
証明の申請及び交付は、収納課で行っております。申請時に、賃貸借契約書など、権利関係を証する書類をご持参ください。
借りる人が「役員」の社宅の場合:従業員社宅と異なる点
借りる人が役員の社宅の場合も基本的な賃貸料相当額の計算においては従業員社宅と同様です。しかし、役員社宅の場合には豪華社宅か否か・小規模住宅か否か・借上げ社宅か否か・給与として課税される範囲が従業員社宅とは異なっています。
具体的には国税庁タックスアンサー 「No.2600 役員に社宅などを貸したとき」として以下のように記載されています。
【概要】
役員に対して社宅を貸与する場合は、役員から1か月当たり一定額の家賃(以下「賃貸料相当額」といいます。)を受け取っていれば、給与として課税されません。【賃貸料相当額とは】
賃貸料相当額は、貸与する社宅の床面積により小規模な住宅とそれ以外の住宅とに分け、次のように計算します。ただし、この社宅が、社会通念上一般に貸与されている社宅と認められないいわゆる豪華社宅である場合は、次の算式の適用はなく、通常支払うべき使用料に相当する額が賃貸料相当額になります。
(注1)小規模な住宅とは、法定耐用年数が30年以下の建物の場合には床面積が132平方メートル以下である住宅、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には床面積が99平方メートル以下(区分所有の建物は共用部分の床面積をあん分し、専用部分の床面積に加えたところで判定します。)である住宅をいいます。
(注2)いわゆる豪華社宅であるかどうかは、床面積が240平方メートルを超えるもののうち、取得価額、支払賃貸料の額、内外装の状況等各種の要素を総合勘案して判定します。なお、床面積が240平方メートル以下のものであっても、一般に貸与されている住宅等に設置されていないプール等の設備や役員個人のし好を著しく反映した設備等を有するものについては、いわゆる豪華社宅に該当することとなります。
【役員に貸与する社宅が小規模な住宅である場合】
次の(1)から(3)までの合計額が賃貸料相当額になります。
(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2パーセント
(2)12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル))
(3)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22パーセント
【役員に貸与する社宅が小規模な住宅でない場合】
役員に貸与する社宅が小規模住宅に該当しない場合には、その社宅が自社所有の社宅か、他から借り受けた住宅等を役員へ貸与しているのかで、賃貸料相当額の算出方法が異なります。
(1)自社所有の社宅の場合
次のイとロの合計額の12分の1が賃貸料相当額になります。
イ (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12パーセント
ただし、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には12パーセントではなく、10パーセントを乗じます。
ロ (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6パーセント
(2)他から借り受けた住宅等を貸与する場合
会社が家主に支払う家賃の50パーセントの金額と、上記(1)で算出した賃貸料相当額とのいずれか多い金額が賃貸料相当額になります。
【給与として課税される範囲】
(1)役員に無償で貸与する場合
賃貸料相当額が、給与として課税されます。
(2)役員から賃貸料相当額より低い家賃を受け取っている場合
賃貸料相当額と受け取っている家賃との差額が給与として課税されます。
(3)現金で支給される住宅手当や入居者が直接契約している場合の家賃負担
社宅の貸与とは認められないので、給与として課税されます。
役員社宅について具体例で確認
給与として課税される範囲について具体例でみてみましょう。
【前提条件】
役職:医療法人A会 理事長
氏名:B先生
社宅種類:借上げ社宅
役員報酬:月150万円

従業員社宅と異なり、役員社宅の場合には「支払う家賃が賃貸料相当額に占める割合が50%」という基準がありませんので、賃貸料相当額までは負担する必要があります。
したがって、賃貸料相当額と同額を医療法人A会に支払うと課税される総額が一番少なくなり節税となります。
医療法人で役員社宅の導入は注意が必要? 医療法のポイント
「社宅導入による個人の手取り増加と法人の節税効果」でもご説明したように、株式会社で役員社宅を導入することで個人も法人も節税するというケースは多くあり、医療法人においても役員社宅を導入しようとする税理士や理事長先生も多くいらっしゃいますが、医療法人が役員社宅を導入していると医療法第54条に抵触しているとして管轄の都道府県から指摘を受ける可能性が極めて高いです。
医療法人は、剰余金の配当をしてはならない。
医療法第54条
医療法第54条は剰余金の配当のみならず、配当類似行為についても制限していることから、特定の役員のみが使用できる役員社宅についても配当類似行為に該当するものとして指摘されます。
役員社宅導入を検討するならMS法人がオススメ!消費税の還付を受けられる場合も
前述でご説明したように、医療法人で役員社宅を導入してしまうと管轄の都道府県から指摘を受ける可能性が極めて高いことから、役員社宅を導入するのであればMS法人で導入することをオススメしています。
過去、MS法人で役員社宅を導入していた顧問先で管轄の都道府県から指摘を受けたことは1回もございません。
また、社宅の建設費用やMS法人の売上高・経費の金額次第ではありますが、MS法人で自己所有の役員社宅を導入する場合に消費税の還付を受けられる可能性もあります。
役員社宅の導入を検討される場合には、個人・法人の節税ももちろんですが、消費税の還付額についてもシミュレーションされると良いでしょう。
まとめ
医療法人で社宅を導入する場合には、税法のほか医療法にも注意が必要であり、安易な導入は都道府県の医療法人課から目をつけられてしまうリスクを高めることもあります。
ただし、有効活用できれば節税に繋がりますので是非検討してみてください。
私たち税理士法人シーガルは開業医・医療法人専門の税理士法人ですので税務顧問業務のほか、医療法人設立、一般社団法人による診療所開設、医院経営に関するご相談なども対応可能です。
この記事の監修者

税理士法人シーガル
代表社員/
税理士・公認会計士
中込 政博
あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、税理士法人シーガルを設立。税金に関する相談はもちろんのこと、公認会計士ですので、医業経営についてもぜひご相談ください!

税理士法人シーガル
代表社員/
税理士・行政書士
遠藤 大樹
医療特化会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、税理士法人シーガルを設立。医師・歯科医師に対する税務顧問の他、相続税申告や相続対策・医業承継もお任せください!
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