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JOURNAL

2026.7.4

2040年地域医療構想策定ガイドラインで病院経営はどう変わる?

2026年7月3日に、厚生労働省から「地域医療構想策定ガイドライン」が公表されました。

地域医療構想というと、これまでは「病床数の話」「病床削減の話」「行政対応の話」と受け止められることが多かったかもしれません。

しかし、今回の地域医療構想策定ガイドラインは、病院・有床診療所・医療法人にとって、かなり重要な資料です。

2040年に向けて、高齢者救急や在宅医療の需要が増える一方で、急性期医療の需要は多くの地域で減少し、医師や看護職員などの人材確保も難しくなることが想定されています。そのため、地域の中でどの医療機関がどの役割を担うのか、入院・外来・在宅・介護との連携をどう作るのかが、これまで以上に重要になります。

つまり、地域医療構想は、単なる行政対応ではありません。

自院が地域の中でどの役割を担い、その役割を続けるために、病床・人員・設備投資・資金繰りをどう整理するかという病院経営のテーマです。

特に、病院、有床診療所、介護医療院や老健を併設する医療法人、在宅医療を強化したい医療法人、地域包括ケア病床・回復期・慢性期を持つ法人にとっては、今後の経営方針を考えるうえで避けて通れない内容だと思います。

地域医療構想への対応は、制度を読むだけでは不十分です。

特に、次のような医療法人では、早めに数字を整理しておく必要があります。

  • 病床稼働率が下がってきている

  • 急性期を続けるか、地域急性期・包括期へ寄せるか悩んでいる

  • 地域包括ケア病床、回復期、慢性期病床の採算を見直したい

  • 高額医療機器や建物更新を控えている

  • 金融機関に今後の病院経営方針を説明する必要がある

  • 現在の顧問税理士から、病床別収支や資金繰り資料が出てこない

このような場合、地域医療構想を「制度対応」として読むだけでは足りません。

自院が今後どの医療機関機能を担うのか。
そのために、病床数、人員配置、設備投資、借入返済、資金繰りに無理がないのか。
理事会や金融機関にどう説明するのか。

ここまでを数字に落とし込んで整理することが必要になります。

現在の顧問税理士が税務申告中心で、病院経営の資料づくりや資金繰り、金融機関説明まで相談しにくい場合は、いきなり税理士を変更するのではなく、まずは比較しながら整理する方法もあります。

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地域医療構想を踏まえて病床別収支・資金繰り・設備投資計画を整理できる税理士比較相談バナー

地域医療構想策定ガイドラインとは

地域医療構想策定ガイドラインが地域医療構想、第9次医療計画、病院経営の見直しにつながる流れを示す図"

地域医療構想策定ガイドラインは、都道府県が2040年に向けた新たな地域医療構想を策定し、推進するために、厚生労働省が示した資料です。

一言でいうと、都道府県が新たな地域医療構想を作るときの基本方針であり、地域医療構想調整会議での協議の土台になる資料です。

このガイドラインは、主に次の3つの観点から整理されています。

1つ目は、基本的な考え方です。
2040年に向けて、どのような医療提供体制を目指すのか、医療機関機能にどのような役割が期待されるのかが整理されています。

2つ目は、地域医療構想の策定です。
都道府県が地域医療構想を策定するにあたり、どのように協議を進めるか、どのようなデータをもとに検討するか、医療機関機能報告や病床機能報告をどう使うかが整理されています。

3つ目は、地域医療構想の推進です。
策定して終わりではなく、地域医療構想の進捗や医療提供体制の状況を定期的に把握し、必要に応じて見直すことが示されています。

ここで重要なのは、このガイドラインの主な対象は都道府県であるものの、医療機関側にも大きな影響があるということです。

医療機関は今後、現在担っている医療機関機能だけでなく、2040年において担う医療機関機能や診療実績等を報告し、地域で協議される側になります。

つまり、病院側から見ると、これは「行政が何かを決める資料」ではありません。

自院の将来の役割、病床機能、設備投資、人員配置、経営計画に影響する資料と考えた方がよいです。

このガイドラインはなぜ重要なのか

2040年に向けて高齢者救急・在宅医療の需要増加、急性期需要の変化、人材確保難が病院経営に影響することを示す図

今回の地域医療構想策定ガイドラインは、かなり重要だと思います。

理由は、地域医療構想の位置づけがこれまでよりも重くなるためです。

これまで地域医療構想は、医療計画の記載事項の一つとされてきました。ところが、新たな地域医療構想は、医療計画の上位概念として位置付けられることになります。さらに、第9次医療計画は、地域医療構想の実行計画として、5疾病・6事業、在宅医療、外来医療、医師確保、医師以外の医療従事者の確保などの具体的な取組を定めることになります。

これは、病院経営にとって非常に大きいです。

今後は、地域医療構想で示された方向性を踏まえて、医療計画が具体化されます。つまり、地域医療構想は単なる参考資料ではなく、今後の医療提供体制や医療計画の前提になる大きな方向性です。

病院側から見ると、次のような論点に直結します。

  • 自院が2040年にどの医療機関機能を担うのか

  • 急性期拠点機能として残るのか

  • 高齢者救急・地域急性期へ寄せるのか

  • 在宅医療等連携機能を担うのか

  • 専門等機能として特定領域に集中するのか

  • その方向性で病床・人員・設備投資・資金繰りが成り立つのか

これらは、単なる制度上の分類ではありません。

病床の使い方、医師・看護師の確保、設備投資、借入返済、金融機関説明に直結する経営判断です。

だからこそ、地域医療構想策定ガイドラインは、病院や有床診療所にとって、早めに読み、経営計画に落とし込むべき重要資料だと考えています。

地域医療構想は病床削減だけの話ではない

地域医療構想という言葉から、病床削減や統廃合をイメージする方も多いと思います。

もちろん、病床機能の見直しや医療機関の連携・再編・集約化は重要なテーマです。今回の整理でも、急性期医療の集約、高齢者救急への対応、在宅医療や介護との連携、人材確保などが幅広く扱われています。

ただ、病床削減だけを目的とした話ではありません。

2040年に向けて、高齢者救急や在宅医療の需要が増え、急性期医療の需要が多くの地域で減少し、医療従事者の確保がさらに難しくなる。そうした中で、地域全体として必要な医療をどう残し、どう役割分担するかを整理するものです。

ただし、ここを誤解してはいけません。

病床削減だけの話ではありませんが、今までと同じ経営を続けてよいという意味でもありません

病院経営としては、次の問いに向き合う必要があります。

自院は急性期を続けるのか。
高齢者救急・地域急性期を担うのか。
在宅医療や介護との連携を強めるのか。
専門等機能として特定領域に集中するのか。
その方針で、収支・人員・設備投資・資金繰りは成り立つのか。

ここまで整理して初めて、地域医療構想を病院経営に活かせるようになります。

早く動き出すことが病院経営では重要

病院経営では、制度変更や診療報酬改定の影響が数字に出てから動くのでは、遅くなることがあります。

地域医療構想の方向性が見え、国や厚生労働省がどのような医療提供体制を目指しているかが分かってきた段階で、早めに動き出すことが大切です。

特に、診療報酬が下がり切ってから、あるいは病床稼働率が落ち切ってから、慌てて機能転換や資金繰り改善を考えるのでは選択肢が狭くなります。

病院経営では、数字が悪化し切る前に、国の方向性と自院の経営数字を照らし合わせて動き始めることが重要です。

実際に、シーガルの顧問先でも、診療報酬や制度の方向性を踏まえて、早めに設備投資、人員配置、資金繰り、金融機関説明資料を整理している医療法人があります。

こうした法人は、制度変更を受け身で待つのではなく、自院の経営方針として先に整理している点が特徴です。

2028年度までに医療機関機能が協議される

地域医療構想について2026年度から2028年度までに医療機関機能や必要病床数を協議する流れを示す図

今回の流れで、病院側が特に意識すべきなのは、2028年度までのスケジュールです。

2026年度から2027年度上半期頃までに、医療需要の見通しや医療提供体制の現状について、客観的なデータに基づく分析を行い、地域医療構想調整会議で課題整理や構想区域の点検・見直しを行うこととされています。

そのうえで、2028年度までに、急性期拠点機能を担う医療機関の具体的な医療機関名も含め、2040年に各医療機関が担う医療機関機能、2040年の必要病床数、入院医療・外来医療・在宅医療・介護との連携・人材確保に関する取組を協議し、地域医療構想として策定する必要があるとされています。

これまでも病床機能報告はありましたが、今後は単に「今の病棟がどの機能か」を報告するだけではありません。

2040年に自院がどの医療機関機能を担うのかが協議の対象になります。

そのため、医療法人側でも、早めに次の整理をしておく必要があります。

  • 現在の診療実績

  • 病床稼働率

  • 救急搬送受入件数

  • 全身麻酔手術件数・緊急手術件数

  • 病棟別・診療科別の収支

  • 医師・看護職員等の確保見込み

  • 建物や医療機器の更新計画

  • 借入返済と資金繰り

地域医療構想調整会議で何か決まってから慌てて考えるのではなく、自院としてどういう役割を担うのが現実的なのかを、先に数字で把握しておくことが大切です。

医療機関機能は診療報酬だけで決まらない

医療機関機能を考えるときに注意したいのは、診療報酬上の入院料や加算だけで、自動的に決まるものではないという点です。

診療報酬上の入院料や各種加算の届出状況を目安として協議することは考えられます。しかし、特定の診療報酬項目の届出の有無を、各医療機関機能の必要条件や十分条件のように扱うことは適切ではないとされています。

ここは病院経営上、とても大事です。

つまり、今後は、
「この入院料だから、この機能です」
という説明だけでは足りません。

実際にどのような患者を受け入れているのか。
どのような手術や救急を担っているのか。
どのような退院支援や在宅連携をしているのか。
その機能を担い続けるだけの人員・設備・経営体力があるのか。

こうした点を、診療実績と経営資料の両方で説明できる状態にしておく必要があります。

地域医療構想で整理される5つの医療機関機能

地域医療構想で整理される高齢者救急・地域急性期機能、急性期拠点機能、在宅医療等連携機能、専門等機能、医育及び広域診療機能の図解

今回の整理では、主に次の医療機関機能が示されています。

  • 高齢者救急・地域急性期機能

  • 急性期拠点機能

  • 在宅医療等連携機能

  • 専門等機能

  • 医育及び広域診療機能

医療機関にとって重要なのは、単にどれかを選ぶことではありません。

自院がどの機能を担うのが現実的か、その機能を担うための人員・設備・収支・資金繰りが成り立つかを確認することです。

高齢者救急・地域急性期機能

急性期拠点機能を検討する際に、手術件数、救急搬送、医師確保、医療機器、建物更新、資金繰りを整理する図

高齢者救急・地域急性期機能は、高齢者をはじめとした救急搬送を受け入れ、必要に応じて専門病院や施設等と連携しながら、入院早期からリハビリテーションや退院調整を行い、早期退院につなげる機能です。

この機能を担う場合、病院経営上は次の点が重要になります。

高齢者救急をどの程度受け入れるか。
急性期拠点病院との役割分担をどうするか。
リハビリテーションや退院支援の体制をどう整えるか。
介護施設や在宅医療との連携をどう強化するか。
包括期機能の病床をどう活用するか。

高齢者救急・地域急性期機能は、単に救急車を受け入れるだけではありません。

受け入れた後に、早期からリハビリテーション、栄養管理、口腔管理、退院調整を行い、在宅や施設へつなぐ体制が求められます。

そのため、収支を見るときも、救急受入件数だけでなく、入院単価、平均在院日数、リハビリ提供体制、退院先、再入院率、人件費まで含めて見る必要があります。

急性期拠点機能

急性期拠点機能は、手術や救急医療など、医療資源を多く要する症例を集約して提供する機能です。

急性期拠点機能を担う医療機関については、2040年の人口推計をもとに、人口20万人から30万人程度につき1か所程度を目安に確保する考え方が示されています。

ただし、人口だけで機械的に決まるわけではありません。

急性期拠点機能を担う医療機関の決定にあたっては、全身麻酔手術件数、緊急手術件数、救急搬送受入件数などの診療実績だけでなく、医師をはじめとする医療従事者の確保見込み、医療機器や施設の整備状況、建物の築年数、補助金や繰入金の活用状況なども考慮して協議するとされています。

ここは、病院経営に直結します。

急性期拠点機能を目指す場合、単に「急性期を続けたい」という意思だけでは足りません。

手術件数は維持できるのか
救急対応体制は持続可能か
外科医・麻酔科医・看護師を確保できるか
医療機器や建物更新に必要な投資は可能か
借入返済に耐えられるか
補助金や繰入金に依存しすぎていないか

こうした点を、理事会や金融機関に説明できる資料として整理する必要があります。

特に、高額医療機器の更新や建物投資は、地域医療構想と切り離して考えにくくなります。設備投資や融資の考え方については、関連記事の病院の高額医療機器更新はいつ?融資・補助金・資金繰りの考え方でも解説しています。

在宅医療等連携機能

在宅医療等連携機能は、地域での在宅医療の実施、他の医療機関や介護施設、訪問看護、訪問介護等と連携した24時間対応や入院対応を行う機能です。

病院経営の視点では、在宅医療等連携機能を担うかどうかは、収支構造を大きく変える可能性があります。

在宅医療は、病床収入とは違い、訪問診療、往診、訪問看護、オンライン診療、遠隔モニタリング、バックベッドの確保など、複数の機能を組み合わせて成り立ちます。

そのため、次のような整理が必要になります。

  • 訪問診療の件数見込み

  • 訪問看護ステーション等との連携

  • 24時間対応の人員体制

  • バックベッドの確保

  • 在宅患者の急変時対応

  • 介護施設との協力医療機関契約

  • 車両・ICT・システム投資

在宅医療等連携機能を強める場合、病院の中だけで完結する収支ではなく、外部連携を前提にした収支管理が必要になります。

専門等機能

専門等機能は、高齢者救急・地域急性期機能、急性期拠点機能、在宅医療等連携機能に当てはまらないものの、集中的なリハビリテーション、中長期の入院医療、有床診療所が担う地域に根ざした診療機能、一部診療科に特化した医療などを担う機能です。

たとえば、次のような医療機関は、専門等機能として整理される可能性があります。

回復期リハビリテーションに特化した病院。
慢性期入院を担う医療機関。
地域に根ざした有床診療所。
一部の診療科に特化した専門病院。

ただし、専門等機能を選べば安心というわけではありません。

一部の診療科に特化し、小規模に手術等を実施している医療機関については、今後の医療需要や術者の確保見込みを踏まえ、効率的な医療提供のために、急性期拠点機能を担う医療機関へ症例を集約していくことも検討する必要があります。

つまり、専門等機能として残る場合でも、自院の専門性が地域で本当に必要とされているか、症例数を維持できるか、人員を確保できるか、設備更新に耐えられるかを整理する必要があります。

医育及び広域診療機能

医育及び広域診療機能は、主に大学病院本院など、医師の養成や広域的な診療を担う医療機関を想定した機能です。

一般的な民間病院や有床診療所では、直接この機能を担うケースは多くないと思われます。
ただし、地域内で急性期拠点機能や専門等機能がどう整理されるかによって、紹介・逆紹介、救急搬送、専門医療の集約などに影響する可能性があります。

そのため、自院が医育及び広域診療機能を担わない場合でも、地域の中でどの医療機関が広域的な役割を担うのかを把握しておくことは重要です。

病床機能では「包括期機能」が重要になる

病床機能では、包括期機能が重要になります。

従来の4区分のうち、これまで「回復期機能」とされていたものについて、高齢者等の急性期患者に治療と入院早期からのリハビリテーション等を行い、早期の在宅復帰を目的とした医療を提供する機能と、従来の回復期機能を合わせて、包括期機能として位置付けることが示されています。

この包括期機能は、病院経営上かなり重要です。

高齢者救急が増える中で、すべてを急性期拠点病院で受け止めるのではなく、地域急性期や包括期の病床が、入院早期からリハビリテーションや退院支援を行い、在宅や介護施設へつなぐ役割を担うことになります。

病院側としては、次の点を検討する必要があります。

  • 包括期機能の病床をどう位置付けるか

  • 急性期病床からの転換余地があるか

  • 回復期・地域包括ケア・慢性期との違いをどう説明するか

  • 人員配置と収支が成り立つか

包括期機能は、制度上の分類であると同時に、今後の病院経営の方向性を左右する重要な論点です。

必要病床数は単純な増床・減床判断では使えない

必要病床数と病床機能報告は算出方法が異なり、病床稼働率や実際の医療需要も踏まえて判断する必要があることを示す図

必要病床数についても注意が必要です。

必要病床数は、地域の将来推計人口や入院受療率などを踏まえて算出されます。式としては、2040年の性・年齢階級別の入院受療率と推計人口をもとにした入院患者数を、病床稼働率で除して算出するイメージです。

しかし、必要病床数と病床機能報告の病床数は、算出方法が異なるため、必ずしも一致しません。

地域での協議では、単に必要病床数と現在の病床数を数字だけで比較するのではなく、実際の診療実態、病床稼働率、医療需要などを踏まえて、地域全体として病床の確保について検討することが重要とされています。

これは、医療法人の経営判断でも同じです。

必要病床数が現在の病床数より多いから増床すべき、という単純な話ではありません。
逆に、必要病床数が少ないからすぐに削減すべき、という話でもありません。

大事なのは、自院の病床が実際にどの患者を受け入れ、どの機能を担い、どの程度稼働し、どの程度の収支を生んでいるかです。

そのため、病院側では、少なくとも次の資料を準備しておくべきです。

  • 病棟別の病床稼働率

  • 平均在院日数

  • 入院単価

  • 病棟別収支

  • 救急搬送受入件数

  • 手術件数

  • 退院先の内訳

  • 人件費率

  • 設備投資予定

  • 借入返済予定

これらがないまま地域医療構想の議論を見ても、自院にとっての意味を判断しにくくなります。

医療法人が今から確認すべき5つの数字

地域医療構想を踏まえて医療法人が確認すべき病床稼働率、平均在院日数、病棟別収支、人件費率、設備投資と借入返済余力を示す図

地域医療構想を病院経営に活かすために、医療法人が今から確認すべき数字は、主に5つです。

1. 病床稼働率

まず確認すべきは、病床稼働率です。

病床を持っているだけではなく、実際にどの程度使われているかを確認する必要があります。

病床稼働率が低い場合、その原因が地域需要の減少なのか、紹介患者が少ないのか、人員不足で受け入れられていないのか、退院調整がうまくいっていないのかを分けて考える必要があります。

地域医療構想の議論では、単に病床数だけでなく、実際にその病床が地域で機能しているかが問われます。

2. 平均在院日数

平均在院日数も重要です。

短ければよい、長ければ悪いという単純な話ではありません。
急性期拠点機能、高齢者救急・地域急性期機能、包括期機能、慢性期機能では、それぞれ求められる在院日数の考え方が異なります。

自院の機能に対して、平均在院日数が適切か。
入院早期からリハビリや退院支援ができているか。
退院先との連携が詰まっていないか。

こうした点を確認する必要があります。

3. 病棟別・機能別の収支

病院全体の黒字・赤字だけでは足りません。

地域医療構想を踏まえて経営判断をするには、病棟別・機能別の収支を見る必要があります。

急性期病棟はどの程度収益を生んでいるのか。
包括期や回復期の病棟は人件費に見合っているのか。
慢性期病床は介護施設や在宅医療との関係でどう位置付けるのか。
外来・在宅・訪問看護との連携まで含めると採算はどうなるのか。

ここを見ないまま機能転換を考えると、制度上は正しそうでも、経営としては危うい判断になることがあります。

4. 人件費率と採用余力

2040年に向けて、生産年齢人口が減少し、医療従事者の確保がさらに難しくなることが想定されています。

そのため、病院経営では、単に病床や機能を考えるだけでなく、その機能を担う人員を確保できるかを確認する必要があります。

特に、急性期拠点機能を担うなら、外科医、麻酔科医、救急対応、看護師、検査・放射線・薬剤部門など、幅広い人員体制が必要になります。

高齢者救急・地域急性期機能を担う場合でも、内科系医師、リハビリ職、退院支援、地域連携部門、看護体制が重要になります。

採用できない計画は、経営計画として現実性がありません。
地域医療構想への対応は、人員計画とセットで見る必要があります。

5. 設備投資と借入返済余力

最後に、設備投資と借入返済余力です。

急性期拠点機能を維持・強化するなら、医療機器、手術室、救急対応、建物更新などの投資が必要になります。

在宅医療等連携機能を強める場合でも、車両、ICT、遠隔モニタリング、訪問看護体制、情報共有システムなどの投資が必要になることがあります。

急性期拠点機能の協議では、建物の老朽化や建替見込み、補助金・繰入金の活用状況なども考慮されます。

つまり、地域医療構想への対応は、医療政策の話であると同時に、設備投資と資金繰りの話です。

どの機能を担うかによって、必要な投資も変わります。
その投資に借入が必要なら、金融機関に説明できる事業計画が必要になります。

機能転換は収支にどう影響するか

地域医療構想を踏まえると、自院の機能転換を検討する場面が出てくる可能性があります。

たとえば、急性期を続けるのか。
高齢者救急・地域急性期へ寄せるのか。
包括期・回復期を強化するのか。
慢性期・在宅医療・介護連携を強めるのか。
専門等機能として、特定領域に絞るのか。

この判断は、理念だけでは決められません。

どの機能を担うかで、収益構造、人件費、設備投資、借入返済、必要な地域連携が変わるからです。

急性期を続ける場合は、救急・手術・人材確保・設備投資が重要になります。
地域急性期や包括期に寄せる場合は、退院支援、リハビリ、在宅・介護連携、人件費管理が重要になります。
慢性期や在宅支援に寄せる場合は、療養病床、介護施設、訪問診療、訪問看護、協力医療機関との関係が重要になります。

そのため、機能転換を考えるときは、少なくとも次のようなシミュレーションが必要です。

  • 現在の機能を続ける場合の収支

  • 機能転換した場合の収支

  • 必要な人員数と人件費

  • 設備投資額

  • 借入返済額

  • 資金繰りへの影響

  • 補助金・基金等の活用可能性

  • 理事会での意思決定資料

  • 金融機関への説明資料

地域医療構想は、単なる制度対応ではなく、経営シミュレーションを伴うテーマです。

資金繰りや金融機関説明の考え方については、関連記事の病院の資金繰り改善|理事会・金融機関に説明できる5つの資料でも詳しく解説しています。

介護との連携も経営課題になる

今回の地域医療構想では、入院医療だけでなく、在宅医療や介護との連携も重要なテーマになっています。

高齢者救急や慢性期医療の需要が増える中で、療養病床、在宅医療、介護老人保健施設、介護医療院、特別養護老人ホームなどの既存資源をどう組み合わせていくかが問われます。

医療法人側から見ると、これは単なる連携の話ではありません。

退院先をどう確保するか
介護施設との協力関係をどう作るか
介護医療院や老健の稼働率をどう見るか
病院・在宅・介護を一体で見た収支はどうなるか

といった経営課題です。

介護との連携は、病床機能だけではなく、退院支援、在宅復帰、慢性期医療の受け皿、施設入所者の急変時対応まで関係します。

病院単体ではなく、病院・在宅・介護を一体で見た経営管理が必要になります。

理事会・金融機関に説明できる資料が必要になる

地域医療構想を踏まえた病院経営について、理事会や金融機関に説明するための病床計画、人員計画、設備投資計画、資金繰り表を示す図

地域医療構想は、地域の協議の場で進みます。
ただし、医療法人の内部では、理事会で意思決定し、必要に応じて金融機関にも説明する必要があります。

たとえば、次のような説明が求められます。

当院は、この地域でこの医療機関機能を担う
そのために、病床数はこのように考える
人員配置はこの体制を目指す
設備投資はこの時期に行う
借入返済と資金繰りはこの範囲で対応できる
地域の医療需要や患者アクセスにも合っている

金融機関は、地域医療構想の制度そのものよりも、その投資が返済可能なのか、病床稼働率や収支がどう変わるのかを見ます。

理事会も同じです。

「地域医療構想で必要だから」という説明だけでは足りません。
医療法人として、その判断が経営上も合理的なのかを説明する必要があります。

ここで、税理士・公認会計士が関与する意味が出てきます。

税理士・公認会計士が支援できること

地域医療構想への対応は、行政対応だけではありません。
実際には、病院経営の数字をどう整理するかが重要になります。

税理士ができることは、申告書の作成だけではありません。

病院・医療法人では、月次の数字を使って、理事会や金融機関に説明できる資料を作ることが重要です。

さらに、シーガルの代表である中込は公認会計士でもあります。
そのため、税務申告だけでなく、病院経営の数字の見方、資金繰り、設備投資、金融機関説明、理事会資料の作成まで含めて相談いただけます。

地域医療構想を踏まえた支援としては、たとえば次のようなものがあります。

  • 病床別収支の整理

  • 診療科別・機能別収支の整理

  • 資金繰り表の作成

  • 設備投資計画の作成

  • 借入返済計画の確認

  • 人件費率の分析

  • 病床稼働率・平均在院日数の整理

  • 理事会資料の作成

  • 金融機関説明資料の作成

  • 地域医療構想を踏まえた事業計画の見直し

医療機関機能の協議では、診療実績だけでなく、医療従事者の確保見込み、施設整備状況、建物の築年数、補助金や繰入金の活用状況なども考慮されます。

つまり、医療機関側も、医療実績と経営資料の両方を整えておく必要があるということです。

地域医療構想への対応は、制度を読むだけでは進みません。

自院がどの機能を担うのか。
その機能を担うために、収支・人員・設備投資・資金繰りに無理がないのか。
理事会や金融機関に説明できる資料になっているのか。

ここまで整理しておくことで、地域医療構想を受け身で待つのではなく、自院の経営方針として検討しやすくなります

現在の顧問税理士が税務中心で、病院経営の資料づくりまで相談しにくい場合は、シーガルのゆるやかな税理士変更プランもご検討ください。現在の顧問契約を継続したまま、60日間無料で比較相談できます。

よくある質問

地域医療構想策定ガイドラインは、どんな立ち位置の資料ですか?

地域医療構想策定ガイドラインは、都道府県が2040年に向けた新たな地域医療構想を策定・推進するための基本的な考え方と具体的な進め方を示した資料です。

主な対象は都道府県の医療担当部局ですが、地域医療構想調整会議での議論の参考資料として活用することも想定されています。

さらに、新たな地域医療構想は医療計画の上位概念として位置付けられ、第9次医療計画は地域医療構想の実行計画として具体的な取組を定めることになります。

そのため、病院・有床診療所・医療法人にとっては、今後の医療提供体制や経営方針を考えるうえでかなり重要な資料です。

地域医療構想は病床削減の話ですか?

病床削減や統廃合だけの話ではありません。

ただし、2040年に向けて、地域の医療需要、人材確保、病床機能、医療機関機能を見直す必要があるため、自院の病床や役割に影響する可能性はあります。

重要なのは、病床を減らすかどうかではなく、自院が地域の中でどの機能を担うのかを整理することです。

無床クリニックにも関係ありますか?

直接の影響は、病院や有床診療所の方が大きいです。

ただし、在宅医療、外来機能、かかりつけ医機能、地域連携を強める医療機関では、関係する可能性があります。

今回の整理では、入院医療だけでなく、外来医療、在宅医療、介護との連携、人材確保も含めて整理されています。

病院は何から準備すべきですか?

まずは、病床稼働率、平均在院日数、病棟別収支、人件費率、設備投資・借入返済余力を整理することです。

地域医療構想の議論は制度上の話に見えますが、医療法人側では、最終的に収支・人員・設備投資・資金繰りに落とし込む必要があります。

金融機関説明にも関係しますか?

関係します。

機能転換や設備投資を行う場合、金融機関には制度説明だけでなく、収支計画、資金繰り、返済可能性を示す必要があります。

特に、急性期拠点機能を担う医療機関の協議では、診療実績だけでなく、建物の築年数、施設整備状況、補助金や繰入金の活用状況なども考慮されるため、設備投資計画や資金計画の整理が重要になります。

税理士に相談する意味はありますか?

あります。

地域医療構想そのものは医療政策の話ですが、医療法人側の対応は、病床別収支、資金繰り、設備投資計画、借入返済、理事会資料、金融機関説明資料に落ちます。

つまり、制度を読むだけではなく、数字に落とし込む場面で税理士が関与しやすいテーマです。

また、シーガルでは税務だけでなく、代表の中込が公認会計士として、税務申告だけではなく、経営資料の見せ方や金融機関説明まで含めて支援しています。

まとめ

地域医療構想策定ガイドラインは、都道府県が2040年に向けた新たな地域医療構想を策定・推進するための資料です。

ただし、病院・有床診療所・医療法人にとっては、行政側の資料にとどまりません。

新たな地域医療構想は、医療計画の上位概念として位置付けられ、第9次医療計画は地域医療構想の実行計画として具体的な取組を定めることになります。

今後は、医療機関機能報告や地域医療構想調整会議を通じて、自院が2040年にどの医療機関機能を担うのかが重要になります。

医療機関機能は診療報酬だけで機械的に決まるものではなく、診療実績、人員、施設整備、経営状況などを踏まえて協議されます。

そのため、医療法人側では、早い段階で次の点を整理しておくことが大切です。

  • 病床稼働率

  • 平均在院日数

  • 病棟別・機能別の収支

  • 人件費率と採用余力

  • 設備投資と借入返済余力

  • 理事会での説明資料

  • 金融機関への説明資料

地域医療構想は、病床削減や統廃合だけの話ではありません。

自院が地域の中でどの役割を担い、その役割を続けるために、どのくらいの病床、人員、設備投資、資金繰りが必要なのかを整理するテーマです。

診療報酬の方向性が見えてから、あるいは病床稼働率が落ち切ってから動くのでは、選択肢が狭くなります。

制度の方向性が見えた段階で、自院の数字を整理し、理事会や金融機関に説明できる状態を作っておくことが、これからの病院経営では重要です。

地域医療構想を踏まえて、病院経営資料や資金繰りを整えたい場合は、シーガルへご相談ください。

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この記事の監修者

中込 政博

税理士法人シーガル

代表社員/

税理士・公認会計士

中込 政博

あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、税理士法人シーガルを設立。税金に関する相談はもちろんのこと、公認会計士ですので、医業経営についてもぜひご相談ください!

遠藤 大樹

税理士法人シーガル

代表社員/

税理士・行政書士

遠藤 大樹

医療特化会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、税理士法人シーガルを設立。医師・歯科医師に対する税務顧問の他、相続税申告や相続対策・医業承継もお任せください!

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