2025.11.2
【完全版】医療法人解散・清算手続きの流れと期間を専門税理士が図解
「医療法人をたたみたいが、何から始めればよいのか分からない」
「診療所の廃止と、法人の解散・清算の違いが整理できていない」
「所轄庁、法務局、税務署と関係先が多く、全体像が見えない」
医療法人の解散・清算を考え始めた理事長先生から、このようなご相談を受けることがあります。
結論からいうと、医療法人の解散・清算は、診療所を閉めれば自然に終わる手続ではありません。
保健所への診療所廃止届、厚生局への保険医療機関廃止届、都道府県への解散認可申請または解散届、法務局での解散登記・清算人就任登記、官報公告、財産と債務の整理、複数回の税務申告、清算結了登記、都道府県への清算結了届まで進んで、初めて法人格の消滅に近づきます。
医療法でも、解散した医療法人は、清算の目的の範囲内において、清算結了まではなお存続するとされています。つまり、解散しただけでは法人は消えません。
また、医療法人の解散・清算は、短期間で終わる手続でもありません。社員総会決議による認可解散では、所轄庁への事前相談、申請、医療審議会、認可書の交付までに時間がかかることがあります。たとえば埼玉県の手引きでは、医療審議会の開催時期により、認可まで半年程度待つ場合があると案内されています。
さらに、医療法人の解散では、単に手続きを進めるだけでなく、持分あり医療法人か、持分なし医療法人か、基金拠出型か、役員借入金があるか、役員退職金をどう支給するか、残余財産をどう整理するかまで確認する必要があります。
特に、現在の顧問税理士がいる場合でも、医療法人の解散・清算だけは別の専門家の視点で確認した方がよいケースがあります。
ただし、これは今の税理士との契約をすぐに切り替えるべきという意味ではありません。
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現在の税理士との契約継続を選ぶこともでき、移行期間終了後に自動で正式契約へ切り替わることもありません。
「医療法人の解散・清算の流れを確認したい」
「解散認可と届出解散の違いを整理したい」
「基金返還、役員借入金、役員退職金まで含めて試算したい」
「今の税理士とは別の視点でも、清算時の税務リスクを確認したい」
このような場合は、現在の税理士と比較しながら、60日間無料で相談することができます。
税理士法人シーガルは、開業医・医療法人専門の税理士法人として、神奈川県茅ヶ崎市から全国対応でご相談を受けています。医療法人の解散・清算についても、青森、岡山、沖縄など、遠方の医療法人からご相談をいただいています。
この記事では、医療法人の解散・清算について、手続きの流れ、期間の目安、税務申告、基金返還、役員借入金、役員退職金、残余財産の扱い、遠方対応の事例まで、専門税理士の視点で整理します。

- 閉院を決めても、出口は必ずしも解散・清算だけではありません
- 医療法人の「閉院」「解散」「清算」は別です
- まず確認したいのは、認可解散か届出解散かです
- 医療法人の解散・清算の全体の流れ
- ステップ1 解散認可申請または解散届
- ステップ2 解散登記・清算人就任登記
- ステップ3 債権者保護手続
- ステップ4 財産整理、基金返還、役員借入金、役員退職金の確認
- 持分なし医療法人では、残余財産の扱いを最初に確認する
- 基金拠出型医療法人では、役員退職金の前に基金返還を確認する
- 役員借入金は、放棄する前に必ず試算する
- 解散後も役員退職金を支給できる場合がある
- 債務超過や支払不能の場合は、破産手続に分岐することがある
- ステップ5 申告は通常2回以上あります
- 1. 解散確定申告
- 2. 清算中の各事業年度の申告
- 3. 残余財産確定事業年度の最後の申告
- ステップ6 清算結了登記、所轄庁への報告、税務署等への最後の届出
- 期間はどれくらい見ておくべきか
- シーガルで対応した遠方の医療法人解散・清算の相談例
- 青森県の持分なし医療法人|役員借入金と退職金の順番が問題になったケース
- 岡山県の基金拠出型医療法人|基金返還を先に整理したケース
- 沖縄県の不動産保有医療法人|不動産売却益と法人税ゼロが問題になったケース
- 遠方でも、解散・清算の相談は進められます
- 清算が終わった後に申告漏れが見つかったらどうなるのか
- よくある誤解
- 閉院すれば、法人も自然に終わる
- 解散認可が下りれば、あとは簡単
- 申告は一回で終わる
- 株式会社と同じように、解散後は1年ごとに見ればよい
- 持分なし医療法人でも、残余財産を理事長に戻せる
- 基金返還と役員退職金を同じものとして考えてしまう
- よくある質問
- 医療法人の解散・清算はどのくらいかかりますか?
- 解散認可と解散届は何が違いますか?
- 医療法人の解散後、申告は何回必要ですか?
- 持分なし医療法人の残余財産はどうなりますか?
- 顧問税理士がいても、解散時だけ相談できますか?
- まとめ
閉院を決めても、出口は必ずしも解散・清算だけではありません

長年の経営の末、医院の閉院を決めたとしても、出口は必ずしも解散・清算だけとは限りません。
とくに持分あり医療法人では、出資持分や法人格の扱いが論点になることがあります。後継者や譲受先が見つかる場合には、解散・清算だけでなく、承継や譲渡を比較した方がよい場面もあります。
一方で、後継者がいない、診療を完全に終了したい、法人を残しておく必要がない、債務や財産を整理して終わらせたいという場合には、計画的な解散・清算が必要になります。
ここで大切なのは、閉院を決めた時点で、いきなり解散届や解散認可申請に進まないことです。
解散・清算に入る前に、少なくとも次の点を確認しておく必要があります。
・持分あり医療法人か、持分なし医療法人か
・基金拠出型医療法人か
・役員借入金が残っているか
・不動産、保険、医療機器など含み益のある資産があるか
・役員退職金を支給できる状態か
・残余財産が出る可能性があるか
・定款や寄附行為で残余財産の帰属先がどう定められているか
この記事では、主に解散・清算で進める場合の流れに絞って整理します。
医療法人の「閉院」「解散」「清算」は別です

まず押さえたいのは、「閉院」と「解散」と「清算」は別の手続だという点です。
閉院は、診療所や病院としての診療をやめることです。
解散は、医療法人として事業を終わらせるための法的な入口です。
清算は、解散後に残る財産と債務を整理し、最後に法人格を消すまでの手続です。
そのため、実際には次のような手続が別々に動きます。
・保健所への診療所廃止届
・厚生局への保険医療機関廃止届
・都道府県への解散認可申請または解散届
・法務局での解散登記、清算人就任登記
・官報公告
・税務署、都道府県税事務所、市区町村への届出
・法人税、消費税、地方税などの申告
・清算結了登記
・所轄庁への清算結了届
つまり、診療をやめたことと、医療法人が消えたことは同じではありません。
ここを混同すると、「閉院したのだから、法人も終わったはず」と考えてしまい、登記、申告、清算結了届などが漏れる原因になります。
まず確認したいのは、認可解散か届出解散かです

医療法人の解散は、どの理由で解散するかによって入口が変わります。
医療法では、社団医療法人の解散事由として、次のものが定められています。
定款をもって定めた解散事由の発生
目的たる業務の成功の不能
社員総会の決議
他の医療法人との合併
社員の欠亡
破産手続開始の決定
設立認可の取消し
このうち、目的たる業務の成功の不能と社員総会の決議による解散は、都道府県知事の認可を受けなければ効力を生じません。一方、定款で定めた解散事由の発生や社員の欠亡による解散は、届出によって進む建て付けです。
多くの診療所で実際に問題になるのは、社員総会決議による認可解散と、定款上の解散事由や社員欠亡による届出解散のどちらで進めるかです。
もっとも、どちらに該当するかは、定款の文言、社員構成、現在の法人の状態によって変わります。
そのため、解散方針を決める前に、まず所轄庁へ事前相談することが重要です。
また、税務面では、認可解散か届出解散かだけでなく、持分あり・持分なし・基金拠出型のどれに該当するかも同時に確認する必要があります。
医療法人の解散・清算の全体の流れ

医療法人の解散・清算は、概ね次の順番で進みます。
解散方針を決め、所轄庁に事前相談する
解散認可申請または解散届を提出する
解散登記・清算人就任登記を行う
債権者保護手続を行う
財産の換価、債務弁済、残余財産の整理を進める
税務申告を進める
清算結了登記を行う
所轄庁、税務署、都道府県税事務所、市区町村への最後の届出を行う
知事認可だけで終わるわけでも、登記だけで終わるわけでもありません。
行政への申請・届出、法務局での登記、財産整理、税務申告が順番に重なるのが、医療法人の解散・清算です。
ステップ1 解散認可申請または解散届
最初の山場は、所轄庁への手続です。
社員総会の決議など認可が必要な解散であれば、一般的に次のような書類をそろえます。
・解散認可申請書
・解散の理由書
・社員総会議事録
・定款
・財産目録
・貸借対照表
・残余財産処分案
・清算人就任承諾書
・診療所廃止届の写し
・履歴事項全部証明書
埼玉県の手引きでも、解散認可申請の必要書類として、解散認可申請書、理由書、社員総会議事録、財産目録、貸借対照表、残余財産処分案などが挙げられています。
一方、届出解散であっても、届出だけで簡単に終わるわけではありません。東京都の案内でも、解散届、議事録、財産目録、貸借対照表、残余財産の処分方法を記載した書類などが挙げられています。
つまり、「認可なら重い、届出なら軽い」と単純化しすぎない方がよいです。
届出解散であっても、財産、債務、残余財産の処理を整理しておくことが前提になります。
ステップ2 解散登記・清算人就任登記
解散の効力が生じたら、次は法務局での登記です。
具体的には、次の登記を行います。
・解散登記
・清算人就任登記
医療法では、合併と破産手続開始の決定による解散を除き、理事が清算人になるのが原則です。ただし、定款や寄附行為に別段の定めがある場合や、社員総会で理事以外の者を選任した場合は、その定めが優先されます。
解散後は、理事長ではなく、清算人が法人を代表する立場になります。
そのため、解散後の財産整理、債務弁済、官報公告、税務申告、清算結了まで、誰が清算人として責任を負うのかを明確にしておく必要があります。
登記が終わった後は、都道府県へ解散登記完了届や清算人就任登記届を提出する流れになります。
ステップ3 債権者保護手続
清算人が就任した後は、債権者保護手続が必要です。
医療法では、清算人は、就職の日から2か月以内に、少なくとも3回の公告をもって、債権者に対し、一定期間内に債権の申出をするよう催告しなければならないとされています。
この期間は、2か月を下ることができません。
また、判明している債権者には、各別に催告する必要があります。公告は官報に掲載して行います。
東京都の案内でも、解散認可後または解散届提出後の手続として、官報に掲載して公告することが明示されています。
ここで重要なのは、官報公告の期間中に、勝手にすべての財産を動かして終わらせることはできないという点です。
債権者保護手続、債務弁済、財産整理、税務申告は、順番を間違えないように進める必要があります。
ステップ4 財産整理、基金返還、役員借入金、役員退職金の確認

債権者保護手続が始まったら、清算人が中心となって財産整理を進めます。
医療法では、清算人の職務として、次の3つが定められています。
・現務の結了
・債権の取立て及び債務の弁済
・残余財産の引渡し
清算人は、これらの職務を行うために必要な一切の行為をすることができます。
ここでいう現務の結了には、次のようなものが含まれます。
・医療機器や備品の売却・処分
・預金や保険の解約
・借入金や未払費用の支払い
・医業未収金の回収
・賃貸借契約やリース契約の終了
・職員給与、退職金、社会保険関係の整理
・税金、社会保険料、リース債務などの確認
ただし、医療法人の解散・清算で本当に重要なのは、ここからです。
財産整理では、単に資産を売って債務を払うだけでは足りません。
特に確認すべきなのは、次の4つです。
1. 基金返還
2. 役員借入金の返済または放棄
3. 役員退職金
4. 残余財産の帰属先
持分なし医療法人では、残余財産の扱いを最初に確認する

持分なし医療法人の場合、解散時に残った財産を理事長個人へ自由に分配することはできません。
医療法第56条では、解散した医療法人の残余財産は、合併と破産手続開始の決定による解散の場合を除き、定款または寄附行為の定めるところにより、その帰属すべき者に帰属するとされています。また、その規定により処分されない財産は、国庫に帰属すると定められています。
つまり、持分なし医療法人では、残余財産の行方はまず定款または寄附行為で決まります。
ただし、ここで誤解してはいけないのは、国庫帰属だけが唯一の選択肢ではないという点です。定款や寄附行為の定め方によっては、他の持分なし医療法人、医師会、国、地方公共団体など、非営利性の高い団体に帰属させることがあります。
一方で、理事長、社員、親族などの特定個人へ残余財産を分配することはできません。
そのため、持分なし医療法人では、残余財産をどう帰属させるかだけでなく、解散前から、基金返還、役員借入金返済、役員退職金、法人税、残余財産ゼロを一体で試算する必要があります。
関連記事:専門税理士解説|持分なし医療法人解散で財産が国に取られない方法
基金拠出型医療法人では、役員退職金の前に基金返還を確認する
基金拠出型医療法人では、役員退職金の前に、まず基金返還を確認します。
基金は、医療法人が拠出者に返還義務を負うものです。
したがって、基金返還は、利益分配ではなく、拠出した基金の返還として整理されます。
拠出額の範囲内で適正に返還される限り、基金返還は、役員退職金とは別に、医療法人から拠出者へ資金を戻せる可能性があります。
ここを見落としたまま役員退職金だけで設計すると、理事長個人の手取り、法人税、残余財産ゼロの計算を誤る可能性があります。
役員借入金は、放棄する前に必ず試算する
医療法人に役員借入金が計上されている場合は、より慎重な確認が必要です。
役員借入金は、理事長や役員が医療法人へ貸しているお金です。
そのため、解散・清算の中で法人から役員へ返済する場合は、残余財産の分配ではなく、法人の債務返済として整理します。
一方で、役員借入金を放棄すると、医療法人側では債務免除益が生じる可能性があります。
「どうせ法人を閉じるのだから、役員借入金は放棄すればよい」と考えてしまうと、思わぬ課税関係が出ることがあります。
ただし、解散法人で残余財産がないと見込まれる場合には、一定の範囲で期限切れ欠損金額を損金算入できる制度があります。国税庁の質疑応答事例でも、残余財産が零となる場合に、期限切れ欠損金額を基礎として計算した金額を損金算入できる旨が示されています。
したがって、役員借入金の返済または放棄は、退職金、欠損金、清算所得、法人税を含めて試算してから判断する必要があります。
解散後も役員退職金を支給できる場合がある
医療法人の解散では、最後に残る財産をどう整理するかが大きな論点になります。
そのときに重要になるのが、役員退職金です。
解散後も引き続き清算人として清算事務に従事する旧役員に対して、その解散前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与は、法人税法上の退職給与として取り扱われることが、国税庁の質疑応答事例で示されています。
つまり、医療法人が解散したからといって、役員退職金を支給できないわけではありません。
ただし、役員退職金は、次の点を整理しておく必要があります。
・退職金規程があるか
・社員総会決議があるか
・算定根拠があるか
・在任期間、報酬月額、功績倍率を説明できるか
・実際に退職した事実があるか
・退職後も同じ立場で経営に関与していないか
・医療法上、配当類似行為や不当な利益供与に見えないか
役員退職金は、金額だけで判断するものではありません。
税務上の適正額、実際の支給額、法人税、個人側の退職所得、医療法上の説明資料をセットで整理することが重要です。
債務超過や支払不能の場合は、破産手続に分岐することがある
通常清算では、財産を整理し、債務を払い、残余財産があれば引き渡す、という流れで進みます。
しかし、清算中に医療法人の財産で債務を完済できないことが明らかになったときは、通常清算のまま押し切ることはできません。
医療法では、清算中に医療法人の財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになったときは、清算人は直ちに破産手続開始の申立てをし、その旨を公告しなければならないとされています。
つまり、解散後の手続は「解散・清算」一本ではなく、途中で破産手続に分岐する可能性もあります。
そのため、解散前の段階で、資産、負債、役員借入金、未払金、リース債務、税金、社会保険料を確認しておくことが重要です。
ステップ5 申告は通常2回以上あります

医療法人は、解散したら申告が1回で終わるわけではありません。
通常は2回以上必要です。
整理すると、次の3つの申告を意識すると分かりやすいです。
1. 解散確定申告
2. 清算中の各事業年度の申告
3. 残余財産確定事業年度の最後の申告
1. 解散確定申告
まず、会計年度の開始日から解散日までで1回目の申告を行います。
たとえば、3月決算の医療法人が10月15日に解散した場合は、4月1日から10月15日までが最初の申告期間です。
これが、いわゆる解散確定申告です。
確定申告書は、原則として、各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に提出します。
2. 清算中の各事業年度の申告
次に、解散日の翌日から清算中の申告に入ります。
ここで大事なのは、株式会社等と医療法人では、解散後の期間の見方を同じに考えないことです。
株式会社や一般社団法人等の清算中の事業年度については、会社法等に規定する清算事務年度との関係で整理されます。一方、医療法人では、株式会社と同じ感覚で単純に「解散後は1年ごと」と考えない方が安全です。
医療法人では、定款上の会計年度、医療法上の会計年度、法人税法上のみなし事業年度を確認しながら、申告期間を整理する必要があります。
たとえば、3月決算の医療法人が10月15日に解散した場合は、
1回目:4月1日から10月15日まで
2回目:10月16日から翌年3月31日まで
3回目以降:清算が続く場合は、その後の事業年度ごと
という形で整理することがあります。
つまり、解散日で一度区切るが、その後は法人の会計年度を確認しながら申告を続けるという理解が重要です。
3. 残余財産確定事業年度の最後の申告
最後に、残余財産が確定した事業年度の申告があります。
清算中の法人において残余財産が確定した場合、消費税については、その確定の日の属する課税期間終了の日の翌日から1か月以内に確定申告書を提出する必要があるとされています。
法人税についても、残余財産が確定する日の属する事業年度の確定申告書の提出期限は、原則として、その確定した日の翌日から1か月以内と整理されています。
たとえば、3月決算の医療法人が10月15日に解散し、翌年8月20日に残余財産が確定した場合は、
1回目:4月1日〜10月15日
2回目:10月16日〜翌年3月31日
3回目:4月1日〜8月20日
というイメージです。
3回目が、残余財産確定事業年度の最後の申告です。
もっとも、清算の進み方によっては、清算中の申告と残余財産確定事業年度の申告が同じ事業年度に収まることもあります。
たとえば、3月決算の医療法人が10月15日に解散し、その翌年2月20日に残余財産が確定した場合は、
1回目:4月1日〜10月15日
2回目:10月16日〜翌年2月20日
で終わることがあります。
大事なのは、「解散したら一度だけ申告すれば終わり」ではないという点です。
ステップ6 清算結了登記、所轄庁への報告、税務署等への最後の届出
【図解挿入:清算結了後に必要な最後の届出を示すチェックリスト図】
財産整理と申告が終わったら、最後に清算結了登記を行います。
その後、都道府県へ清算結了届を提出します。
医療法でも、清算が結了したときは、清算人はその旨を都道府県知事に届け出なければならないと定められています。
さらに、ここで終わりではありません。
税務署、都道府県税事務所、市区町村にも、解散や清算結了に関する届出が必要です。
つまり、最後は次の手続まで進めて、ようやく完了です。
・清算結了登記
・所轄庁への清算結了届
・税務署への異動届
・都道府県税事務所への異動届
・市区町村への異動届
ここまで終わって、初めて「医療法人の解散・清算が完了した」と言えます。
感覚としては、閉院の時点で終わったように見えても、法的には清算結了まで法人は残っています。
期間はどれくらい見ておくべきか

医療法人の解散・清算は、数か月で終わる前提では組まない方が安全です。
特に社員総会決議による認可解散では、所轄庁への事前相談、本申請、医療審議会、認可書の交付までに時間がかかります。
埼玉県の手引きでは、医療審議会の意見を聴く必要があるため、開催時期により認可まで半年程度待つ場合があるとされています。
そこに、解散登記、清算人就任登記、官報公告、財産整理、申告、清算結了登記、清算結了届が続きます。
したがって、社員総会決議による認可解散では、半年を大きく超えることは普通にあり、1年近く、または1年以上かかることも想定しておくべきです。
一方で、届出解散で、資産・負債関係が単純で、役員借入金や不動産売却、基金返還、退職金などの論点が少ない場合は、もっと短く進むこともあります。
ただし、期間は「平均何か月」と機械的に見るより、次の要素で決まると考えた方が現実的です。
・認可解散か届出解散か
・所轄庁の医療審議会の開催時期
・官報公告の期間
・不動産や医療機器の売却にかかる時間
・役員借入金や基金返還の整理にかかる時間
・役員退職金の決議、支給、源泉所得税、個人側申告の整理
・法人税、消費税、地方税の申告スケジュール
・残余財産の帰属先の確認
特に、持分なし医療法人で残余財産が出そうな場合や、不動産売却益が出る場合は、解散を決める前から試算しておく必要があります。
シーガルで対応した遠方の医療法人解散・清算の相談例

税理士法人シーガルでは、神奈川県内だけでなく、全国の医療法人から解散・清算のご相談をいただいています。
ここでは、個別情報を伏せたうえで、実際にご相談で問題になりやすい論点を紹介します。
青森県の持分なし医療法人|役員借入金と退職金の順番が問題になったケース
青森県の持分なし医療法人では、法人に理事長からの役員借入金が残っていました。
この場合、まず確認すべきなのは、役員借入金が残余財産の分配ではなく、法人の債務返済であるという点です。
役員借入金を返済するのか、放棄するのか、役員退職金を支給するのか、残余財産をどう整理するのかによって、法人税や最終的な手取りは変わります。
このケースでは、役員借入金返済、役員退職金、残余財産の帰属先への引渡しの順番を整理することが重要でした。
岡山県の基金拠出型医療法人|基金返還を先に整理したケース
岡山県の基金拠出型医療法人では、当初、役員退職金を中心に清算設計が進められていました。
しかし、基金拠出型医療法人では、役員退職金の前に基金返還を検討する必要があります。
基金返還は、退職金とは別の論点です。
基金は、医療法人が拠出者に返還義務を負うものであり、利益分配ではなく、拠出した基金の返還として整理されます。
このケースでは、基金返還の可否、返還可能額、代替基金の処理、役員退職金、法人税、残余財産ゼロを一体で試算することが重要でした。
沖縄県の不動産保有医療法人|不動産売却益と法人税ゼロが問題になったケース
沖縄県の医療法人では、法人が不動産を保有しており、清算の過程で不動産売却益が出る可能性がありました。
不動産を売却すると、帳簿価額との差額によって清算益が発生します。
そのため、単に不動産を売って債務を払えば終わるわけではありません。
このケースでは、不動産売却益、役員退職金の適正額、功績倍率を超える退職金支給、法人税ゼロ、個人側の退職所得まで試算する必要がありました。
特に、含み益のある不動産を持っている医療法人では、解散直前ではなく、売却前から税務設計をしておくことが重要です。
遠方でも、解散・清算の相談は進められます
医療法人の解散・清算は、地域の税理士に任せれば必ず安心というものではありません。
もちろん、地元の先生が医療法人の解散・清算に詳しければ問題ありません。
しかし実際には、医療法人の解散、基金返還、役員退職金、持分なし医療法人の残余財産、清算申告まで一体で対応した経験が少ないケースもあります。
税理士法人シーガルでは、オンライン面談、クラウド資料共有、電話、メールを使って、遠方の医療法人のご相談にも対応しています。
大切なのは、地域で選ぶことではなく、医療法人解散の専門性で選ぶことです。
清算が終わった後に申告漏れが見つかったらどうなるのか
ここも、解散前に考えておいた方がよい論点です。
清算結了まで終わっても、後から申告漏れや残余財産の分配・引渡しに関する問題が見つかれば、「もう法人は終わったから関係ない」では済まないことがあります。
つまり、解散法人に納付すべき税額が残っているのに残余財産を分配・引渡ししてしまった場合、清算人や財産を受け取った者に負担が及ぶ可能性があります。
だからこそ、解散・清算は「早く閉じること」だけを目標にしてはいけません。
立つ鳥跡を濁さず、後から問題が出ないように整えて終えることが大切です。
役員退職金、基金返還、役員借入金、欠損金、残余財産、最後の届出まで含めて、最初に順番を整理しておく意味はここにあります。
よくある誤解
閉院すれば、法人も自然に終わる
終わりません。
閉院は医療機関としての廃止であり、医療法人の解散・清算は別手続です。
診療をやめても、清算結了まで法人は残ります。
解散認可が下りれば、あとは簡単
簡単ではありません。
解散認可は、全体の前半です。
その後に、解散登記、清算人就任登記、官報公告、財産整理、税務申告、清算結了登記、清算結了届、税務署等への最後の届出が続きます。
申告は一回で終わる
終わりません。
通常は2回以上あります。
解散日まで、清算中の期間、残余財産確定事業年度の最後、という順番で見ると分かりやすいです。
株式会社と同じように、解散後は1年ごとに見ればよい
医療法人では、その理解は危険です。
株式会社等の清算中の事業年度に関する考え方を、そのまま医療法人に当てはめるのではなく、医療法人の定款、会計年度、法人税法上のみなし事業年度を確認する必要があります。
持分なし医療法人でも、残余財産を理事長に戻せる
戻せません。
持分なし医療法人では、残余財産を理事長、社員、親族などの特定個人に分配することはできません。
そのため、持分なし医療法人では、解散前から、基金返還、役員借入金返済、役員退職金、法人税、残余財産ゼロを一体で設計する必要があります。
基金返還と役員退職金を同じものとして考えてしまう
これも危険です。
基金返還は、退職金とは別の論点です。
基金拠出型医療法人では、まず基金返還を確認し、そのうえで役員退職金や残余財産の整理を検討する必要があります。
よくある質問

医療法人の解散・清算はどのくらいかかりますか?
認可解散の場合は、所轄庁の医療審議会の開催時期によって、認可まで半年程度待つ場合があります。
そこから登記、官報公告、財産整理、申告、清算結了届まで進むため、1年近く、または1年以上かかることも想定しておくべきです。
届出解散で資産・負債が単純な場合は、より短く進むこともあります。
解散認可と解散届は何が違いますか?
社員総会決議や目的たる業務の成功不能による解散は、都道府県知事の認可が必要です。
一方、定款で定めた解散事由の発生や社員欠亡による解散は、届出で進む建て付けです。
ただし、どちらに該当するかは、定款や法人の状況によって変わるため、先に所轄庁へ確認することが大切です。
医療法人の解散後、申告は何回必要ですか?
通常は2回以上必要です。
解散日までの申告、清算中の申告、残余財産確定事業年度の最後の申告を意識して整理します。
清算が長引けば、3回以上になることもあります。
持分なし医療法人の残余財産はどうなりますか?
持分なし医療法人の残余財産は、定款または寄附行為の定めに従って帰属します。
ただし、理事長、社員、親族などの特定個人に分配することはできません。
そのため、理事長個人の手取りや国庫帰属回避を考える場合は、解散前に基金返還、役員借入金返済、役員退職金、法人税、残余財産ゼロを試算する必要があります。
顧問税理士がいても、解散時だけ相談できますか?
はい、可能です。
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まとめ
医療法人の解散・清算は、
解散事由の確認 → 認可申請または届出 → 解散登記・清算人就任登記 → 官報公告 → 財産整理 → 税務申告 → 清算結了登記 → 所轄庁と税務署等への最後の届出
という流れで進みます。
行政への申請・届出、法務局での登記、財産整理、税務署等への申告と届出が重なる、長い手続です。
特に押さえておきたいポイントは、次の7つです。
医療法人の解散は、認可解散と届出解散に分かれること
閉院、解散、清算は別の手続であること
清算中も法人格は残ること
官報公告と財産整理が必要なこと
申告は通常2回以上あること
持分なし医療法人では、残余財産を個人へ分配できないこと
基金返還、役員借入金、役員退職金、法人税、残余財産ゼロを解散前に試算すべきこと
長年の経営の末に閉院を決めても、出口は必ずしも解散・清算だけとは限りません。
一方で、解散・清算で進める場合でも、役員退職金をどう考えるか、基金返還を先に行うべきか、役員借入金をどう扱うか、申告をどう区切るか、残余財産をどう整理するかで結果は大きく変わります。
税理士法人シーガルでは、医療法人の解散・清算について、全国からご相談をいただいています。
「認可解散か届出解散かを整理したい」
「申告が何回必要か、先に全体像を知りたい」
「基金返還や役員借入金まで含めて、最後まで無理のない流れを組みたい」
「持分なし医療法人の残余財産がどうなるか確認したい」
「今の税理士とは別の視点でも、解散・清算の進め方を確認したい」
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医療法人の解散・清算は、手続きを始める前の設計で結果が大きく変わります。
解散を正式に決める前に、基金返還、役員借入金、役員退職金、法人税、残余財産の流れを一度整理しておきましょう。
この記事の監修者

税理士法人シーガル
代表社員/
税理士・公認会計士
中込 政博
あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、税理士法人シーガルを設立。税金に関する相談はもちろんのこと、公認会計士ですので、医業経営についてもぜひご相談ください!

税理士法人シーガル
代表社員/
税理士・行政書士
遠藤 大樹
医療特化会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、税理士法人シーガルを設立。医師・歯科医師に対する税務顧問の他、相続税申告や相続対策・医業承継もお任せください!
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