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JOURNAL

2026.5.13

病院の控除対象外消費税とは?黒字でもお金が残らない理由を解説

「決算では黒字なのに、思ったほど現預金が増えない」
「建替えや高額医療機器の更新をしたら、消費税の負担が重く感じる」
「病院の消費税は、一般企業と何が違うのか」

病院経営では、このような悩みが出ることがあります。
その原因の一つが、控除対象外消費税です。

社会保険医療の給付等は、消費税の非課税取引に該当します。一方で、病院が医薬品、診療材料、委託費、医療機器、建物などを購入するときには、仕入先や取引先に消費税を支払います。社会保険診療の収入が非課税であるため、支払った消費税の一部または全部を仕入税額控除できず、病院の実質的なコストになることがあります。なお、美容整形、差額ベッド、市販医薬品の購入などは、社会保険医療の給付等とは異なり、非課税取引には当たりません。

病院の控除対象外消費税は、単なる消費税申告の論点ではありません。
建替え、高額医療機器の更新、委託費、診療材料費、修繕費、資金繰りまで関係する経営管理のテーマです。

この記事では、病院で控除対象外消費税が発生する仕組み、消費税の基本計算、負担が膨らみやすい場面、税込経理と税抜経理の違い、建替え時の具体例、資金繰りへの影響まで整理します。

病院で控除対象外消費税が発生する仕組み

まず消費税の計算の基本を押さえましょう

病院の消費税の基本的な計算の流れ

控除対象外消費税を理解するには、まず消費税の基本的な計算方法を押さえておく必要があります。

消費税の納税額は、ざっくりいうと次のように計算します。

課税売上にかかる消費税 − 仕入税額控除できる消費税 = 消費税の納税額

たとえば、病院が自費診療、差額ベッド、売店収入などの課税売上で消費税を預かった場合、その消費税から、医薬品、診療材料、医療機器、委託費などの課税仕入で支払った消費税のうち、仕入税額控除できる部分を差し引いて、消費税の納税額を計算します。

ここで大切なのは、支払った消費税をすべて控除できるとは限らないという点です。

病院では、社会保険診療収入が大きな割合を占めます。社会保険医療の給付等は、消費税の非課税取引です。そのため、病院が支払った消費税のうち、非課税売上に対応する部分は仕入税額控除できないことがあります。

課税売上割合とは

病院における課税売上割合の考え方

課税売上割合とは、簡単にいうと、売上全体のうち課税売上がどれくらいあるかを示す割合です。

課税売上割合 = 課税売上高 ÷ 総売上高

国税庁は、課税売上割合について、分母を総売上高、分子を課税売上高とする割合として説明しています。総売上高には、課税取引、非課税取引、免税取引が含まれます。

病院の場合、社会保険診療収入の割合が大きいため、一般企業と比べると課税売上割合が低くなりやすいです。課税売上割合が低いと、課税仕入にかかった消費税のうち、控除できる部分も少なくなりやすいです。

仕入税額控除の考え方

仕入税額控除の考え方と個別対応方式・一括比例配分方式の違い

課税期間中の課税売上高が5億円以下、かつ課税売上割合が95%以上の場合は、原則として課税仕入れ等に係る消費税額の全額を控除できます。一方、課税売上高が5億円超、または課税売上割合が95%未満の場合は、課税仕入れ等に係る消費税額の全額を控除するのではなく、課税売上げに対応する部分のみを控除します。

この場合、仕入税額控除の計算方法には、主に個別対応方式一括比例配分方式があります。

個別対応方式では、課税仕入を次の3つに分けます。

区分

仕入税額控除の考え方

課税売上にのみ対応する課税仕入

全額控除できる

非課税売上にのみ対応する課税仕入

控除できない

課税売上と非課税売上に共通する課税仕入

課税売上割合を乗じた部分だけ控除できる

一括比例配分方式では、課税仕入にかかった消費税額に課税売上割合を乗じて、仕入控除税額を計算します。国税庁も、一括比例配分方式では、仕入控除税額を「課税仕入れ等に係る消費税額 × 課税売上割合」で計算すると説明しています。なお、一括比例配分方式を選択した場合、2年間以上継続して適用した後でなければ個別対応方式に変更できません。

控除対象外消費税が発生する簡単な例

たとえば、次のような病院を考えてみます。
わかりやすくするため、一括比例配分方式に近い考え方で単純化します。

項目

金額

課税売上にかかる消費税

2,000万円

課税仕入にかかる消費税

6,000万円

課税売上割合

20%

この場合、仕入税額控除できる消費税は次のように計算します。

計算項目

金額

課税仕入にかかる消費税

6,000万円

課税売上割合

20%

仕入税額控除できる消費税

1,200万円

控除できない消費税

4,800万円

消費税の納税額は、課税売上にかかる消費税2,000万円から、仕入税額控除できる消費税1,200万円を差し引いて、800万円となります。

一方で、課税仕入にかかった消費税6,000万円のうち、控除できない4,800万円は、病院の負担として残ります。
この控除できない消費税が、控除対象外消費税です。

病院の消費税計算と控除対象外消費税の仕組み

病院では「支払った消費税」と「控除できる消費税」がズレやすい

病院では、社会保険診療収入が大きいため、課税売上割合が低くなりやすいです。
そのため、建替えや高額医療機器の更新、委託費、修繕費、情報システム投資などで多額の消費税を支払っても、その全額を控除できないことがあります。

つまり、病院の消費税では、次のズレが起きやすいです。

見るべき項目

病院で起きやすいこと

支払った消費税

建替え、設備投資、委託費で大きくなりやすい

控除できる消費税

課税売上割合が低いと限定されやすい

控除できない消費税

病院の実質コストとして残りやすい

この仕組みを理解すると、病院で控除対象外消費税が重くなりやすい理由が見えてきます。

自院ではどこで消費税負担が出ているか、まず整理してみましょう

控除対象外消費税は、計算の仕組みを知るだけでは十分ではありません。
実際には、社会保険診療、自費診療、健診、差額ベッド、委託費、設備投資などを分けて見ないと、自院でどこに負担が出ているのか分かりにくいテーマです。

「自院では、どの費用で控除対象外消費税が大きくなっているのか」
「建替えや医療機器更新の前に、何を確認すべきか」

このような点を整理したい方は、無料の初回面談をご利用ください。

無料相談を予約する 医療専門の代表税理士が2営業日以内にご連絡します

病院の控除対象外消費税とは?結論

上記の消費税計算を踏まえると、病院の控除対象外消費税とは、病院が仕入や経費、設備投資などで支払った消費税のうち、仕入税額控除できない部分のことです。

簡単にいうと、病院が負担する“見えにくい消費税コスト”です。

控除対象外消費税は、病院が負担する見えにくいコスト

病院では、社会保険診療収入が大きな割合を占めます。
社会保険診療は消費税上、非課税取引です。患者さんから消費税を預かる取引ではありません。

一方で、病院は日々の診療や運営のために、次のような支出をしています。

  • 医薬品

  • 診療材料

  • 医療機器

  • 建物

  • 修繕費

  • 給食委託

  • 清掃委託

  • 医事委託

  • 情報システム費

  • 保守契約

これらの多くには、消費税がかかります。

つまり、病院は収入側では消費税を預かりにくい一方で、支出側では消費税を支払っているという構造になりやすいのです。

この支払った消費税のうち、控除できない部分が控除対象外消費税です。
控除対象外消費税は、最終的に病院のコストになります。

黒字でもお金が残りにくい理由の一つになる

控除対象外消費税は、黒字でもお金が残りにくい理由の一つになります。

病院が建物や医療機器を取得すると、消費税分を含めて先に現金が出ていきます。
しかし、税務上どのタイミングで費用として落ちるかは、経理方式や資産の種類によって変わります。

特に建物のように耐用年数が長い資産では、税込経理と税抜経理で、控除対象外消費税が損金化されるスピードに差が出ることがあります。

ここを理解しないまま建替えや大型投資を進めると、決算では黒字でも、現預金が思ったほど増えない、という状況になりやすいです。

病院で控除対象外消費税が重くなりやすい理由

病院で控除対象外消費税が重くなりやすい理由は、社会保険診療収入の割合が大きいことにあります。

社会保険診療収入が大きいから

控除対象外消費税を考えるうえでは、課税売上割合が重要になります。

病院では、社会保険診療収入の割合が大きくなりやすいです。
そのため、一般企業のように「収入も支出も課税取引」という構造になりにくく、支払った消費税をそのまま控除できない部分が出やすくなります。

社会保険診療収入が多い病院ほど、課税売上割合が低くなりやすく、控除対象外消費税が発生しやすい構造になります。

診療報酬で補てんされていても、自院の負担と一致するとは限らない

診療報酬上、消費税負担への補てんという考え方はあります。
ただし、平均的な補てんの考え方と、個別の病院で実際に発生している消費税負担は必ずしも一致しません。

たとえば、建替え直後の病院、高額医療機器を更新した病院、委託費や外注費が多い病院では、課税経費が大きくなります。
その結果、控除対象外消費税の負担感が強くなることがあります。

つまり、制度上は補てんが意識されていても、自院の投資状況や費用構造によっては、消費税負担が重く感じられるのです。

課税経費が多い病院ほど負担感が出やすい

病院で控除対象外消費税が膨らみやすい支出には、次のようなものがあります。

支出項目

控除対象外消費税が重くなりやすい理由

建物・建替え

金額が大きく、消費税負担も大きくなりやすい

高額医療機器

CT・MRI・手術機器などは投資額が大きい

委託費

給食、清掃、医事、SPDなどで課税仕入が発生しやすい

修繕費

大規模修繕では消費税額も大きくなりやすい

情報システム費

電子カルテ、ネットワーク、保守費などが積み上がりやすい

保守契約

医療機器や設備の保守料に消費税がかかる

人件費には消費税がかかりません
一方で、外部委託、設備投資、修繕、システム投資には消費税がかかります

そのため、病院の運営が外部委託や設備投資に寄るほど、控除対象外消費税の負担が見えにくい形で増えることがあります。

建替えや高額医療機器の更新を予定している場合は、消費税負担も含めた投資計画として確認しておくと安心です。
関連する論点として、設備投資のタイミングや資金繰りについては「病院の高額医療機器更新はいつ?融資・補助金・資金繰りの考え方」も参考になります。

病院で控除対象外消費税が膨らみやすい支出項目

病院で控除対象外消費税が膨らみやすい場面

控除対象外消費税は、日々の経費だけでなく、病院の大きな意思決定の場面で膨らみやすいです。

特に注意したいのは、建替え、高額医療機器の更新、委託費・外注費の増加です。

建替え・大規模修繕

建替えや大規模修繕は、控除対象外消費税の影響が最も見えやすい場面です。

建物本体の金額が大きいため、消費税額も大きくなります。
その消費税のうち控除できない部分が発生すると、病院にとって大きな負担になります。

さらに、税込経理を採用している場合、消費税額は建物の取得価額に含まれます。
建物は耐用年数が長いため、消費税部分も長い期間をかけて費用化されやすくなります。

建替えを検討している病院では、建築費だけでなく、控除対象外消費税がどのくらい出るか、どの経理方式で処理するか、資金繰りにどう影響するかまで確認しておくことが大切です。

高額医療機器の更新

高額医療機器の更新でも、控除対象外消費税が膨らみやすくなります。

CT、MRI、内視鏡システム、手術機器、透析関連設備などは、本体価格が高額です。
本体価格にかかる消費税だけでなく、設置費、保守契約、更新後のランニングコストにも消費税がかかります。

高額医療機器の更新では、融資や補助金だけでなく、控除対象外消費税も含めて投資判断を行う必要があります。

関連記事として、病院の高額医療機器更新については、病院の高額医療機器更新はいつ?融資・補助金・資金繰りの考え方もあわせて確認するとよいです。

委託費・外注費の増加

病院では、人手不足や専門性の観点から、外部委託が増えることがあります。

たとえば、次のような費用です。

  • 給食委託

  • 清掃委託

  • 医事委託

  • SPD

  • 保守管理

  • 情報システム保守

外部委託は、病院運営を効率化するうえで必要な場合があります。
ただし、委託費は課税仕入になりやすく、社会保険診療収入が多い病院では、支払った消費税をすべて控除できないことがあります。

そのため、委託費の見直しでは、単に「内製の方が安いか」「外注の方が楽か」だけでは足りません。
控除対象外消費税を含めた総コストで見ることが重要です。

病院の控除対象外消費税は、税込経理と税抜経理で“落ちる速さ”が変わる

病院の控除対象外消費税を考えるうえで、特に重要なのが税込経理と税抜経理の違いです。

結論からいうと、税抜経理が常に有利というわけではありません。
ただし、病院の建替えのように、耐用年数の長い資産で多額の控除対象外消費税が発生する場合は、税抜経理の方が損金化のスピードが早くなりやすいです。

税込経理の主なメリットは、処理が簡便であることです。
税務上の資金繰り効果まで考えると、病院の大型投資では税抜経理を前提に検討した方がよいケースが多いです。

税込経理では、消費税額が資産の取得価額に含まれる

税込経理方式では、課税仕入れに係る消費税等の額は仕入金額などに含めて計上します。

そのため、病院が建物を取得した場合、税込経理では消費税分も建物の取得価額に含まれます。
建物は耐用年数が長いため、消費税分も建物本体と同じように、長い期間をかけて減価償却されやすくなります。

処理としてはシンプルです。
ただし、建替えのような大型投資では、控除対象外消費税の部分が長期間にわたって少しずつ費用化されるため、損金化のスピードは遅くなりやすいです。

税抜経理では、控除対象外消費税を繰延消費税額等として処理できる場合がある

税抜経理方式では、控除できない消費税額を本体価格と切り離して管理できます。

国税庁は、資産に係る控除対象外消費税額等について、課税売上割合80%以上、棚卸資産に係るもの、一の資産に係る控除対象外消費税額等が20万円未満である場合などには損金算入でき、それ以外の場合には「繰延消費税額等」として資産計上し、60か月を基本に損金算入すると説明しています。取得年度は、その計算額の2分の1に相当する金額の範囲内で損金算入します。

つまり、単純に「5年で均等に落ちる」というより、60か月を基本にしつつ、取得年度は2分の1制限があると理解した方が正確です。

それでも、建物のように耐用年数が長い資産と比べると、控除対象外消費税を早く損金化できる場面があります。

税込経理と税抜経理の比較

たとえば、病院が建替えを行い、次のような控除対象外消費税が発生したとします。

項目

内容

建物本体価格

10億円

消費税額

1億円

控除対象外となる消費税額

9,000万円

建物の耐用年数

39年と仮定

税抜経理の処理

繰延消費税額等として60か月を基本に損金化

注意点

取得年度は損金算入額に2分の1制限あり

この場合、税込経理と税抜経理では、控除対象外消費税の損金化スピードに大きな差が出ます。

項目

税込経理

税抜経理

控除対象外消費税の扱い

建物の取得価額に含まれる

繰延消費税額等として処理できる場合がある

損金化の期間

建物の耐用年数に応じて長期化しやすい

60か月を基本に損金化

9,000万円部分の初年度損金化イメージ

約231万円

最大約900万円

2年目以降の損金化イメージ

年約231万円

年約1,800万円

ポイント

長い期間で少しずつ落ちる

建物本体より早く落ちる

※説明用の概算です。実際の処理は、取得時期、決算期、経理方式、課税売上割合、資産区分などで変わります。

この例では、税込経理だと9,000万円の控除対象外消費税が建物の取得価額に含まれ、建物の耐用年数に沿って長く費用化されます。
一方、税抜経理で繰延消費税額等として処理できる場合、控除対象外消費税部分を建物本体よりも早く損金化できます。

したがって、病院の建替えのように大型投資が予定されている場合は、税込経理のままでよいか、税抜経理を前提に検討すべきかを事前に確認する必要があります。

税込経理と税抜経理で控除対象外消費税の損金化スピードが異なる図

税抜経理が常に有利という意味ではない

ここで注意したいのは、税抜経理が常に有利という意味ではないことです。

税込経理の主なメリットは、処理が簡便であることです。
税抜経理は、消費税を区分して管理する必要があるため、経理処理の手間は増えます。

また、損金化が早くても、赤字や繰越欠損金がある場合には、すぐに税負担の軽減効果が出ないこともあります。
この場合は、税抜経理が「不利」というより、早期損金化の効果がすぐには出にくいという整理になります。

ただし、病院の建替えのように、耐用年数の長い資産で多額の控除対象外消費税が発生する場合は、税抜経理の方が損金化のスピードが早くなりやすいです。
税務上の資金繰り効果まで考えると、病院の大型投資では税抜経理を前提に検討した方がよいケースが多いといえます。

なお、税込経理方式と税抜経理方式の併用には一定のルールがあり、個々の固定資産等または個々の経費等について異なる経理方式を適用することはできないとされています。

建替え・大型投資の前に、別の視点でも確認したい方へ

建替えや大型設備投資では、税込経理か税抜経理かによって、控除対象外消費税の損金化のスピードが変わることがあります。

現在の顧問税理士に相談しているものの、病院特有の消費税や資金繰りの論点について別の視点でも確認したい方は、現在の契約を続けたまま比較できる、ゆるやかな税理士変更プランもご利用いただけます。

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控除対象外消費税は資金繰りにどう影響するか

控除対象外消費税は、損益だけでなく資金繰りにも影響します。

特に建替えや設備投資では、消費税分を含めた支払いが先に発生します。
一方で、費用化は後から進みます。

このズレを見落とすと、黒字でも資金繰りが苦しくなることがあります。

消費税分は先に現金が出る

建替えや高額医療機器の更新では、工事代金や機器代金に消費税がかかります。
病院は、控除できるかどうかにかかわらず、まず取引先に消費税分を含めて支払います。

その後、消費税申告や法人税申告の中で、どの部分が控除できるか、どの部分が費用化されるかが整理されます。

つまり、現金の動きとしては、消費税分は先に出ていくのです。
この点が、病院の資金繰りを重くすることがあります。

利益が出ても現預金が増えない理由になる

病院の資金繰りを見るときは、損益計算書だけでは足りません。

簡易的には、次の式で現預金の増減を考えるとわかりやすいです。

税引後利益+減価償却費−借入返済元本−設備投資の自己資金負担+新規借入 ≒ 簡易的な現預金増減

控除対象外消費税は、建替えや設備投資の自己資金負担に含まれて、現金を減らす要素になります。

たとえば、次のようなケースを考えます。

項目

金額

税引後利益

8,000万円

減価償却費

1億2,000万円

借入返済元本

△1億5,000万円

建替え自己資金負担

△8,000万円

新規借入

5,000万円

計算イメージは次の通りです。

計算ステップ

金額

税引後利益+減価償却費

2億円

借入返済元本を差し引く

5,000万円

建替え自己資金負担を差し引く

△3,000万円

新規借入を加える

2,000万円

簡易的な現預金増減

+2,000万円

このケースでは、損益上は8,000万円の税引後利益が出ています。
しかし、借入返済や建替えの自己資金負担が大きいため、現預金の増加は2,000万円にとどまります。

ここに補助金の入金遅れ、控除対象外消費税の負担、追加工事費が重なると、黒字でも資金繰りが苦しくなることがあります。

控除対象外消費税と病院の資金繰りへの影響

建替え時は「消費税分の資金手当て」も必要

建替えでは、本体価格だけでなく、消費税分の資金手当ても必要です。

確認したいのは、次のような点です。

  • 金融機関借入で消費税分までカバーできるか

  • 補助金の入金時期はいつか

  • 控除対象外消費税の損金化はいつ進むか

  • 自己資金負担が月次資金繰りを圧迫しないか

  • 工事代金の支払時期と借入実行時期がズレないか

建替えの意思決定では、建築費や借入金利だけでなく、控除対象外消費税も含めた資金繰り表を作ることが大切です。

病院が控除対象外消費税で確認すべき5つのポイント

病院が控除対象外消費税を管理するためには、決算時だけでなく、建替えや設備投資の前から確認しておくべき項目があります。

1. 課税売上割合を確認する

まず、課税売上割合を確認します。

病院の収入には、社会保険診療収入だけでなく、自費診療収入、健診収入、差額ベッド、介護収入などがあります。
どの収入が課税取引で、どの収入が非課税取引なのかを整理しないと、控除対象外消費税の影響を正しく把握できません。

2. 課税経費がどこで膨らんでいるか確認する

次に、課税経費がどこで膨らんでいるかを確認します。

特に注意したいのは、次の費目です。

  • 委託費

  • 診療材料費

  • 医療機器

  • 修繕費

  • 情報システム費

  • 保守契約

  • 建物・設備投資

控除対象外消費税の負担は、これらの費用構造と連動します。

3. 建替え・設備投資前に経理方式を確認する

建替えや大型設備投資の前には、税込経理か税抜経理かを確認します。

特に建物のように耐用年数が長い資産では、控除対象外消費税の損金化スピードが大きく変わる可能性があります。
税込経理は処理が簡便ですが、大型投資では税抜経理の方が税務上の資金繰り効果を得やすい場面があります。

4. 補助金・融資・消費税の入出金時期を並べる

建替えや設備投資では、補助金の入金が後になることがあります。

次のタイミングを並べて確認します。

  • 工事代金の支払時期

  • 消費税分の支払時期

  • 借入実行時期

  • 補助金入金時期

  • 減価償却開始時期

  • 控除対象外消費税の損金化時期

これらのタイミングがズレると、一時的に資金繰りが苦しくなることがあります。

5. 月次資金繰り表に落とす

控除対象外消費税は、決算時にだけ考えるテーマではありません。
支払時点、借入実行時点、補助金入金時点まで含めて、月次で資金繰りを確認する必要があります。

確認ポイントを整理すると、次の通りです。

確認項目

見るべき内容

課税売上割合

社会保険診療、自費、健診、差額ベッドなどの収入区分

課税経費

委託費、設備投資、修繕費、システム費

経理方式

税込経理か税抜経理か

投資計画

建替え、医療機器更新、大規模修繕

資金繰り

借入、返済、補助金、消費税分の支払時期

病院の控除対象外消費税で確認すべき5つのポイント

建替え・設備投資の前に、控除対象外消費税の影響を見える化しましょう

控除対象外消費税は、決算や申告のタイミングで初めて確認するのでは遅いことがあります。

特に、建替え、高額医療機器の更新、大規模修繕、委託費の見直しを予定している場合は、支払う消費税額、控除できない部分、損金化のタイミング、借入や補助金の入出金まで、事前に並べて確認しておくことが大切です。

たとえば、建替えでは建物本体の金額だけでなく、消費税分の資金手当ても必要です。税込経理のまま進めるのか、税抜経理を前提にするのかによって、控除対象外消費税が費用として落ちるスピードも変わります。

高額医療機器の更新でも、本体価格だけでなく、設置費、保守費、消費税、借入返済まで含めて見ないと、購入後の資金繰りを見誤ることがあります。

つまり、控除対象外消費税は、消費税申告の最後に計算するだけの項目ではなく、投資判断の前から確認しておきたい項目です。

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まとめ

病院の控除対象外消費税は、社会保険診療収入が非課税である一方、仕入や設備投資では消費税を支払うという構造から発生します。
病院では、建替え、高額医療機器の更新、委託費、修繕費、情報システム費などで課税経費が大きくなりやすく、控除対象外消費税の負担が見えにくい形で膨らむことがあります。

特に重要なのが、税込経理と税抜経理の違いです。

税抜経理が常に有利というわけではありません。
ただし、病院の建替えのように、耐用年数の長い資産で多額の控除対象外消費税が発生する場合は、税抜経理の方が損金化のスピードが早くなりやすいです。
税込経理の主なメリットは、処理が簡便であることです。税務上の資金繰り効果まで考えると、病院の大型投資では税抜経理を前提に検討した方がよいケースが多いです。

控除対象外消費税は、単なる消費税申告の論点ではありません。
建替え、設備投資、委託費、補助金、借入、月次資金繰りまで含めて見るべき経営管理のテーマです。

控除対象外消費税の影響を、早めに整理したい方へ

控除対象外消費税は、消費税申告だけを見ても全体像がつかみにくいテーマです。
特に病院の建替え、高額医療機器の更新、大規模修繕、委託費の見直しを予定している場合は、支払う消費税、控除できない消費税、損金化のタイミング、借入返済、補助金の入金時期まで一緒に確認しておく必要があります。

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よくある質問

控除対象外消費税とは何ですか?

控除対象外消費税とは、仕入や経費、設備投資で支払った消費税のうち、仕入税額控除できない部分をいいます。病院では社会保険診療収入が非課税となるため、支払った消費税の一部または全部が控除できず、実質的な負担になることがあります。

病院で控除対象外消費税が重くなりやすいのはなぜですか?

病院は社会保険診療収入の割合が大きい一方で、医薬品、診療材料、委託費、建物、設備投資などで消費税を支払います。非課税収入に対応する仕入税額は控除できない部分が出るため、病院の負担になりやすいです。

課税売上割合とは何ですか?

課税売上割合とは、売上全体のうち課税売上がどれくらいあるかを示す割合です。病院では社会保険診療収入の割合が大きいため、課税売上割合が低くなりやすく、支払った消費税のうち控除できない部分が出やすくなります。

個別対応方式と一括比例配分方式は何が違いますか?

個別対応方式は、課税仕入を「課税売上にのみ対応するもの」「非課税売上にのみ対応するもの」「共通するもの」に分けて仕入控除税額を計算する方法です。一括比例配分方式は、課税仕入にかかった消費税額全体に課税売上割合を乗じて計算する方法です。一括比例配分方式を選ぶと、2年間以上継続して適用した後でなければ個別対応方式に変更できません。

税抜経理の方が有利ですか?

税抜経理が常に有利という意味ではありません。
ただし、建物など耐用年数が長い資産で多額の控除対象外消費税が生じる場合、税抜経理では一定の条件のもと、繰延消費税額等として60か月を基本に損金化できる場合があります。税込経理では消費税額が資産の取得価額に含まれ、建物の耐用年数に沿って費用化されやすいため、損金化のスピードに差が出ることがあります。

税込経理のメリットは何ですか?

税込経理の主なメリットは、処理が簡便であることです。
ただし、病院の建替えのように、耐用年数の長い資産で多額の控除対象外消費税が発生する場合、税務上の資金繰り効果まで考えると、税抜経理を前提に検討した方がよいケースが多いです。

建替え前に控除対象外消費税を確認すべきですか?

確認すべきです。
建替えでは建物本体の金額が大きく、消費税負担も大きくなります。税込経理・税抜経理の違い、借入、補助金、資金繰りへの影響まで事前に整理しておくことが大切です。

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控除対象外消費税でどこに論点がありそうか、建替えや設備投資前に何を整理すべきか、といった方向性は確認できます。一方で、個別具体的な税務判断や計算は、顧問契約後に資料確認のうえで対応しています。

この記事の監修者

中込 政博

税理士法人シーガル

代表社員/

税理士・公認会計士

中込 政博

あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、税理士法人シーガルを設立。税金に関する相談はもちろんのこと、公認会計士ですので、医業経営についてもぜひご相談ください!

遠藤 大樹

税理士法人シーガル

代表社員/

税理士・行政書士

遠藤 大樹

医療特化会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、税理士法人シーガルを設立。医師・歯科医師に対する税務顧問の他、相続税申告や相続対策・医業承継もお任せください!

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