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JOURNAL

2024.5.22

【2026年版】ベースアップ評価料と賃上げ促進税制の対応を整理

ベースアップ評価料は、令和6年度診療報酬改定で新設され、令和8年度診療報酬改定で大きく見直されました。令和8年度は、対象職員の範囲、点数体系、届出の扱いが変わっています。さらに、賃上げへの対応とは別に、物価対応料も新設されました。令和6年度の情報だけを前提にしていると、令和8年度の判断を誤りやすい状況です。

私たちは、保険診療を中心にしている医療機関であれば、ベースアップ評価料は原則として届け出た方がよいと考えています。保険診療が中心の医院は、自由に価格転嫁できるわけではないので、スタッフの賃上げ原資を自前の利益だけで確保し続けるのは簡単ではありません。取れる評価は取る、という考え方が基本になります。日本医師会も、令和7年度以前から届け出ている医療機関と令和8年度から届け出る医療機関では算定できる点数に差が付く見込みがあり、会員にとって大きなメリットとなる重要事項だと案内しています。

この記事では、令和6年度に始まったベースアップ評価料の基本から、令和8年度で何が変わったのか、物価対応料との違い、賃上げ促進税制との関係、ベースアップ手当と賃金規程の考え方まで、一つの記事でまとめて整理します。

ベースアップ評価料とは何か

ベースアップ評価料は、医療機関で働く職員の賃金改善を支えるための診療報酬上の評価です。診療所や歯科診療所で特に関係が深いのは、医科の外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)(Ⅱ)と、歯科の歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)(Ⅱ)です。

令和6年度に制度が始まったときの考え方は、まず(Ⅰ)で基本の賃上げ原資を確保し、それだけでは不足する無床診療所等は(Ⅱ)も検討するというものでした。医科では、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)が初診6点・再診2点、歯科では、歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)が初診10点・再診2点で始まりました。

令和6年度の対象職員は、主として医療に従事する職員が中心で、当初は40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する者は、評価料そのものの主な対象からは外れていました。令和6年度の制度を理解するときは、ここが出発点になります。

令和8年度改定で何が変わったのか

令和8年度改定で押さえたいのは、対象職員が広がったこと、点数が引き上げられたこと、継続的に賃上げをしている施設がより高く評価されること、令和8年6月からの算定には再届出が必要になったことです。

1.対象職員が広がった

令和8年度改定では、事務職員、40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局薬剤師も対象に含める方向で見直されました。令和6年度と比べると、医院の実際の人員構成に近い形で賃金改善を考えやすくなっています。なお、40歳以上の勤務医師・勤務歯科医師等は対象外です。

2.点数が大きく上がった

医科の外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)は、令和6年度の初診6点・再診2点から、令和8年度改定後は初診17点・再診4点に見直されました。歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)も、初診10点・再診2点から、初診21点・再診4点へ引き上げられています。

3.継続して賃上げしている施設は、さらに高く評価される

令和8年度改定では、令和7年度以前から継続して賃上げに取り組んでいる施設と、令和8年度から新たに取り組む施設で評価が分かれる設計になっています。早い段階から届け出ていた施設の方が、有利な点数設計になっています。

4.令和8年6月から算定する場合は再届出が必要

令和8年6月からベースアップ評価料を算定する場合は、これまで届出していた施設も含めて、再度届出が必要です。地方厚生局も、令和8年6月以降に算定するすべての医療機関・薬局・訪問看護ステーションに対して、再届出が必要だと案内しています。

令和6年度と令和8年度のベースアップ評価料の違いを整理した比較図

ベースアップ評価料は、原則として届け出た方がよいと考えています

私たちは、保険診療を中心にしている医療機関であれば、ベースアップ評価料は原則として届け出た方がよいと考えています。
理由は、保険診療をメインにしている医院では、診療単価を自由に上げて人件費を賄うことができないからです。賃上げが必要でも、原資をすべて自前で用意するのは負担が重くなります。だからこそ、制度として用意されている評価は取りに行く方が自然です。

日本医師会も、令和8年度改定では、令和7年度以前から届け出ている医療機関と、令和8年度から届け出る医療機関では算定できる点数に差が付く見込みだと説明しています。あわせて、診療所が外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)だけを届け出る場合は、直近1か月の初・再診料等の算定回数を調べるだけで書類を作成しやすいことも案内しています。

つまり、保険診療が主で、賃上げも避けにくいのであれば、取らない理由より、どう届け出るかを先に考える方がよい、というのが私たちの考えです。

ベースアップ評価料を取るかどうかは、制度の要件だけで決めるものではありません。
評価料による増収がどれくらい見込めるか、賃上げや法定福利費の増加を含めて人件費がどう動くか、物価対応料や賃上げ促進税制まで含めると最終的にどうなるかをあわせて見た方が判断しやすくなります。

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物価対応料は、ベースアップ評価料とは別に考える

令和8年度改定では、賃上げとは別に、物価対応料が新設されました。
ベースアップ評価料は人件費への対応であり、物価対応料は物価上昇による物件費の負担への対応です。同じ改定で出てきたため混同されやすいのですが、役割は別です。

そのため、院内で説明するときも、

  • ベースアップ評価料は賃上げのための評価

  • 物価対応料は物価高への対応

と分けて整理した方がわかりやすいです。

評価料による収入を、何に使うのかを曖昧にしないことが大切です。

ベースアップ分は「ベースアップ評価手当」で設計した方が扱いやすい

ベースアップ評価料を使って賃金改善を行う場合、基本給に直接上乗せする方法と、ベースアップ評価手当のような毎月手当で支給する方法があります。
制度改定に対応しやすいのは、後者です。

日本医師会でも、賃金規程の見直し案として、

  • ベースアップ評価手当として支給すること

  • 本手当は賞与の額に影響しないこと

  • 本手当はベースアップ評価料をもとに支給しているため、本制度が改定された場合は見直しを行うことができること
    などを規定する考え方を示しています。

このように手当で分けておくと、

  • どこまでが評価料由来の賃金改善か見えやすい

  • 賞与計算との関係を切り分けやすい

  • 制度改定や廃止のときに調整しやすい
    という利点があります。

また、令和7年度補正予算の賃上げ支援事業でも、賃金表や給与規程の変更に時間がかかる場合は、令和8年6月からベースアップを行うことを前提に、令和7年12月から令和8年3月までの4か月分を一時金又は特別手当で支給できるとされています。こうした流れを見ても、手当で設計する考え方は整合的です。

ベースアップ評価手当を使うか、基本給で対応するかによって、人件費の見え方や今後の見直しやすさは変わります。
このあたりは、届出実務だけでなく、賃金規程・賞与・法定福利費を含めた全体設計で考えた方が整理しやすくなります。

ベースアップ評価手当で賃金改善を行う流れを示した図

賃上げ促進税制とは

賃上げ促進税制は、前年度より給与等の支給額を増やした場合に、一定の要件を満たせば、その増加額の一部を法人税または所得税から税額控除できる制度です。中小企業庁も、そのように説明しています。

この記事では、中小企業向け賃上げ促進税制を前提に整理します。

現在公表されている制度では、

  • 前年度比1.5%以上の賃上げで、増加額の15%を税額控除

  • 前年度比2.5%以上の賃上げで、増加額の30%を税額控除

  • 教育訓練費の要件を満たせば、さらに10%上乗せ

  • 子育てとの両立支援又は女性活躍支援の要件を満たせば、さらに5%上乗せ

  • 税額控除額の上限は法人税額または所得税額の20%

  • 控除しきれなかった金額は5年間繰越し可能
    という内容です。

ベースアップ評価料は診療報酬上の評価、賃上げ促進税制は税額控除です。
同じ「賃上げ」に関する制度でも、役割が違います。
そのため、ベースアップ評価料を届け出たから自動的に税額控除が受けられるわけではない点は、最初に押さえておく必要があります。

中小企業向け賃上げ促進税制の税額控除イメージ図

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役員報酬だけを増やしても、賃上げ促進税制は使えません

賃上げ促進税制で見るのは、国内雇用者に対する給与等です。
中小企業庁のガイドブックでは、国内雇用者にはパート・アルバイト・日雇いも含まれる一方で、役員やその特殊関係者は含まれないと整理されています。
したがって、役員報酬だけを増やしても、賃上げ促進税制の税額控除にはつながりません。

医師や歯科医師の給与を動かさないと、賃上げ促進税制の条件を満たしにくいことがあります

ベースアップ評価料と賃上げ促進税制は、見ている範囲が違います。
ベースアップ評価料は、令和8年度改定で対象が広がったものの、なお40歳以上の勤務医師・勤務歯科医師等は対象外です。
一方、賃上げ促進税制は、医院全体の給与等支給額で判定します。

そのため、勤務医師や勤務歯科医師の給与比率が高い医院では、ベースアップ評価料の対象職員だけを上げても、全体の増加率が1.5%や2.5%に届かないことがあります。
令和8年度改定で、40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師が評価料対象に入ったぶん、以前よりは調整しやすくなりました。
それでも、賃上げ促進税制まで見るなら、医院全体の給与総額で試算する必要があります。

ベースアップ評価料と賃上げ促進税制で見る対象範囲の違いを示した図

どの順番で進めると整理しやすいか

まず、令和8年6月以降に何を算定するのかを決めます。
次に、対象職員の範囲を令和8年度ルールで洗い直すことが必要です。

そのうえで、基本給で上げるのか、ベースアップ評価手当で支給するのかを決め、賃金規程の文言まで整えます。
最後に、賃上げ促進税制まで見るなら、医院全体の給与総額で1.5%・2.5%の判定を試算する、という順番が進めやすいです。

まとめ

令和8年度診療報酬改定では、ベースアップ評価料の対象職員、点数体系、届出方法がまとめて見直されました。さらに、物価対応料が新設され、賃上げと物価高への対応を分けて考える必要が出てきています。

私たちは、保険診療が中心の医療機関であれば、ベースアップ評価料は原則として届け出た方がよいと考えています。
取れる評価は取り、そのうえで、ベースアップ評価手当の設計、賃金規程の整備、賃上げ促進税制の試算までつなげて考える方が、賃上げを続けやすくなります。
日本医師会も、届出済み施設と新規届出施設の評価差や、書類の簡素化を踏まえて、届出を強く勧めています。

ベースアップ評価料を続けるか迷っている、ベースアップ評価手当の設計や賃金規程をどう書くべきか悩んでいる、賃上げ促進税制まで含めて整理したい、という先生は、一度全体を整理し直すことをおすすめします。
クリニック全体の人件費や節税を広く見直したい方は、関連記事のクリニック経営者のための節税対策も参考になります。

「ベースアップ評価料を取るべきか、経営面から判断したい」
「ベースアップ評価手当や賃金規程まで含めて整理したい」
「賃上げ促進税制まで含めると、税負担や人件費がどう変わるか見たい」
「今の顧問税理士はいるが、別の視点でも確認したい」

このようなお悩みがある先生や事務長の方は、自己判断だけで進める前に、まずはご相談ください。

ベースアップ評価料の届出そのものではなく、評価料を取った場合の増収、人件費、法定福利費、賃上げ促進税制まで含めた全体像を整理したい方は、ご状況に近いメニューからお進みください。

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この記事の監修者

中込 政博

税理士法人シーガル

代表社員/

税理士・公認会計士

中込 政博

あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、税理士法人シーガルを設立。税金に関する相談はもちろんのこと、公認会計士ですので、医業経営についてもぜひご相談ください!

遠藤 大樹

税理士法人シーガル

代表社員/

税理士・行政書士

遠藤 大樹

医療特化会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、税理士法人シーガルを設立。医師・歯科医師に対する税務顧問の他、相続税申告や相続対策・医業承継もお任せください!

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