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JOURNAL

2025.11.29

認定医療法人とは?持分なし移行の仕組みと相続税対策を完全解説

長年、地域医療を支えてこられた理事長先生。 ふと自院の「出資持分」の評価額を見て、「いつの間にこんなに高くなっているのか」と愕然としたことはありませんか?

「万が一の時、家族に億単位の相続税がかかってしまうのではないか」 「退社する親族から高額な払戻請求が来たら、病院の現金が底をついてしまう」

もし、このような不安を少しでもお持ちなら、今の状態で放置するのは非常に危険です。 しかし、解決策はあります。それが、国が用意した特例措置「認定医療法人制度」です。

結論から申し上げますと、この制度を活用すれば、本来かかるはずの多額の相続税や贈与税を実質ゼロにして、「持分なし医療法人」へ移行することが可能です。

ただし、この特例は現行の税制において「令和8年(2026年)12月末」までの期間限定とされています。 「まだ先だ」と思っていても、認定手続きや出資者との調整には数年かかるケースも珍しくありません。期限直前で慌てないためにも、早めの着手が鉄則です。

本記事では、医療法と税務に精通した専門税理士が、難解な「認定医療法人制度」の仕組みとメリットを、専門用語を使わずにわかりやすく解説します。 高騰する持分リスクから解放され、次世代へ安心してバトンを渡すために、ぜひ最後までお読みください。

そもそもなぜ「認定医療法人制度」が作られたのか?

【図解】持分あり医療法人の相続税・払戻請求リスクを、認定医療法人制度という「税負担ゼロ」の架け橋で乗り越え、安全に持分なし医療法人へ移行する様子のイラスト。

制度の細かい話の前に、なぜ国がこのような特例を作ったのか、その背景を少しだけお話しします。 それはズバリ、「地域医療を守るため(医業の継続)」です。

昭和から平成初期にかけて設立された「持分あり医療法人」は、相続や退社に伴う多額の資金流出によって、黒字であっても経営が破綻するリスクを常に抱えています。 もし、税金や払戻金が払えずに病院が倒産してしまったら、一番困るのは地域の患者さんです。

そこで国は、「ちゃんと『持分なし(新しい制度)』に移行して、永続的に医療を続けてくれるなら、移行にかかる税金は免除しましょう」という特例を作りました。 これが、認定医療法人制度です。単なる節税策ではなく、地域医療のインフラを守るための国の施策なのです。

放置は危険!「持分あり医療法人」を襲う2大リスク

「うちはまだ大丈夫」と思っている先生も多いですが、リスクは水面下で膨れ上がっています。具体的な数字で見てみましょう。

1. 出資持分の評価額高騰による「相続税」の負担増

【グラフ】医療法人の出資持分が設立時1,000万円から時価5億円に高騰。その評価差額により、概算で約2.5億円もの多額の相続税が発生するリスクを示した図。

設立当初は数百万円だった出資額も、数十年の黒字経営を経て、その評価額(株価)が数億円、数十億円に膨れ上がっているケースは珍しくありません。 よく「相続税が高騰する」と言われますが、税率が上がるわけではありません。「評価額が高騰し、結果として相続税が払えない額になる」のです。

【ケーススタディ:設立30年の医療法人】

設立時の出資額:1,000万円

現在の評価額(時価):5億円

この状態で理事長に相続が発生すると、後継者はこの「5億円の財産」を相続したことになります。 他の財産と合わせると、概算で約2億5,000万円もの現金を、相続税として納めなければなりません。 個人の資産で払えなければ、病院の土地や建物を売却するか、廃業するしかなくなります。

2. 社員からの「払戻請求」による経営危機

【図解】医療法人の社員(出資者)が退社時に持分の払戻請求を行うことで、巨額の現金が流出し、黒字でも資金ショートによる倒産危機に陥るメカニズムを示したイラスト。

「持分あり」のリスクは、持分を持っている社員が「辞めるから、私のお金を返して」と言える権利(払戻請求権)を持っている点にあります。

もし、親族である社員が退社する際に「自分の持分(時価5億円)を現金で払い戻してほしい」と請求してきたらどうなるでしょうか? 病院側に5億円の余剰キャッシュがあれば良いですが、医療機器への投資などで手元資金がない場合、利益が出ていても資金ショートし、倒産に追い込まれます。

最大のメリットは「税負担ゼロ」での移行

認定医療法人制度を使えば、上記のリスクを解消するための「持分なしへの移行」にかかる税金が優遇されます。

1. 「みなし贈与税」が非課税になる

【図解】持分放棄による「みなし贈与税」の発生メカニズム。一方の理事が持分を放棄することで、もう一方の理事の持分価値が上昇し、それが贈与とみなされ課税される仕組みを天秤で解説。認定医療法人なら非課税となる。

通常、何の対策もせずに持分を放棄して「持分なし」になろうとすると、「みなし贈与税」という思わぬ税金がかかります。

例えば、理事長Aと理事Bの2名で、それぞれ「1億円」ずつの持分を持っていたとします。 ここで理事長Aが「病院のために」と自分の持分を放棄すると、病院の価値は変わらないため、残った理事Bの持分価値が実質「2億円」に跳ね上がります。

税務署はこれを「AからBへ、1億円分の得する権利を贈与した」とみなします。 結果、何も受け取っていない理事Bに、巨額の贈与税(約5,000万円)が課税されてしまうのです。これが「みなし贈与」の恐怖ですが、認定医療法人制度を使えば、この贈与税は非課税になります。

2. 相続税・贈与税の納税猶予と免除

認定計画に従って移行を進めている期間中は、本来かかるはずの相続税や贈与税が「猶予(待ってもらえる)」されます。 そして、無事に移行が完了すれば、その税金は「免除(払わなくていい)」されます。 つまり、実質ゼロ円での移行が可能になるのです。

3. 【重要】相続開始前「7年以内」の贈与加算の適用除外

ここが非常に重要なポイントです。 通常の相続税のルールでは、亡くなる前「3年以内(法改正により段階的に7年以内へ延長)」に行われた贈与は、なかったものとして相続財産に持ち戻して計算するという決まりがあります。 つまり、亡くなる直前に慌てて贈与しても、節税効果がないのが原則です。

しかし、認定医療法人制度における持分放棄については、この「持ち戻しルール(3年〜7年加算)」が適用されません。 極端な話、ご高齢の理事長先生が認定を受けて持分を放棄し、その直後に万が一のことがあったとしても、放棄した分は相続財産に含まれず、確実に節税効果を得られるのです。

これは、事業承継対策として極めて強力なメリットと言えます。

誰でも受けられる?認定を受けるための厳しい「要件」

「それならすぐに申請しよう」と思われるかもしれませんが、ここで注意が必要です。 認定を受けるためには、厚生労働省が定める厳しい「運営に関する要件」をクリアしなければなりません。

具体的には、以下の項目などがチェックされます。

【主な認定要件】

社会保険診療等の収入が全収入の80%を超えること (自由診療メインのクリニック等は対象外となる可能性あり)

親族等に対し、特別の利益を与えていないこと (役員報酬が高すぎる、相場より安く社宅を貸している等はNG)

MS法人との取引が適正であること (利益調整のためにMS法人を使っている場合、否認されるリスクあり)

遊休財産額の制限 (事業に使っていない過剰な現預金や資産を持っていないこと)

これらの要件は、申請時だけでなく、移行後6年間も維持し続ける必要があります。 もし違反すれば認定は取り消され、猶予されていた税金が一気に課税されるほか、年6.6%もの「利子税」というペナルティまで発生します。 そのため、ご自身だけで判断せず、必ず専門家のシミュレーションを受けることが重要です。

制度の期限は「令和8年12月末」まで

この特例措置は、現行法において「令和8年(2026年)12月31日」が期限となっています。

「まだ数年ある」と油断してはいけません。 認定申請の準備、出資者全員への説明と合意形成、定款変更、そして実際の移行手続きには、順調にいっても1年〜数年の期間を要します。 特例の期限ギリギリになって慌てて動いても、要件の調整が間に合わないケースが多々あります。余裕を持ったスケジュールで動くことが鉄則です。

【当法人の支援事例】持分評価額が高騰した医療法人の移行実績

税理士法人シーガルでは、これまでに多くの医療法人様の認定医療法人への移行をサポートしてまいりました。 規模や診療科目を問わず、複雑なケースにも対応可能です。以下に当法人が解決した事例の一部をご紹介します。

事例1:内科クリニック(医療法人)

状況:長年の黒字経営により、出資持分の評価額が約2億円まで高騰。

課題:理事長が高齢となり事業承継を検討していたが、後継者(子)に株式を買い取る資金がなく、相続税の負担も懸念されていた。

当法人の対応:認定医療法人制度を活用した移行計画を策定。80%要件等の運営基準をクリアし、無税での「持分なし医療法人」への移行を完了しました。

事例2:病院・介護老人保健施設(医療法人)

状況:病院と老健(介護老人保健施設)を運営する大規模法人。持分評価額は約6億円に達していた。

課題:事業規模が大きく、出資者も複数名おり権利関係が複雑化。払戻請求リスクが経営上の大きな爆弾となっていた。

当法人の対応:複雑な資産状況の整理と、出資者間の合意形成をサポート。WAM(福祉医療機構)などの情報提供も行いつつ、認定を取得。6億円分の相続税・払戻リスクを解消し、医業の永続的な基盤を整えました。

まとめ

本記事では、持分あり医療法人の出口戦略として有効な「認定医療法人制度」について解説しました。

最後に要点を整理します。

  • 放置は危険
    出資持分の評価額高騰による「相続税」と、社員からの「払戻請求」が病院経営を圧迫するリスクがある。

  • 制度のメリット
    認定を受けて移行すれば、相続税・贈与税・みなし贈与税が実質ゼロ(猶予・免除)になる。

  • 最大の注意点
    令和8年(2026年)12月末までの期限付きであり、かつ「社会保険診療報酬80%超」などの厳しい運営要件をクリアし続けなければならない。

この制度は、億単位のキャッシュアウトを防ぐ「切り札」ですが、少しの計算ミスや運営不備が、将来の認定取り消し(=遡及課税と利子税)につながるリスクもはらんでいます。

「自院は要件をクリアできるのか?」 「移行した場合、具体的にいくら節税できるのか?」

正確な判断には、専門家による緻密なシミュレーションが不可欠です。

まずは現状を正しく把握するために、医療法人・個人開業医専門の税理士法人シーガルへお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

中込 政博

税理士法人シーガル

代表社員/

税理士・公認会計士

中込 政博

あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、税理士法人シーガルを設立。税金に関する相談はもちろんのこと、公認会計士ですので、医業経営についてもぜひご相談ください!

遠藤 大樹

税理士法人シーガル

代表社員/

税理士・行政書士

遠藤 大樹

医療特化会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、税理士法人シーガルを設立。医師・歯科医師に対する税務顧問の他、相続税申告や相続対策・医業承継もお任せください!

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