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2025.8.20

個人開業医必見!MS法人で内装・機器を購入し賃貸すると節税に?

開業医の先生方、日々の診療でお忙しい中、税金対策についてお悩みではないでしょうか?「MS法人を設立すると節税になる」と聞いたことはあっても、その具体的な仕組みや本当に得なのか、疑問に感じている方も少なくないでしょう。

結論から言うと、MS法人を設立して内装や機器を賃貸するスキームは、所得分散と消費税還付という2つの大きなメリットがあり、節税に有効な場合があります。

しかし、そこには見過ごされがちな「落とし穴」も存在します。この記事では、MS法人を活用した節税スキームの基本から、知っておくべきリスクまで、具体的な数字を交えながら専門家がわかりやすく解説します。

所得税率と法人税率の比較グラフ。個人の所得税率が最大45%まで上がる一方、法人の税率が低いことを示す棒グラフ。

 

MS法人活用の基本|開業医の節税スキームを解説

そもそもMS法人とは?その役割と目的

MS法人とは、メディカル・サービス法人の略称で、法律上の制度として定められているものではありません。クリニックの診療行為以外に必要な業務を行うことを目的に設立される法人を指します。

MS法人は、一般的に株式会社として設立されることが多いですが、合同会社や一般社団法人といった様々な組織形態を取ることが可能です。具体的には、クリニックの建物を所有して賃貸したり、医療機器をリースしたり、事務用品や消耗品を販売したりと、クリニック運営に必要な「サービス」を提供します。
 

個人と法人の所得分散で節税できる仕組み

医業収入が病院とMS法人の間で賃料収入として分散される様子を図解。病院の利益が減り、MS法人の利益が増えることで、所得が分散される仕組みを示す。

個人開業医の先生方の所得には、所得額が増えるほど税率が高くなる累進課税制度所得税が課せられます。所得が1,800万円を超えると、所得税率は最高で45%にも達し、これに住民税10%が加算されるため、税負担は非常に重くなります。

ここでMS法人を設立すると、先生のクリニックの所得の一部を、MS法人に移すことが可能になります。具体的には、クリニックがMS法人から内装や医療機器を借り、その賃料をMS法人に支払うことで、クリニックの所得は減り、MS法人の所得が増えるという形です。

MS法人の所得には法人税がかかりますが、個人の所得税とは税率体系が異なります。特に中小法人の場合、所得800万円以下の部分には15%という低い税率が適用されます。実質的な法人税率は約25〜30%となることが多いですが、高額な個人所得にかかる税率(最高55%)と比較すると、税率差を利用した節税効果が期待できるのです。
 

多くの開業医が知らないMS法人最大のメリットとは?

MS法人による節税は、所得の分散効果だけではありません。多くの開業医が気づきにくい最大のメリットは、多額の消費税還付を受けられる可能性がある点です。

クリニックの開業時には、内装工事費や医療機器の購入費など、多額の初期費用が発生します。これらの費用には10%の消費税が含まれています。通常、クリニックの診療報酬は非課税であるため、たとえクリニックが消費税の課税事業者になったとしても、非課税売上が多くを占めるため、支払った消費税を還付してもらうことはできないか、できたとしてもごく少額になってしまいます。

例えば、年間医業収入1億円のうち、1,000万円が自由診療(課税売上)だったと仮定します。この場合、クリニックは自由診療で患者から100万円の消費税を預かります。一方で、支払った消費税は、クリニックの運営経費(家賃や消耗品など)に対して発生します。

仮に、2,000万円の内装工事と4,000万円の医療機器を導入し、支払った消費税が合計600万円だったとします。この場合、クリニックが直接設備投資を行ったとしても、支払った消費税のほとんどは控除できず、以下のようになります。

  • 預かった消費税
    100万円(自由診療1,000万円に対する消費税)

  • 支払った消費税
    600万円(内装・機器導入費用に対する消費税)

  • 控除できる消費税

    600万円 × 課税売上割合10% = 60万円

  • 納める消費税
    100万円(預かった消費税) - 60万円(控除できる消費税) = 40万円

つまり、多額の設備投資で600万円の消費税を支払ったにもかかわらず、40万円を納めることになってしまうのです。

しかし、MS法人を設立してクリニックに内装や機器を「賃貸」することで、話は変わります。MS法人がこれらの設備投資を行い、賃料収入を得ることで「課税事業者」となり、設備購入時に支払った多額の消費税600万円のうち大部分を還付できる可能性があるのです。

これは、開業初期の資金繰りにおいて非常に大きな助けとなり、所得分散による節税効果をはるかに上回るメリットとなることがあります。
 

MS法人で内装・機器購入!消費税還付を最大限に活用する方法

MS法人による設備投資の流れと賃貸スキーム

MS法人を活用した設備投資の流れを示すフローチャート。病院が診療収入を得て、MS法人に賃料を支払う一方、MS法人がメーカーから機器・内装を購入する様子を図解。

MS法人を活用した節税スキームの核心は、内装や医療機器の購入方法にあります。

通常、クリニックを開業する際は、院長個人が内装工事費用や医療機器の購入費用を負担します。しかし、MS法人を介したスキームでは、これらの費用をMS法人が負担して購入します。

MS法人が購入した内装や医療機器は、その後、院長が経営するクリニックに「賃貸」または「リース」する形を取ります。これにより、クリニックはMS法人に対して、毎月、内装や医療機器の「使用料(賃料・リース料)」を支払うことになります。この賃料は、クリニック側の経費となり、MS法人側の収入となります。

多額になることが多い設備費用を調達するため、資金調達も重要なポイントです。一般的には、院長個人が開業後の運転資金の融資を受け、MS法人が設備資金の融資を受けるという形で資金を分担することが多いです。また、MS法人が借り入れを行う際、院長個人が連帯保証人となるケースが一般的です。
 

【具体的な数字で解説】賃貸が節税のポイントになる理由

賃貸という形は、所得の移転・分散、減価償却費の計上、そして消費税還付といった複数の税制メリットを組み合わせるための重要な手段となります。

ここでは、具体的な数字を使ってイメージしてみましょう。

【前提】

  • クリニック(個人)の年間所得:2,500万円(MS法人スキーム導入前)

  • MS法人が購入した内装・機器:6,000万円

  • 年間の減価償却費:400万円

  • MS法人に支払う年間賃料:600万円(適正賃料と仮定)

  • 内装・機器購入時に支払った消費税:600万円

【スキーム導入後の税負担】

  1. 所得の分散効果による節税
    クリニックはMS法人に年間600万円の賃料を支払う一方で年間400万円の減価償却費がクリニックで計上されるため、クリニックの課税所得は2,500万円から2,300万円に減少します。これにより、個人にかかる所得税・住民税の負担が軽減されます。所得が2,300万円の場合には、所得税・住民税等の合計が約884万円、実効税率は38%となります。

    一方、MS法人は賃料収入600万円から、減価償却費400万円を経費として計上できるため、所得は200万円になります。この所得には、個人よりも低い法人税率が適用されます。税引前利益が200万円の場合、法人税等の合計は約51万円、実効税率は25%です。
     

  2. 消費税還付による節税
    MS法人が設備購入時に支払った消費税600万円は、MS法人を課税事業者とすることで還付を受けられる可能性があります。この還付される消費税は、原則としてMS法人が受け取る賃料収入にかかる消費税額と、支払った経費にかかる消費税額を差し引いて計算されます。

    例えば、賃料収入が年間600万円(税抜)で、その消費税が60万円の場合、600万円(支払った消費税)-60万円(預かった消費税)=540万円が還付されるイメージです。これは、開業初期の資金繰りにおいて非常に大きな助けとなります。
     

【総税額の比較】
結果として、スキーム導入前には1,036万円の税金を支払うところ、スキーム導入後は消費税の還付を受けられることから税金が445万円に減少するといったメリットがあるのです。

このように、賃貸によって所得を個人と法人に分散させることで、より低い税率が適用される部分を増やし、グループ全体としての税金負担を最適化しながら、消費税還付を受けられるのです。

MS法人スキーム導入前後の税金合計と消費税還付額の比較。導入前は税金が1036万円、導入後は消費税の還付を540万円受けることができるため、税金が445万円に減ることを示す。

MS法人の「落とし穴」!失敗しないための重要チェックポイント

税務調査・行政指導で指摘される「適正賃料」のリスク

MS法人を設立する際、クリニックがMS法人に支払う賃料は、税務署や都道府県から「適正な価格」かどうかを厳しくチェックされます。もし、相場より高額な賃料を設定して所得を不当に分散させたと判断された場合、否認され、追徴課税の対象となるリスクがあります。

これは、所得の分散目的でMS法人を設立するケースが多いためです。税務当局は、第三者間の取引であればあり得ない不自然な取引がないか、目を光らせています。

適正な賃料の判断基準は明確に定められていませんが、不動産の賃料相場や、機器のリース料相場を参考に、合理的な根拠を持って設定することが重要です。
 

年間賃料1,000万円超で課税事業者に?

MS法人は、賃料収入が1,000万円を超えると、消費税の課税事業者となります。

課税事業者には消費税の納付義務が発生します。納める消費税は、原則として「預かった消費税」から「支払った消費税」を差し引いて計算します。

しかし、賃貸業は経費が少ないため、多くのMS法人が簡易課税制度を選択します。この制度では、預かった消費税にみなし仕入率(賃貸業の場合は40%)をかけて納付額を計算します。

例えば、年間賃料が1,200万円だった場合、納める消費税額は以下のようになります。

  • 預かった消費税:120万円(1,200万円 × 10%)

  • みなし控除額:48万円(預かった消費税120万円 × みなし仕入率40%)

  • 納める消費税72万円(120万円 - 48万円)

このように、簡易課税制度を適用したとしても、年間72万円もの消費税を毎年納付し続けなければなりません。これは、消費税還付のメリットを大きく損なう可能性があります。
 

【消費税の罠】還付で得した分が納税で徐々に消える仕組み

MS法人の消費税還付と納税の推移を示す棒グラフ。1年目に540万円の還付金を受け取るが、その後は毎年72万円の消費税を納税し、還付金が徐々に相殺されていく様子を図解する。

MS法人を設立し、設備投資で多額の消費税還付を受けられたとしても、その後が重要です。

MS法人は、課税売上高(賃料収入など)が1,000万円を超え、課税事業者のままである限り、消費税の納税義務が発生します。還付を受けた翌年以降、毎年、課税収入に対する消費税を納めていかなければなりません。

例えば、540万円の消費税還付を受けられたとしても、年間賃料1,200万円(税抜)で簡易課税制度を選択した場合、毎年納める消費税は72万円(120万円(預かった消費税) - 48万円(みなし控除額))です。

この72万円を毎年納付し続けると、約8年後後には576万円を納付したことになります。

つまり、せっかく還付で得たお金が、賃料収入に対する納税で徐々に消えていくという罠にはまる可能性があるのです。この点を理解せずにスキームを進めると、後々大きな負担となるリスクがあります。
 

将来の医療法人化を見据えた理事長選び

院長とMS法人の代表者が同一人物である場合と、別人物である場合を比較した図。同一人物である場合は利益相反取引のリスクがあり、別人物にすることでそのリスクを回避できることを示す。

個人開業から将来的に医療法人化を考えている場合、MS法人の理事長選びは特に重要となります。

なぜなら、個人開業医とMS法人の代表者が同一人物であると、利益相反取引と見なされる可能性があるからです。この場合、民法の規定により特別代理人を選任する必要が生じ、手続きが煩雑になります。

そのため、将来の医療法人設立を視野に入れるのであれば、MS法人を設立する段階で、院長が代表者を務めず、配偶者や親族などに代表者になってもらうケースが一般的です。
 

スキーム導入前に検討すべきこと

 設立・維持コストと専門家への相談の重要性

MS法人の設立には、登記費用や税理士への依頼費用など、数十万円から100万円程度の初期費用がかかります。また、設立後も法人住民税の均等割(約7万円)、社会保険料、税理士への顧問料など、年間数十万円の維持コストが発生します。

これらのコストを考慮すると、MS法人を設立するメリットがあるのは、ある程度の所得がある開業医に限定されます。

また、本記事で解説したように、MS法人の活用には多くの税務・法務的なリスクが伴います。専門家ではない方が全てを理解し、適切に運営することは非常に困難です。そのため、MS法人の設立を検討する際は、必ず税理士や弁護士などの専門家に相談することが不可欠です。

長期的な事業計画との整合性

MS法人の設立は、単なる節税対策ではありません。長期的な事業計画にどう組み込むかが重要です。

例えば、将来的に医療法人化を考えている場合、MS法人の資産をどうするか、役員構成をどうするかなど、事前に綿密な計画を立てておく必要があります。

また、MS法人が賃貸事業を継続して行う前提であれば、賃料設定や契約内容も長期的な視点で考える必要があります。目先の節税メリットだけでなく、5年、10年といった長期的な視点で、メリットとデメリットを総合的に判断することが大切です。
 

まとめ:MS法人活用は理解が不可欠!専門家への相談を

税理士や専門家が、開業医の相談に乗っているイラスト。MS法人活用における税務や経営の専門的なアドバイスを受ける様子を示す。

MS法人による節税スキームは、所得分散と多額の消費税還付という大きなメリットがあります。特に開業初期においては、キャッシュフローを大きく改善する可能性があります。

しかし、その一方で、消費税の納税義務や税務調査、行政指導といった多くの「落とし穴」が存在します。

MS法人は、適切に活用すれば大きな節税効果をもたらしますが、そのリスクを理解せずに安易に導入すると、かえって税金やコストの負担が増え、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。

MS法人活用は、メリットだけでなくデメリットを十分に理解した上で、慎重に判断することが重要です。

MS法人の設立・運営、そして将来の医療法人化といった高額な資金が動く判断は、一度実行すると修正が非常に難しいものです。税務や法律、さらにはご自身のライフプランに至るまで、ご自身ですべてをカバーするのは非常に困難です。

私たちのような専門家にご相談いただくことで、ご自身の状況に合わせた最適なスキームの選択、将来の税負担まで見据えた総合的なアドバイスなど、多角的なサポートを受けることができます。

MS法人活用について具体的に検討したいとお考えの先生は、ぜひ一度、私たちにご相談ください。

私たちは、開業医・医療法人専門の税理士法人として、税務顧問業務のほか、医療法人設立、一般社団法人による診療所開設、医院経営に関するご相談なども幅広く対応可能です。

この記事では、MS法人で内装・機器を購入し賃貸して節税に焦点を当てて解説しました。しかし、クリニックの節税対策には、他にも役員報酬の見直し設備投資の活用など、多岐にわたる選択肢が存在します。

これらの対策を単体で実行するのではなく、自院の経営状況に合わせて組み合わせることが、手元に残るお金を最大化するための鍵となります。

クリニックの節税対策の全体像を知りたい方は、「【開業医・医療法人専門税理士解説】クリニック経営者のための節税対策」をご覧ください。

この記事の監修者

中込 政博

税理士法人シーガル

代表社員/

税理士・公認会計士

中込 政博

あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、税理士法人シーガルを設立。税金に関する相談はもちろんのこと、公認会計士ですので、医業経営についてもぜひご相談ください!

遠藤 大樹

税理士法人シーガル

代表社員/

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遠藤 大樹

医療特化会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、税理士法人シーガルを設立。医師・歯科医師に対する税務顧問の他、相続税申告や相続対策・医業承継もお任せください!

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