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2025.7.4

クリニックで社員旅行を福利厚生費にして節税する方法|医療専門税理士

社員旅行が福利厚生費になる要件とは?

クリニックが社員旅行の費用を福利厚生費として計上し、効果的に節税するには、いくつかの厳格な要件を満たす必要があります。

これらの要件は、国税庁のウェブサイトに掲載されているタックスアンサー「No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行」で詳しく説明されています。まずは、その原文を見てみましょう。
 

【概要】
従業員レクリエーション旅行や研修旅行を行った場合、使用者が負担した費用が参加した人の給与として課税されるかどうかは、その旅行の内容を総合的に勘案して判定します。
 
【従業員レクリエーション旅行について】
従業員レクリエーション旅行の場合は、その旅行の内容(旅行の企画立案、主催者、旅行の目的・規模・行程、従業員等の参加割合・使用者及び参加従業員等の負担額及び負担割合など)を総合的に勘案して、社会通念上一般に行われているレクリエーション旅行と認められるもので、その旅行によって従業員に供与する経済的利益の額が少額の現物給与は強いて課税しないという少額不追求の趣旨を逸脱しないものであると認められるものについては、その旅行の費用を旅行に参加した人の給与としなくてもよいことになっています。
なお、その旅行によって従業員に供与する経済的利益の額が少額の現物給与は強いて課税しないという少額不追求の趣旨を逸脱しないものであると認められ、かつ、その旅行が次のいずれも満たすものであるときは、原則として、その旅行の費用を旅行に参加した人の給与としなくてもよいことになっています。

(1)旅行の期間が4泊5日以内であること。海外旅行の場合には、外国での滞在日数が4泊5日以内であること。

(2)旅行に参加した人数が全体の人数の50パーセント以上であること。工場や支店ごとに行う旅行は、それぞれの職場ごとの人数の50パーセント以上が参加することが必要です。

(注1)上記いずれの要件も満たしている旅行であっても、自己の都合で旅行に参加しなかった人に金銭を支給する場合には、参加者と不参加者の全員にその不参加者に対して支給する金銭の額に相当する額の給与の支給があったものとされます

(注2)次のようなものについては、ここにいう従業員レクリエーション旅行には該当しないため、その旅行に係る費用は給与、交際費などとして適切に処理する必要があります
1 役員だけで行う旅行
2 取引先に対する接待、供応、慰安等のための旅行
3 実質的に私的旅行と認められる旅行
4 金銭との選択が可能な旅行


【研修旅行について】

研修旅行が会社の業務を行うために直接必要な場合には、その費用は給与として課税されません。
しかし、直接必要でない場合には、研修旅行の費用が給与として課税されます。
また、研修旅行の費用に会社の業務を行うために直接必要な部分と直接必要でない部分がある場合には、直接必要でない部分の費用は、参加する人の給与として課税されます
例えば、次のような研修旅行は、原則として、会社の業務を行うために直接必要なものとはなりません
(1)同業者団体の主催する、主に観光旅行を目的とした団体旅行
(2)旅行のあっせん業者などが主催する団体旅行
(3)観光渡航の許可をもらい海外で行う研修旅行

 

国税庁タックスアンサー No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行

いかがでしたでしょうか?タックスアンサーの原文は、専門用語が多く、少し分かりづらいと感じた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、ご安心ください。ここからは、社員旅行を福利厚生費として認めてもらうための重要なポイントを、もっと分かりやすく解説していきます。
 

旅行期間が4泊5日以内であること

福社員旅行を福利厚生費として計上するには、旅行期間が4泊5日以内と定められています。海外旅行の場合もこの要件は適用されますが、重要なのは海外での滞在日数です。

たとえば、機中泊がある場合は、その日数は旅行期間にカウントされません。したがって、たとえ出発から帰国までが5日を超えていても、海外での滞在日数が4泊5日以内であれば、福利厚生費として認められる可能性は十分にあります
 

全従業員が参加対象であること(参加人数が全体の人数の50パーセント以上であること)

社員旅行が福利厚生費として認められるためには、その旅行が特定の従業員だけのものではなく、原則として全従業員が参加対象でなければなりません。
これは「公平性の原則」と呼ばれ、会社が特定の個人に給与として利益を供与しているとみなされないための重要なポイントです。

国税庁のタックスアンサーでは、参加人数が全体の50%以上であることを明確な目安としています。
例えば、クリニックに10名のスタッフがいる場合、最低でも5名が社員旅行に参加する必要があります。

もし、病気や育児休暇中など、やむを得ない事情で一部の従業員が参加できない場合でも、旅行への参加機会が公平に提供されていれば問題ありません
ただし、特定の部署の従業員のみが対象となる旅行は、福利厚生費としては認められない可能性が高いので注意が必要です。
 

旅行費用が1人あたり10万円以下であること

社員旅行の費用を福利厚生費として計上するためには、事業主やクリニックが負担する1人あたりの旅行費用が「少額」であることが求められます。
国税庁のタックスアンサーには、「少額」の明確な定義や具体的な金額が本文中に明記されているわけではありません。

しかし、国税庁タックスアンサー「No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行」に掲載されている事例では、会社が1人あたり10万円を負担したケースが非課税とされています。
この事例から、実務上では「1人あたり概ね10万円」が「少額」の目安として広く認識されています。

この10万円には、交通費、宿泊費、食事代、観光費用など、社員旅行にかかる全ての費用が含まれます
従業員へ過度な経済的利益を与えないための基準であり、この金額を超える部分は、原則として従業員への「給与」とみなされ、所得税の課税対象となってしまいます。

また、「平均して10万円以下なら大丈夫」というわけではなく、参加する従業員一人ひとりの費用がそれぞれ10万円以下である必要があるため注意が必要です。
費用が高額になりそうな場合は、従業員に自己負担してもらうなどの対策を検討しましょう。
 

役員だけで行う旅行ではないこと

社員旅行が福利厚生費として認められるためには、役員だけで行う旅行ではないことが重要です。
役員のみの旅行は「従業員レクリエーション旅行」には該当しません。

これは、福利厚生が従業員全体の士気向上や慰安を目的とするものであるため、特定の役員だけが享受する利益は、実質的に「役員報酬」とみなされ、課税対象となる可能性が高いからです。役員も従業員として旅行に参加することは可能ですが、あくまで全従業員を対象とした旅行の一環である必要があります。
 

実質的に私的旅行と認められないこと

社員旅行の費用を福利厚生費とするには、その旅行が「実質的に私的旅行」と判断されないことが不可欠です。
私的旅行と認められる場合は福利厚生費に該当しません。

具体的には、以下のようなケースが私的旅行とみなされるリスクがあります。

  • 従業員の家族の費用を事業主やクリニックが負担している場合

  • 旅行の行程のほとんどが観光やレジャーに費やされており、業務上の目的や従業員間の交流・慰安という目的が希薄な場合

  • 特定の個人や家族の都合に合わせた日程や行き先になっている場合

福利厚生費として認められるためには、あくまで従業員全体の慰安や親睦、業務への貢献を目的とした旅行であることが重要です。
 

金銭との選択が可能な旅行ではないこと

社員旅行が福利厚生費として認められるための重要な要件の一つに、「金銭との選択が可能な旅行ではないこと」が挙げられます。

具体的には、社員旅行に参加しない従業員に対して、旅行費用に相当する金銭や商品券などを支給するケースがこれに該当します。
このような場合、旅行に参加した従業員も、参加しなかった従業員も、全員がその金銭相当額の給与を受け取ったものとみなされ、課税対象となってしまいます。

福利厚生は、現金ではなく「現物支給」として提供されることで非課税となる性質を持つため、金銭と選択できる形にしてしまうと、その性質が失われると判断されるのです。
社員旅行を計画する際は、参加の有無にかかわらず、金銭での代替支給は行わないように注意しましょう。
 

医療法人が社員旅行で節税するメリット

医療法人が社員旅行を実施し、その費用を福利厚生費として計上することには、単なる従業員の慰安にとどまらない大きなメリットがあります。
賢く活用することで、税金面だけでなく、クリニックの経営にも好影響をもたらすでしょう。
 

法人税の負担を軽減できる

社員旅行の費用を福利厚生費として計上できれば、その金額は経費として扱われます。
経費が増えれば増えるほど、法人税の計算対象となる利益が減り、結果として法人税の負担を軽減できます。

これは、同じ金額を従業員に給与として支給する場合と比較しても、大きな節税効果があります。
例えば、従業員に10万円を給与として支給した場合、その10万円には従業員の所得税や社会保険料がかかります。
しかし、福利厚生費として社員旅行に10万円を支出すれば、原則としてこれらの従業員負担は発生しません

事業主(医療法人や個人開業医)としても社会保険料の事業者負担分が増えることもないので、より効率的な経費計上と言えます。
 

従業員のモチベーション向上と定着率アップ

日頃の業務で忙しい従業員にとって、社員旅行はリフレッシュできる貴重な機会です。
仕事から離れた環境で同僚と交流することで、チームワークの強化や相互理解を深めることにもつながります。

旅行を通して「会社が自分たちを大切にしてくれている」と感じられれば、従業員のモチベーションは大きく向上するでしょう。
また、働きがいのある職場だと認識されることで、優秀な人材の定着にもつながり、採用コストの削減にも貢献します。
 

企業イメージの向上

社員旅行の実施は、クリニックの企業イメージ向上にもつながります。
福利厚生が充実しているクリニックは、「従業員を大切にする良い職場」というポジティブな印象を社会に与えます。

これは、求職者に対して魅力をアピールする上で非常に有効です。また、患者さんや地域社会からの信頼獲得にもつながり、クリニックのブランド価値を高める効果も期待できます。
結果として、優秀な人材の確保や、より多くの患者さんの来院にもつながる好循環を生み出すでしょう。
 

まとめ

これまで見てきたように、社員旅行の費用を福利厚生費として計上するには、旅行期間や参加人数、費用の上限、私的利用の有無など、複数の厳格な要件を満たす必要があります。しかし、これらの条件をクリアできれば、法人税の負担を軽減できるだけでなく、従業員のモチベーション向上や定着率アップ、クリニックの企業イメージ向上といった、計り知れないメリットを享受できます。

社員旅行は、単なる従業員へのご褒美ではなく、クリニック経営における有効な投資となり得ます。ただし、税務上の判断は複雑であり、誤った処理をしてしまうと、かえって税金が課せられてしまうリスクもあります。

私たち税理士法人シーガルは開業医・医療法人専門の税理士法人ですので、税務顧問業務のほか、医療法人設立、一般社団法人による診療所開設、医院経営に関するご相談なども対応可能です。
 

この記事の監修者

中込 政博

税理士法人シーガル

代表社員/

税理士・公認会計士

中込 政博

あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、税理士法人シーガルを設立。税金に関する相談はもちろんのこと、公認会計士ですので、医業経営についてもぜひご相談ください!

遠藤 大樹

税理士法人シーガル

代表社員/

税理士・行政書士

遠藤 大樹

医療特化会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、税理士法人シーガルを設立。医師・歯科医師に対する税務顧問の他、相続税申告や相続対策・医業承継もお任せください!

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