2026.7.21
MS法人で役員社宅を所有すると節税になる?自宅購入と税務上の注意点
「自宅を個人で購入するより、MS法人で購入した方が節税になるのではないか」
「法人で購入すれば、建物を減価償却費として経費にできると聞いた」
「MS法人から医療法人へ一部を事務所として貸せば、住宅ローンの返済にも充てられるのではないか」
MS法人を所有している医療法人の理事長から、このようなご相談を受けることがあります。
役員社宅の仕組みは、適切に利用すればメリットがあります。建物を減価償却できることや、理事長個人が税引後の手取りから自宅の購入資金をすべて負担しなくてよいことは、個人で購入する場合との大きな違いです。
一方で、すべての役員社宅が同じように有利になるわけではありません。
特に、床面積や取得価額、内外装などから「豪華社宅」と判定される住宅では、役員が負担すべき家賃が高くなり、役員社宅のメリットが薄くなりやすいため注意が必要です。
なお、この記事では、医療法人の理事長がMS法人の役員も務め、そのMS法人が住宅を役員社宅として貸与するケースを想定しています。医療法人の理事長であるだけでは、MS法人の役員社宅になるわけではありません。
MS法人の基本的な仕組みや、設立するメリット・デメリットについては、関連記事の「MS法人のメリット・デメリット」でも詳しく解説しています。
MS法人名義と個人名義のどちらで購入するべきか、契約前に一度整理しておきたい方へ。
税理士法人シーガルでは、現在の税理士との契約を維持しながら利用できる、60日間無料の「ゆるやかな税理士変更プラン」をご用意しています。
60日の期間中は無料で、いつでもキャンセルできます。現在の税理士との契約継続を選ぶこともでき、期間終了後に自動で正式契約へ切り替わることもありません。
無料期間中は、MS法人による不動産所有の一般的な考え方や、個人購入と比較する際の確認項目をご説明します。具体的な家賃計算、豪華社宅の個別判定、資金繰りや税額の試算は、資料確認が必要となるため顧問契約後の対応です。

- 役員社宅そのものは、うまく使えば有利になる
- 建物を減価償却費として計上できる
- 税引後の手取りから自宅を購入しなくてよい
- 医療法人ではなくMS法人で所有する理由
- 節税効果を左右するのは役員が負担する家賃
- 小規模な住宅
- 小規模ではない一般的な住宅
- 豪華社宅
- 豪華社宅では、役員の家賃がローン返済原資になりやすい
- 3億円・約260平方メートルの住宅で考える
- 前提条件
- MS法人の損益
- MS法人の資金繰り
- 理事長個人の負担
- 一部を医療法人の事務所にしても、自由に家賃を設定できない
- 裁決事例から分かる「事務所としても使っている」だけでは足りない理由
- 豪華社宅をMS法人で所有する意味がなくなるわけではない
- 個人購入とMS法人購入の違い
- MS法人による役員社宅が向いているケース
- 個人購入の方が分かりやすいケース
- 購入前に確認しておきたい6つのポイント
- まとめ
役員社宅そのものは、うまく使えば有利になる
役員社宅には、個人で自宅を購入する場合にはないメリットがあります。
ただし、法人が購入代金をそのまま経費にできるわけではありません。まずは、どの部分が有利になるのかを分けて考える必要があります。
建物を減価償却費として計上できる
理事長個人が自宅を購入した場合、その建物を自宅として使用する限り、建物本体の購入代金を個人の経費にすることは基本的にできません。
一方、MS法人が住宅を購入し、役員社宅として事業に使用する場合、建物の取得価額を法定耐用年数にわたって減価償却費として計上できます。
さらに、業務との関係が認められる範囲で、次のような支出もMS法人の費用になります。
借入金利息
固定資産税
火災保険料
修繕費
管理費
減価償却費
ただし、土地は減価償却できません。
また、建物についても購入した年度に全額を経費にするのではなく、法定耐用年数にわたって少しずつ費用化します。
「3億円の物件を法人で購入したから、3億円を経費にできる」ということではありません。
税引後の手取りから自宅を購入しなくてよい
個人で自宅を購入する場合、住宅ローンの返済原資は原則として理事長個人の税引後の手取りです。
役員報酬を受け取ると、所得税、住民税、社会保険料などが差し引かれます。その残額から住宅ローンを返済します。
MS法人が住宅を購入する場合は、MS法人が借入れや購入代金を負担し、理事長はMS法人へ社宅家賃を支払います。
したがって、適正な社宅家賃が一般的な賃料相場より低くなる住宅では、理事長個人の手取りを大きく減らさずに住宅を利用できる可能性があります。
これが、役員社宅の代表的なメリットです。

医療法人ではなくMS法人で所有する理由
医療法人が役員社宅を所有すると、役員に対する配当類似行為として、医療法第54条の剰余金配当禁止との関係で都道府県から指導を受ける可能性があります。
そのため、理事長の役員社宅を所有する場合は、医療法人ではなくMS法人を所有者とする方法が考えられます。
詳しくは、関連記事の「医療法人ができる不動産賃貸・投資とは?」でも解説しています。
ただし、MS法人を追加すると、法人設立費用、税理士費用、法人住民税、登記費用、契約管理なども増えます。役員社宅のためだけにMS法人を設立する場合は、その維持費まで含めて判断する必要があります。

節税効果を左右するのは役員が負担する家賃
MS法人が住宅を所有していても、理事長が無償で住めるわけではありません。
役員から一定額以上の家賃を受け取らなければ、本来受け取るべき家賃と実際に受け取った家賃との差額が、役員に対する給与として課税される可能性があります。
国税庁では、役員社宅を次の3つに分けて、役員が負担すべき「賃貸料相当額」の考え方を示しています。
小規模な住宅
小規模ではない一般的な住宅
豪華社宅
小規模な住宅
小規模な住宅とは、原則として次の面積以下の住宅です。
建物の法定耐用年数が30年以下:床面積132平方メートル以下
建物の法定耐用年数が30年超:床面積99平方メートル以下
小規模な住宅では、固定資産税の課税標準額などを使って賃貸料相当額を計算します。
そのため、役員が負担する社宅家賃が、周辺の一般的な賃料相場より低くなるケースがあります。
小規模ではない一般的な住宅
小規模住宅の面積基準を超えていても、すぐに豪華社宅になるわけではありません。
豪華社宅に該当しない一般住宅であれば、建物と土地の固定資産税の課税標準額などを基に賃貸料相当額を計算します。
小規模住宅より家賃は高くなりやすいものの、物件によっては市場家賃より低い金額になる可能性があります。
豪華社宅
床面積が240平方メートルを超える住宅については、次のような要素を総合的に考慮して豪華社宅かどうかを判定します。
取得価額
支払賃料
床面積
内外装の状況
プールなどの設備
役員個人の趣味や嗜好を強く反映した設備
床面積が240平方メートルを超えたからといって、自動的に豪華社宅になるわけではありません。
反対に、240平方メートル以下でも、プールや特別な設備がある場合には豪華社宅と判定されることがあります。
そのため、豪華社宅では、一般的な役員社宅のように、周辺の賃料相場より低い家賃で住めるメリットは小さくなります。
理事長は所得税・住民税・社会保険料などを負担した後の手取りから、MS法人へ実勢に近い社宅家賃を支払うことになります。
国税庁も、豪華社宅については通常の算式を使わず、「通常支払うべき使用料に相当する額」を賃貸料相当額としています。国税庁「役員に社宅などを貸したとき」

豪華社宅では、役員の家賃がローン返済原資になりやすい
豪華社宅に該当しても、MS法人が建物の減価償却費を計上できなくなるわけではありません。
MS法人が住宅を所有し、役員社宅として実際に使用している場合、建物の取得価額は原則として法定耐用年数にわたって減価償却します。
そのため、次のように考える方もいるでしょう。
「理事長が市場家賃に近い社宅家賃を払ったとしても、MS法人では建物を減価償却できるため、個人で購入するより得なのではないか」
この考え方は、完全に間違っているわけではありません。
ただし、減価償却費を計上できることだけで、役員社宅全体のメリットを判断することはできません。
豪華社宅では、理事長が税引後の手取りから、通常支払うべき使用料に相当する社宅家賃をMS法人へ支払います。
MS法人にとって、その家賃は収入です。MS法人は受け取った家賃から、借入金利息、固定資産税、修繕費、法人税、借入金元本などを支払います。
したがって、法的にローンを借りているのはMS法人ですが、経済的には、理事長が支払う社宅家賃がMS法人のローン返済原資になりやすい構造です。
また、減価償却費は会計上の経費になりますが、その年度に現金が出ていく費用ではありません。
一方、借入金元本の返済は現金が出ていきますが、経費にはなりません。
そのため、MS法人では、
家賃収入によって会計上の利益が発生する
減価償却費を計上しても利益が残る
その利益に法人税等がかかる
借入金元本の返済によって現金が減る
という状態になることがあります。
「法人で減価償却できる」ことと、「理事長個人とMS法人を合わせた負担が軽くなる」ことは同じではありません。

3億円・約260平方メートルの住宅で考える
ここからは、考え方を分かりやすくするため、簡略化した例で確認します。
前提条件
土地・建物の購入金額:3億円
床面積:約260平方メートル
所有者:MS法人
居住者:MS法人の役員である医療法人理事長
周辺の賃料相場:月額90万円
年間の減価償却費:300万円
年間の借入金利息・固定資産税・修繕費等:350万円
年間の借入金元本返済:850万円
床面積が240平方メートルを超えているため、取得価額、内外装、設備などを含めて豪華社宅に該当するかを検討する必要があります。
仮に豪華社宅に該当し、通常支払うべき家賃が月額90万円と判断された場合、理事長は年間1,080万円をMS法人へ支払います。
MS法人の損益
MS法人の損益を簡略化すると、次のようになります。
家賃収入:1,080万円
減価償却費:300万円
借入金利息・固定資産税・修繕費等:350万円
MS法人の利益:430万円
確かに、MS法人では300万円の減価償却費を計上しています。
しかし、MS法人には1,080万円の家賃収入も計上されています。したがって、減価償却費だけを見て「300万円節税できた」とは判断できません。
MS法人の資金繰り
さらに、借入金元本の返済は経費になりません。
家賃収入:1,080万円
現金支出となる利息・税金・修繕費等:350万円
借入金元本返済:850万円
この場合、法人税等を支払う前でも、年間の資金収支は120万円のマイナスです。
一方、会計上は減価償却費を控除しても430万円の利益が発生しているため、法人税等の負担も生じます。
会計上は利益が出ているのに、借入金返済によって現金が減っていく状態になる可能性があります。
理事長個人の負担
理事長個人は、税引後の手取りから年間1,080万円の家賃をMS法人へ支払います。
一方、MS法人が年間に返済する借入金元本は850万円です。
この簡略例では、理事長が支払う年間1,080万円の社宅家賃が、MS法人の借入金返済の主な原資になっています。
ただし、借入金元本850万円は経費になりません。MS法人では減価償却費300万円を計上しても、会計上は430万円の利益が残り、法人税等の負担も生じます。
さらに、借入金元本の返済まで含めると、法人税等を支払う前でも年間120万円の資金不足です。
つまり、この例では、
理事長は税引後の手取りから年間1,080万円を支払う
MS法人はその家賃収入をローン返済などに充てる
MS法人には会計上の利益が残る
法人税等と資金不足にも対応する
という構造です。
豪華社宅でも減価償却費は計上できますが、理事長個人の家賃負担、MS法人の法人税、借入金返済まで含めると、一般的な役員社宅ほどのメリットを得られない可能性があります。

一部を医療法人の事務所にしても、自由に家賃を設定できない
住宅の一部を医療法人の事務所として使用し、医療法人からMS法人へ家賃を支払う方法も考えられます。
実際に医療法人の事務所として使用しているのであれば、その部分について賃貸借契約を結ぶことは可能です。
ただし、「事務所として借り上げたことにする」だけでは不十分です。
少なくとも、次のような実態と資料が必要になります。
事務所として専用使用する区画
平面図や面積計算
医療法人の書類や備品
職員の勤務実態
医療法人名義の賃貸借契約書
賃料の計算根拠
周辺の事務所賃料との比較
実際の家賃支払い記録
この場合、契約関係は次の2つに分かれます。
MS法人から理事長個人への住宅部分の貸付け
MS法人から医療法人への事務所部分の貸付け
住宅部分と事務所部分の面積、賃料、使用実態を明確に分ける必要があります。
また、医療法人からMS法人へ支払う家賃を、MS法人の借入金返済額に合わせて決めることはできません。第三者間でも成立する適正な賃料であることが必要です。
医療法人とMS法人の取引価格や保存しておきたい資料については、関連記事の「医療法人・開業医とMS法人取引|令和8年改正と価格根拠資料を解説」で詳しく解説しています。
認定医療法人の場合は、不相当に高い賃料が「特別の利益」に該当しないかという別の確認も必要です。詳しくは、「MS法人との取引はNG?認定医療法人の『特別の利益』基準と対策」をご確認ください。
医療法人が実際に使用していない部分まで事務所として借り上げたり、面積や利用状況に見合わない賃料を支払ったりすることはできません。図面上で事務所部分を設けるだけでなく、実際の使用状況と賃料の計算根拠を残しておく必要があります。
実際の裁決事例でも、法人の活動に使用していたという説明より、居住状況や利用記録などの客観的な事実が重視されています。
裁決事例から分かる「事務所としても使っている」だけでは足りない理由
法人所有の住宅については、名目ではなく実際の利用状況が確認されます。
平成21年10月28日の国税不服審判所の裁決では、法人所有の約221㎡のマンションに代表者が居住していました。法人側はマンションを法人活動にも使用していたと主張しましたが、代表者一人が居住していたこと、鍵を持つ者が限られていたこと、法人活動の具体的な記録がなかったことなどから、マンション全体が代表者の居住用として専属的に利用されていたと判断されています。
マンション内で食事会や会議を行ったことがあっても、それだけで事業用部分になるわけではありません。
したがって、MS法人所有の住宅の一部を医療法人の事務所として使用する場合は、図面上の区分だけでなく、賃貸借契約、使用面積、賃料の根拠、実際の利用状況を確認できる資料を整えておく必要があります。
また、法人が購入した家具や家電などは、社宅家賃とは別の経済的利益として扱われる可能性があります。住宅の賃貸料だけでなく、役員が専属的に使用する高額な家具・設備の取扱いも確認が必要です。

豪華社宅をMS法人で所有する意味がなくなるわけではない
豪華社宅では役員が負担する家賃が高くなりやすいため、一般的な役員社宅と比べて節税効果は薄くなります。
それでも、MS法人で所有する意味が完全になくなるわけではありません。
個人で購入した場合、住宅ローンは理事長個人が返済し、返済後の不動産も個人の財産になります。
一方、MS法人が購入した場合、借入れと返済の主体はMS法人です。理事長がMS法人へ支払う社宅家賃はMS法人の収入となり、その収入がローン返済の原資になることがあります。
したがって、実態としては次のような資金の流れになります。
理事長個人の税引後資金
→ 社宅家賃としてMS法人へ支払い
→ MS法人が金融機関へローンを返済
法的にローンを返済するのはMS法人ですが、理事長が負担する家賃によって返済資金の大部分が賄われる場合、経済的には理事長の負担でMS法人の不動産が形成されていく面があります。
特に豪華社宅では、固定資産税の課税標準額を使った通常の算式ではなく、その住宅について通常支払うべき使用料に相当する額を役員が負担することになります。
その家賃が周辺の賃料相場に近い金額になると、理事長は個人の税引後資金から高額な家賃を支払い続けることになります。
さらに、MS法人には家賃収入が計上されます。減価償却費や借入金利息などを経費にできても、家賃収入の方が大きければ、MS法人には利益と法人税等の負担が生じます。
豪華社宅では「法人で減価償却できる」というメリットだけを見るのではなく、「理事長がいくら家賃を負担し、その家賃がMS法人のローン返済にどの程度充てられるのか」まで確認する必要があります。
それでも、返済後の不動産をMS法人に残して長期的に管理したい場合や、将来の資産管理・承継計画と一体で保有する場合には、MS法人で所有する意味があります。
ただし、MS法人の株式を理事長やその親族が所有している場合、不動産の価値はMS法人の株価にも反映されます。MS法人へ不動産を移しただけで、相続財産からその価値が消えるわけではありません。
将来、MS法人から理事長個人へ不動産を移す場合にも、適正な時価による売買、MS法人側の譲渡損益、個人側の購入資金、不動産取得税、登録免許税などを確認する必要があります。
そのため、豪華社宅をMS法人で購入する場合は、節税額だけではなく、ローン返済後に誰が不動産を所有していたいのかまで決めておくことが重要です。
個人購入とMS法人購入の違い
個人購入とMS法人購入では、建物の減価償却だけでなく、居住中の負担、ローン返済後の所有者、売却時の税金、相続・承継の方法が異なります。
確認項目 | 個人で購入 | MS法人で購入 |
|---|---|---|
不動産の所有者 | 理事長個人 | MS法人 |
建物の取扱い | 自宅部分は原則として経費にならない | 法定耐用年数で減価償却 |
購入資金 | 個人の税引後資金・借入れ | MS法人の資金・借入れ |
居住中の負担 | 住宅ローン等を個人で負担 | 適正な社宅家賃を個人が負担 |
借入金元本 | 経費にならない | 経費にならない |
返済後の所有者 | 理事長個人 | MS法人 |
売却時 | 居住用財産の特例を検討 | 法人の譲渡損益として課税 |
相続・承継 | 不動産そのものを承継 | MS法人株式への影響も確認 |
個人所有のマイホームを売却した場合には、一定の要件を満たすことで、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。
MS法人が所有する住宅の売却には、この個人向けの特例を利用できません。
一方、MS法人で長期間保有することで、不動産と借入金を法人内で管理し、将来の資産管理や承継計画へつなげられる可能性があります。
どちらが有利かは、購入時の経費だけでは決まりません。購入、保有、返済、売却、承継までを一つの流れとして比較する必要があります。

MS法人による役員社宅が向いているケース
MS法人による役員社宅のメリットが出やすいのは、小規模住宅または一般住宅に該当し、税務上の賃貸料相当額が周辺の市場家賃より低くなる場合です。
MS法人に安定した収入と資金力があり、家賃収入だけに頼らなくても借入金を返済できることも重要です。
さらに、役員が退任した後もMS法人で不動産を保有する理由があり、将来の売却や承継まで計画している場合には、法人所有との整合性を説明しやすくなります。
適正な社宅家賃が市場家賃より低く、MS法人の資金繰りにも余裕がある住宅ほど、役員社宅のメリットを得やすくなります。
個人購入の方が分かりやすいケース
豪華社宅に該当する可能性が高く、通常支払うべき使用料が市場家賃に近い金額になる場合は、個人購入も有力な選択肢です。
理事長が税引後の手取りから高額な社宅家賃を支払い、その家賃によってMS法人のローンを返済するのであれば、個人の負担が大きく軽減されるとは限りません。
また、将来自由に売却したい場合や、個人の居住用財産に関する税制特例を検討したい場合も、個人所有の方が分かりやすいことがあります。
「法人なら減価償却できる」「法人なら長期融資を受けられる」という理由だけで、MS法人購入が有利になるわけではありません。
金融機関から融資を受けられることと、税務・資金繰りの面で有利になることは別の問題です。
購入前に確認しておきたい6つのポイント
土地契約や融資実行の前に、最低限、次の6項目を確認します。
役員社宅の対象
居住者が、住宅を所有するMS法人の役員であるかを確認します。住宅区分
小規模住宅、一般住宅、豪華社宅のどれに該当する可能性があるかを整理します。適正な家賃
税務上必要となる家賃と周辺の市場家賃を比較します。取得価額
土地と建物の取得価額を区分し、減価償却できる金額を確認します。資金繰り
減価償却費だけでなく、経費にならない借入金元本の返済まで含めて試算します。将来の出口
売却、役員退任、相続、MS法人株式の承継まで確認します。
この6項目を、理事長個人、MS法人、医療法人の3者に分けて一覧化すると、税金と資金の流れが分かりやすくなります。

まとめ
役員社宅は、適切に利用すれば有利な制度です。
MS法人が住宅を所有することで建物を減価償却でき、理事長個人が税引後の手取りから購入代金のすべてを直接負担しなくてよいというメリットがあります。
特に、適正な社宅家賃が市場家賃より低くなる住宅では、法人の費用化と個人負担の軽減を両立できる可能性があります。
一方、豪華社宅では、通常支払うべき使用料に相当する家賃を理事長が負担します。
その家賃はMS法人の収入となり、MS法人のローン返済原資になります。MS法人では建物を減価償却できますが、家賃収入も計上され、借入金元本は経費になりません。
豪華社宅では、理事長が個人の税引後資金から家賃を支払い、その家賃によってMS法人のローンが返済されていく構造になりやすいため、一般的な役員社宅ほどの節税効果を得られない可能性があります。
ただし、ローン返済後の不動産はMS法人に残ります。
そのため、MS法人での所有が無意味なのではなく、節税を目的にするのか、法人で不動産を長期保有することを目的にするのかを明確にする必要があります。
購入前には、減価償却費だけを見るのではなく、適正家賃、法人税、借入金元本の返済、売却時の税金、最終的な所有者まで確認してください。
MS法人での自宅購入を検討しているものの、現在の税理士とは異なる視点でも一般的な考え方を確認しておきたい方は、60日間無料の「ゆるやかな税理士変更プラン」をご利用ください。
無料期間中は、現在の税理士との契約を続けたまま、MS法人購入と個人購入を比較する際の基本的な考え方や、事前にそろえておきたい資料をご説明します。
60日の期間中は無料で、いつでもキャンセルできます。期間終了後に自動で正式契約へ切り替わることもありません。
物件ごとの適正家賃、豪華社宅の個別判定、税額・資金繰りの試算など、資料に基づく個別具体的な対応は顧問契約後となります。

この記事の監修者

税理士法人シーガル
代表社員/
税理士・公認会計士
中込 政博
あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、税理士法人シーガルを設立。税金に関する相談はもちろんのこと、公認会計士ですので、医業経営についてもぜひご相談ください!

税理士法人シーガル
代表社員/
税理士・行政書士
遠藤 大樹
医療特化会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、税理士法人シーガルを設立。医師・歯科医師に対する税務顧問の他、相続税申告や相続対策・医業承継もお任せください!
\税理士変更をご検討中の方へ/
ゆるやかな税理士変更プラン
60日の移行期間中は無料!
移行期間中はいつでもキャンセルできますので、現在の税理士との契約継続を選択することも可能です。移行期間終了後に自動で正式契約に切り替わることもありません。


