「医療法人のお金を普通預金のまま置いていてよいのか悩んでいる」
「顧問税理士から、医療法人の資産運用はダメだと言われた」
「インフレで現預金の価値が目減りしている気がする」
「医療法人で日本国債や米国債を買ってよいのか知りたい」
「医療法人でオルカンやS&P500を買うことはできるのか」
医療法人の理事長先生から、このような相談を受けることがあります。
結論からいうと、医療法人の資産運用は一律に禁止されているわけではありません。
ただし、一般の株式会社のように、余った資金で自由に投資をしてよいわけでもありません。
厚生労働省の医療法人運営管理指導要綱では、医療事業の経営上必要な運用財産は適正に管理され、処分がみだりに行われていないことが求められています。
そのうえで、現金については、銀行や信託会社への預け入れ、信託、又は国公債若しくは確実な有価証券への換え保管が示されています。
一方で、売買利益の獲得を目的とした株式保有は適当でないとも示されています。
つまり、医療法人の資産運用は、完全にダメでも、何でも自由でもないという整理が実務に近いです。

特に問題になるのが、「国公債」や「確実な有価証券」をどう考えるかです。
医療法人運営管理指導要綱やモデル定款では、国公債や確実な有価証券という言葉が使われています。
しかし、少なくとも本記事で確認する厚生労働省資料では、「確実な有価証券」に該当する商品が具体的に列挙されているわけではありません。
そのため、医療法人側で、商品内容、資金の性格、運用目的、リスク管理、理事会等の手続を整理したうえで判断する必要があります。
シーガルでは、医療法人の資産運用について、次のように考えています。
まずは、普通預金、定期預金、日本国債など、定款や所轄庁に説明しやすい選択肢から検討する。
そのうえで、国公債という文言や、確実な有価証券という考え方を踏まえると、日本国と同程度以上の信用力を持つ国や公的機関が発行する債券も検討対象になり得ると考えます。
たとえば、S&P Global Ratingsの長期ソブリン格付けでは、日本はA+、米国はAA+とされています。S&Pの格付け上、米国は日本より上位に位置づけられているため、米国債は、日本国債と同程度以上の信用力を持つ国の国債として検討対象になり得ると整理できます。
ただし、米国債はドル建てです。
そのため、米ドルベースでは元利金の支払いが予定されていても、円高になれば円換算額が減る可能性があります。
さらに、オルカンやS&P500型投資信託についても、シーガルでは一律に否定する立場ではありません。
ただし、オルカンやS&P500型投資信託は、株式市場に連動する商品です。
そのため、国公債や元本償還が予定されている債券と比べると、「確実な有価証券」として説明する難易度は高く、所轄庁等から指摘を受けるリスクも高いと考えています。
それでも、顧問先がそのリスクを理解したうえで実行するのであれば、シーガルとしては、そのリスクができる限り小さくなるように、定款、資金繰り、商品内容、投資上限、理事会等の議事録、定期モニタリング資料まで整理するというスタンスです。
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- 医療法人の資産運用は一律NGではありません
- まず押さえるべき「現金の保管ルール」
- 「国公債」と「確実な有価証券」をどう整理するか
- 「確実な有価証券」の判断で確認したいポイント
- 1. 発行体又は投資対象の信用力
- 2. 元本毀損リスクが大きすぎないこと
- 3. 換金性があること
- 4. 商品内容を説明できること
- 5. オルカン・S&P500を「確実な有価証券」として整理できるか
- 日本国債・米国債などはどう考えるか
- SBI証券で見る日本国債・米国債の利回り例
- 日本国債の例
- 米国債の例
- シーガルの基本スタンス
- オルカン・S&P500を医療法人で購入するならどう整理するか
- 1. まず「確実な有価証券」として整理できるかを検討する
- 2. 補助的に「長期余裕資金の管理」としても整理する
- 3. 国債や信用力の高い債券で目的を達成できないかを先に検討する
- 4. 売買益目的に見えないようにする
- 5. 過去の運用実績や定期確認は、どう位置づけるべきか
- 6. 運転資金や近い将来に使う資金は入れない
- 7. 投資額の上限を決める
- 8. 指摘を受けた場合の対応方針を決めておく
- 9. 理事会等で目的・金額・リスク・見直し基準を残す
- SNS上の「人件費や物価高騰のためならOK」という説明はどう考えるか
- 税理士が医療法人の資産運用を止める理由
- 理事会等で整理しておきたいこと
- 1. すぐに使う資金を分ける
- 2. 本当に運用してよい金額を決める
- 3. 運用目的を明確にする
- 4. 商品選定理由を残す
- 5. 解約や見直しの基準を決める
- シーガルは医療法人の資産運用をどう考えるか
- 1. 何も運用しない
- 2. 日本国債・米国債などの国公債又は信用力の高い債券を中心に検討する
- 3. 保険商品を活用する
- 4. 十分に準備したうえでオルカン・S&P500型投資信託を検討する
- このような医療法人はシーガルへご相談ください
- よくある質問
- 医療法人は資産運用をしてはいけないのですか
- 「確実な有価証券」とは何ですか
- 日本国債なら医療法人でも使いやすいですか
- 米国債なら医療法人でも使いやすいですか
- 米国債で利回り5%近辺なら、オルカンやS&P500よりよいですか
- オルカンやS&P500は医療法人で購入できますか
- 定期買付なら問題ありませんか
- 変額保険なら医療法人でも使いやすいですか
- 所轄庁から指摘を受けたらどうなりますか
- 顧問税理士に止められていますが、相談できますか
- 医療法人の資産運用を相談したい方へ
- まとめ
医療法人の資産運用は一律NGではありません
医療法人の資産運用は、法律上、一律に禁止されているわけではありません。
医療法人でよく言われる「非営利性」は、資産運用との関係では、まず剰余金を社員や出資者に配当してはいけないという意味で理解するのが基本です。
厚生労働省資料でも、医療法人については医療法第54条で剰余金の配当が禁止されており、医療機関等の運営により生じた利益、つまり剰余金を社員等へ分配することを禁止するものとして整理されています。
そのため、非営利性を理由に、医療法人内部での資金管理や資産保全まで一律に否定するのは、少し雑な整理です。
問題は、資産運用をしたかどうかそのものではありません。
法人のお金を外部に分配していないか。
医療法人の本来業務に必要な資金を損なっていないか。
売買利益目的や投機目的に見えないか。
医療法人の資金管理として説明できるか。
ここが重要です。

厚生労働省資料では、剰余金の具体的な使途として、設備整備に要する費用、医療従事者を含めた法人職員に対する給与改善費用、将来の施設整備に係る積立金などが例示されています。
つまり、法人内に資金を残し、将来の医療提供体制を守るために管理すること自体は、医療法人の考え方と矛盾しません。
一方で、資産運用なら何でもよいわけではありません。
医療法人に合うのは、短期売買で利益を狙う運用ではなく、インフレ対応や将来の設備更新に備えるための、資金管理型の運用です。
まず押さえるべき「現金の保管ルール」
医療法人の資産運用を考えるとき、最初に確認すべきなのは、医療法人の定款又は寄附行為です。
厚生労働省の社団医療法人の定款例では、第8条で、本社団の資産は社員総会又は理事会で定めた方法によって理事長が管理するとされています。
そのうえで、第9条では、資産のうち現金は、医業経営の実施のため、確実な銀行又は信託会社に預け入れ若しくは信託し、又は国公債若しくは確実な有価証券に換え保管するとされています。
また、医療法人運営管理指導要綱でも、医療事業の経営上必要な運用財産は適正に管理され、処分がみだりに行われていないことが求められています。
そのため、現金は銀行、信託会社に預け入れ若しくは信託し、又は国公債若しくは確実な有価証券に換え保管するものとされ、売買利益の獲得を目的とした株式保有は適当でないとされています。
ここで重要なのは、医療法人が有価証券を購入する場合、まず「国公債」又は「確実な有価証券」として説明できるかが入口になるという点です。
理事会や社員総会で決議したからといって、定款上許されない商品を自由に購入できるわけではありません。
理事会や社員総会の決議は重要です。
ただし、それはあくまで定款の範囲内で、どのように資産を管理するかを決める手続です。
したがって、モデル定款と同様の現金保管規定がある医療法人では、理事会や社員総会で決議していても、定款上の制限を当然に超えられるわけではありません。
ここを曖昧にすると、後から所轄庁に説明する際に苦しくなります。

「国公債」と「確実な有価証券」をどう整理するか
医療法人の資産運用で悩ましいのが、「国公債」や「確実な有価証券」という言葉です。
医療法人運営管理指導要綱では、現金の保管方法として、銀行や信託会社への預け入れ、信託、国公債、確実な有価証券が示されています。
また、売買利益の獲得を目的とした株式保有は適当でないともされています。
ただし、「確実な有価証券」が具体的にどの商品を指すのかは、細かく列挙されているわけではありません。
そのため、医療法人側で一定の判断基準を持つ必要があります。
シーガルでは、次のように整理しています。
まず、「国公債」と明記されている以上、日本国債や地方債などは、医療法人の資金管理として最も説明しやすい選択肢です。
次に、国公債という文言や、確実な有価証券という考え方を踏まえると、日本国と同程度以上の信用力・格付けを持つ国や公的機関が発行する債券も、検討対象になり得ると考えています。
ここで、格付けを確認します。
S&P Global Ratingsは、2026年3月30日に日本の長期ソブリン格付けをA+としています。
一方、S&P Global Ratingsは、2026年6月26日に米国の長期ソブリン格付けをAA+としています。
つまり、S&Pの格付け上は、米国は日本より高い格付けです。
このため、米国債は、単に「利回りが高いから検討する」のではなく、日本国と同程度以上の信用力を持つ国の国債として、国公債又は確実な有価証券の文脈で検討対象になり得ると整理できます。
ただし、ここで注意が必要です。
「米国債だから無条件にOK」という意味ではありません。
米国債は米国政府が発行する債券であり、発行体の信用力という点では説明しやすい面があります。
一方で、ドル建てである以上、為替リスクがあります。
また、20年、30年といった長期債やストリップス債は、途中売却時の価格変動リスクが大きくなります。
つまり、米国債を検討する場合は、国公債又は確実な有価証券の一つとして検討対象になるが、通貨、満期、為替リスク、途中売却時の価格変動リスクまで整理する必要があるということです。
「確実な有価証券」の判断で確認したいポイント
「確実な有価証券」に該当するかどうかを判断する際、シーガルでは主に次の観点を確認します。
1. 発行体又は投資対象の信用力
まず見るべきなのは、誰が発行している商品なのか、又は何に投資している商品なのかです。
国公債が明示されている以上、信用力の低い発行体の商品を「確実な有価証券」と説明するのは難しくなります。
そのため、国債以外の債券などを検討する場合は、日本国の信用水準をひとつの目安にするのが分かりやすいです。
これは「日本国債だけしか認められない」という意味ではありません。
むしろ、国公債が指導要綱上に出ている以上、日本国と同程度以上の信用力・格付けを持つ国や公的機関が発行する債券は、検討対象として整理しやすいと考えています。
この考え方から、米国債も候補になります。
もっとも、これは厚生労働省が「日本国と同程度以上の信用力であれば認められる」と明示しているという意味ではありません。
あくまで、国公債が例示されていることを踏まえた、安全性判断の一つの目安です。
2. 元本毀損リスクが大きすぎないこと
「確実な有価証券」として説明するなら、元本毀損リスクが大きすぎる商品は避けるべきです。
医療法人のお金は、将来の医療機器更新、内装工事、人件費、材料費、借入返済などに使う可能性があります。
その資金を大きく減らしてしまうと、医療法人の安定経営に影響します。
したがって、値動きが大きい商品、レバレッジを使う商品、仕組みが複雑な商品は、「確実な有価証券」としては説明しにくいです。
3. 換金性があること
医療法人では、急な設備更新や資金需要が生じることがあります。
そのため、必要なときに現金化できるかも重要です。
満期まで保有する前提の商品であっても、途中換金時に大きな損失が出る可能性がある場合は、慎重に考える必要があります。
SBI証券も、債券は償還前に売却する場合、金利動向等による価格変動により投資元本を割り込むことがあると説明しています。
また、外貨建て債券は為替相場の変動により、円換算額で損失が生じることがあるとされています。
資金を守るための商品で、資金繰りを悪化させては意味がありません。
4. 商品内容を説明できること
医療法人が有価証券を持つ場合、理事会等や所轄庁に対して、なぜその商品を選んだのかを説明できる必要があります。
「金融機関に勧められたから」
「利回りが高かったから」
という理由だけでは弱いです。
少なくとも、次の点は説明できる状態にしておくべきです。
発行体又は投資対象
信用力・格付け
通貨と為替リスク
満期・償還の有無
途中売却時の価格変動リスク
医療法人の資金需要との整合性
定款上の現金保管規定との整合性
商品内容を説明できないものは、医療法人の資金管理としては避けるべきです。

5. オルカン・S&P500を「確実な有価証券」として整理できるか
ここが最も悩ましい論点です。
オルカンやS&P500型投資信託は、株式市場に連動する投資信託です。
元本保証はなく、短期的には大きく下落する可能性もあります。
そのため、国債や元本償還が予定されている債券に比べると、「確実な有価証券」としての説明難易度は高いです。
一方で、医療法人運営管理指導要綱やモデル定款では、「確実な有価証券」という言葉は使われていますが、その具体的な商品リストが明示されているわけではありません。
そこでシーガルでは、オルカンやS&P500型投資信託について、次のような事情を整理したうえで、「確実な有価証券」として整理する余地はゼロではないと考えています。
世界株式又は米国大型株に広く分散されていること
個別株式への集中投資ではないこと
レバレッジ型やテーマ型ではないこと
仕組みが比較的シンプルであること
流動性がある公募投資信託であること
長期保有を前提とすること
短期売買益を目的としないこと
投資額を本業に支障がない範囲に限定すること
ただし、ここは非常に重要です。
オルカンやS&P500型投資信託を「確実な有価証券」として整理することは、かなり攻めた整理です。
所轄庁や監事、金融機関、他の専門家から、
株式市場に連動する投資信託を「確実な有価証券」といえるのか
元本保証がないのに「確実」といえるのか
売買利益目的の株式保有に近いのではないか
定款上の現金保管規定に反するのではないか
と指摘される可能性は高いです。
したがって、シーガルのスタンスは、オルカンやS&P500を一律否定するものではありませんが、ノーリスクで問題ないというものでもありません。
顧問先がそのリスクを理解したうえで実行するのであれば、シーガルとしては、そのリスクができる限り小さくなるように、商品選定、資金区分、投資上限、理事会等議事録、定期モニタリング、所轄庁への説明資料を最大限整えるというスタンスです。
日本国債・米国債などはどう考えるか
医療法人で資産運用を検討する場合、シーガルでは、いきなりオルカンやS&P500型投資信託から入るのではなく、まず日本国債や米国債など、説明しやすい選択肢から検討する方が自然だと考えています。
理由はシンプルです。
医療法人運営管理指導要綱やモデル定款では、現金の保管方法として、国公債が明示されているからです。
特に日本国債は、日本国政府が発行する円建ての債券です。
定款や指導要綱に「国公債」とある以上、医療法人の資金管理として最も説明しやすい選択肢の一つです。
そのうえで、国公債という文言や確実な有価証券という考え方を踏まえると、日本国と同程度以上の信用力・格付けを持つ国や公的機関が発行する債券も、検討対象になり得ると考えています。
この点、S&P Global Ratingsの長期ソブリン格付けでは、日本がA+であるのに対し、米国はAA+です。
つまり、格付け上は、米国は日本より上位です。
したがって、米国債は、日本国と同程度以上の信用力を持つ国の国債として、医療法人の資金管理上も検討対象になり得ると考えます。
米国債は、発行体の信用力や満期償還の点では、株式型投資信託より説明しやすい面があります。
ただし、米国債はドル建てです。
そのため、米ドルでは元利金の支払いが予定されていても、円高になれば円換算額が減る可能性があります。
また、20年、30年といった長期債は、利回りが高く見える一方で、途中売却時の価格変動リスクも大きくなります。
したがって、外国国債を検討する場合でも、「米国債だから無条件にOK」ではなく、発行体の信用力、通貨、満期、途中売却時の価格変動リスク、円建て資金繰りへの影響を整理する必要があります。

SBI証券で見る日本国債・米国債の利回り例
ここで、実際の利回り感を見てみます。
以下は、SBI証券に掲載されている債券利回りの一例です。
債券の利回りや取扱銘柄は日々変わるため、実際に検討する際は、必ずその時点の最新情報を確認してください。
また、以下は特定商品の推奨ではありません。
医療法人で購入できるか、法人名義口座で取り扱えるか、定款上問題がないか、所轄庁に説明できるかは、個別確認が必要です。
日本国債の例
SBI証券の債券ページでは、2026年7月6日更新の既発債券、円貨建債券の例として、第90回利付国債30年が掲載され、参考利回りは税引前・単利表示で年3.899%、残存年数は約29.7年とされています。
つまり、執筆時点の例では、日本国債でも30年債のような長期債であれば、税引前で3%台後半の利回りが見られる状況です。
ただし、20年・30年の国債は、途中で売却する場合、金利変動によって価格が大きく動く可能性があります。
そのため、医療法人で検討するなら、「満期まで保有できる資金なのか」が重要です。
米国債の例
SBI証券の債券ページでは、2026年7月6日更新の既発債券、外貨建債券の例として、米国国債ストリップス債が掲載され、参考利回りは税引前・複利で年4.958%、残存年数は約18.7年とされています。
また、SBI証券の米国国債の説明ページでは、米国国債の利付債について、2036年償還、2046年償還、2056年償還などの例が掲載されており、参考利回りは税引前・複利で3%台後半から4%台半ばの例が示されています。
このように、米国債では、日本国債より高い利回りが見られる場面があります。
ただし、米国債はドル建てです。
SBI証券も、外貨建て債券は円高になる過程では円換算した価値が下落し、売却時又は償還時の為替相場によっては損失が生じることがあると説明しています。
そのため、米国債を医療法人で検討する場合は、少なくとも次の点を整理する必要があります。
発行体は米国政府であること
S&P格付けでは米国が日本より上位であること
ドル建てであり、為替リスクがあること
満期まで保有できる資金か
途中売却時の価格変動リスク
医療法人の資金繰りに支障がないか
医療法人にとって大事なのは、利回りの高さではなく、説明可能性と資金繰りへの影響です。

シーガルの基本スタンス
ここまでを踏まえると、シーガルの基本スタンスは次のとおりです。
医療法人の資産運用は、一律に禁止すべきものではありません。
しかし、最初からオルカンやS&P500型投資信託ありきで考えるべきでもありません。
まずは、医療法人運営管理指導要綱や定款に照らして説明しやすいものから検討すべきです。
具体的には、次の順番で検討するのが実務的です。
何も運用しない
定期預金・日本国債など、円建てで説明しやすい選択肢
日本国と同程度以上の信用力・格付けを持つ国や公的機関が発行する債券
米国債など、信用力は高いが為替リスクのある外国国債
保障目的や契約内容を整理したうえでの保険商品
それでも必要がある場合に、十分な準備をしたうえでオルカン・S&P500型投資信託などを検討する

特に、オルカンやS&P500型投資信託を検討する場合、シーガルでは「医療法人だから絶対に買えない」とは考えていません。
むしろ、確実な有価証券について明確な商品リストがない以上、オルカンやS&P500型投資信託についても、商品内容、分散性、流動性、長期保有方針、資金の性格を整理したうえで、「確実な有価証券」として整理を試みる余地はあると考えています。
ただし、その整理は突っ込まれる可能性が高い整理です。
所轄庁から、又は監事・社員総会・金融機関・他の専門家から、
本当に確実な有価証券といえるのか
株式市場に連動する投資信託ではないか
元本保証がないのではないか
売買利益目的の株式保有に近いのではないか
定款上の現金保管規定に反しないか
と指摘される可能性があります。
その場合には、追加説明、投資方針の見直し、投資額の縮小、又は売却を検討しなければならない可能性があります。
東京都の資料でも、医療法人の業務や会計が法令、東京都知事の処分、定款又は寄附行為に違反している疑いがある場合、報告徴求や立入検査が行われることがあり、違反等が認められる場合には必要な措置をとるべき旨を命ずることがあるとされています。
したがって、シーガルのスタンスはこうです。
国債で目的を達成できるなら、まず国債でよい。
日本国と同程度以上の信用力・格付けを持つ債券で説明できるなら、その選択肢も検討する。
それでもオルカンやS&P500型投資信託に投資したい場合は、顧問先がリスクを理解したうえで、指摘されたときに打ち返せるだけの準備をする。
シーガルは、顧問先が理解して選択するリスクを一律に否定するのではなく、そのリスクができる限り小さくなるように準備する。
これが基本的な考え方です。
オルカン・S&P500を医療法人で購入するならどう整理するか
オルカンやS&P500型の投資信託は、個人の資産形成ではよく使われる商品です。
医療法人でも、インフレ対応や長期的な資金価値の目減り対策として、これらの商品を検討したいという相談があります。
この点について、シーガルでは、オルカンやS&P500型の投資信託を医療法人が保有することを、一律に不可とまでは考えていません。
ただし、これらは株式市場に連動する投資信託です。
そのため、国公債や元本償還が予定されている債券と比べると、説明難易度は上がります。

医療法人でオルカンやS&P500型投資信託を検討する場合は、次のように整理するのが実務的です。
1. まず「確実な有価証券」として整理できるかを検討する
医療法人運営管理指導要綱やモデル定款では、現金の保管方法として、国公債や確実な有価証券が示されています。
そのため、オルカンやS&P500型投資信託を検討する場合でも、まずは「確実な有価証券」として整理できるかを検討することになります。
この点について、シーガルでは、次のような事情を確認します。
公募投資信託であること
投資対象が広く分散されていること
レバレッジ型・テーマ型ではないこと
長期保有を前提にすること
短期売買益を目的としないこと
投資額が本業に支障がない範囲に限定されていること
これらを踏まえ、オルカンやS&P500型投資信託を「確実な有価証券」として整理する余地はあると考えます。
ただし、これは国債と同じ安全性があるという意味ではありません。
オルカンやS&P500型投資信託は元本保証の商品ではありません。
短期間で大きく下落する可能性があります。
所轄庁から「確実な有価証券とはいえない」と指摘される可能性は高いです。
したがって、確実な有価証券として整理する場合でも、その整理はリスクを伴う整理であることを、理事会等で明確に確認しておく必要があります。
2. 補助的に「長期余裕資金の管理」としても整理する
オルカンやS&P500型投資信託を検討する場合、シーガルでは、「確実な有価証券」としての整理に加えて、補助的に「長期余裕資金の管理」としても整理することが重要だと考えています。
ここで注意したいのは、「長期余裕資金の管理」という整理は、「確実な有価証券に該当する」という話から出てくるものではないという点です。
つまり、
長期余裕資金だから、どの商品でも買ってよい
という意味ではありません。
長期余裕資金の管理という整理は、あくまで補助的な整理です。
なぜこの補助線が出てくるのかというと、次の3つの点があります。
1つ目は、医療法人の非営利性は、利益を出すこと自体の禁止ではなく、剰余金を社員等に分配しないことが中心という点です。
厚生労働省資料でも、医療法人の非営利性について、医療機関等の運営により生じた利益、つまり剰余金を社員等へ分配することを禁止するものとして整理されています。
つまり、医療法人が利益を出すこと自体が禁止されているわけではありません。
問題は、その利益を社員、出資者、役員その他の関係者に分配していないかです。
2つ目は、厚生労働省資料上も、剰余金は医療の向上や安定的な財政基盤の確保に向けて、法人内で使われるものとして整理されているという点です。
厚生労働省資料では、剰余金の具体的な使途として、設備整備に要する費用、法人職員に対する給与改善費用、将来の施設整備に係る積立金などが例示されています。
つまり、医療法人に残った資金は、社員等に分配するものではなく、将来の医療提供体制を維持するために法人内に留保し、設備整備、人件費、施設整備、安定的な財政基盤の確保などに使うことが想定されています。
3つ目は、医療法人運営管理指導要綱が問題にしているのは、運用財産の不適正管理、みだりな処分、そして売買利益目的の株式保有であるという点です。
同要綱では、医療事業の経営上必要な運用財産は適正に管理され、処分がみだりに行われていないことが求められています。
そのうえで、現金については、銀行や信託会社への預け入れ・信託、又は国公債・確実な有価証券への換え保管が示され、売買利益の獲得を目的とした株式保有は適当でないとされています。
つまり、医療法人の資金をリスクにさらして、短期売買益を狙ったり、本来業務に必要な資金を毀損したりすることが問題視される構造です。
ここから、次のような補助線が出てきます。
医療法人の剰余金や内部留保は、将来の医療提供体制、設備更新、人件費、財政基盤の確保に使うべきものです。
その中で、直近の運転資金、納税資金、借入返済資金、賞与資金、近い将来の設備投資資金を除いた資金について、将来の医療提供体制を維持するために管理する、という説明はあり得ます。
これが、ここでいう「長期余裕資金の管理」という意味です。
ただし、非常に重要なのは、この整理は、確実な有価証券に該当しない商品を当然に適法化する根拠ではないという点です。
仮に所轄庁から、
オルカンやS&P500型投資信託は確実な有価証券ではない
と判断された場合、長期余裕資金の管理という説明だけで当然に問題が解消するわけではありません。
その場合には、追加説明、保有方針の見直し、投資額の縮小、又は売却を検討しなければならない可能性があります。
したがって、長期余裕資金の管理という整理は、あくまで、
短期売買益を目的としていない
本業に必要な資金を運用に回していない
医療法人の資金をみだりに処分していない
社員等への利益分配ではない
将来の医療提供体制を維持するための資金管理である
と説明するための補助的な整理です。
長期余裕資金の管理という整理は、確実な有価証券該当性を補強するための説明であって、確実な有価証券に該当しない商品を当然に適法化する魔法の言葉ではありません。

3. 国債や信用力の高い債券で目的を達成できないかを先に検討する
オルカンやS&P500型投資信託を検討する前に、まず考えるべきなのは、日本国債や、日本国と同程度以上の信用力・格付けを持つ債券で目的を達成できないかです。
医療法人運営管理指導要綱やモデル定款には、現金の保管方法として国公債が示されています。
そのため、日本国債はもちろん、国公債や確実な有価証券という考え方を踏まえると、日本国と同程度以上の信用力・格付けを持つ国や公的機関が発行する債券も、検討対象になり得ると考えます。
この点、S&P Global Ratingsの長期ソブリン格付けでは、日本はA+、米国はAA+です。
したがって、米国債は、格付け上、日本国債よりも高い信用力を持つ国の国債として検討対象になり得ると整理できます。
たとえば、インフレ対応や将来の設備更新資金の管理が目的であれば、株式型投資信託にこだわらなくても、日本国債、米国債、高格付け債券、保険商品などで一定の目的を達成できる可能性があります。
特に、SBI証券の掲載例では、日本国債30年で税引前3%台後半の参考利回り、米国国債ストリップス債で5%近辺の参考利回りが見られます。
もちろん、米国債には為替リスクがあります。
長期債には金利変動リスクもあります。
それでも、株式型投資信託と比べると、発行体、満期、利回り、償還予定が説明しやすい面があります。
そのため、シーガルとしては、最初からオルカン・S&P500ありきではなく、「日本国債ではだめなのか」「米国債ではだめなのか」「保険ではだめなのか」を検討したうえで、それでも投資信託を使う理由があるかを整理すべきだと考えています。
4. 売買益目的に見えないようにする
医療法人運営管理指導要綱では、売買利益の獲得を目的とした株式保有は適当でないとされています。
そのため、オルカンやS&P500型投資信託を購入する場合でも、短期売買益を目的としないことを明確にしておく必要があります。
特に避けたいのは、次のような運用です。
上がったら利益確定する
下がったら買い増す
相場を見て売買する
成績の良い商品に乗り換える
複数の商品を頻繁に入れ替える
これらは、医療法人の資金管理というより、売買益目的の投資運用に見えやすくなります。
一方で、あらかじめ投資上限、購入頻度、購入金額、停止基準を決めたうえで、定額・定期的に買い付ける方法であれば、相場判断による売買とは違う説明がしやすくなります。
ただし、定期的な買い増しを行う場合でも、次の点を明確にしておく必要があります。
あらかじめ決めた投資上限の範囲内で行うこと
相場下落時のナンピン買いを目的としないこと
短期的な値上がり益を目的としないこと
本業資金を圧迫しないこと
投資額が過大になった場合は停止すること
つまり、医療法人でオルカンやS&P500型投資信託を保有する場合は、「買ったり売ったりして利益を取る」のではなく、あらかじめ決めた範囲内で長期保有し、途中売買は原則行わないという整理が重要です。
売却する場合も、利益確定のためではなく、次のような場合に限定する方が説明しやすいです。
所轄庁等から指摘を受けた場合
法人の資金繰りに影響が出る場合
設備投資や借入返済のために資金が必要になった場合
商品内容が当初想定と大きく変わった場合
投資上限を超えた場合
定期買付はあり得ますが、相場判断による途中売買や利益確定売りは避けるべきです。

5. 過去の運用実績や定期確認は、どう位置づけるべきか
オルカンやS&P500型投資信託について、過去の運用実績を確認すること自体は有用です。
また、購入後に定期的に運用状況を確認することも重要です。
ただし、これらは「確実な有価証券であること」の唯一の根拠として使うべきではありません。
たとえば、
過去の運用実績が良い
長期で見れば上昇している
分散投資されている
低コストである
という点は、商品を検討する際の参考にはなります。
しかし、過去の運用実績が良いからといって、将来の元本が確実に保全されるわけではありません。
そのため、過去の運用実績を理由に「確実な有価証券」と整理するのは危険です。
むしろ、過去の運用実績や最大下落率は、リターンを強調するためではなく、リスクを確認するために使うべきです。
たとえば、
過去にどの程度の下落があったか
含み損が出ても本業資金に影響しないか
借入返済や設備投資に支障がないか
投資額の上限が過大でないか
を確認する資料として使うのが実務的です。
また、定期的な運用実績の確認も、利益確定や相場判断のために行うものではありません。
定期確認の目的は、売買益を得ることではなく、医療法人の本来業務に必要な資金を損なっていないかを確認することです。
6. 運転資金や近い将来に使う資金は入れない
オルカンやS&P500型投資信託には、価格変動があります。
そのため、次のような資金は投資に回すべきではありません。
日常の運転資金
納税資金
賞与資金
借入返済資金
近い将来の設備投資資金
急な修繕や医療機器更新に備える資金
購入する場合でも、これらを除いた当面使う予定のない長期余裕資金の一部に限定すべきです。
ここを曖昧にすると、医療法人の本来業務に必要な資金をリスクにさらしているように見えてしまいます。
「余っているように見える資金」と「本当に運用してよい資金」は違います。
7. 投資額の上限を決める
医療法人で株式型投資信託を持つなら、投資額の上限を事前に決めることが重要です。
たとえば、
長期余裕資金のうち何%までにするか
金額上限をいくらにするか
含み損が出ても本業資金に影響しない範囲か
定期買付を行う場合、いつ停止するか
を整理します。
上限を決めずに購入すると、医療法人の資金管理として説明しにくくなります。
「いくらまでなら本業に支障がないか」を先に決めることが大切です。
8. 指摘を受けた場合の対応方針を決めておく
オルカンやS&P500型投資信託を医療法人で購入する場合、所轄庁等から指摘を受ける可能性があることを前提にしておくべきです。
購入前に、理事会等で少なくとも次の点は確認しておくべきです。
確実な有価証券として整理する理由
異なる判断を受ける可能性があること
指摘を受けた場合には、投資額の縮小、定期買付の停止、又は売却を検討すること
売却時に損失が出ても本業資金に影響しない範囲であること
特に重要なのは、「指摘を受けた場合には売却しなければならない可能性がある」ことを、事前に理解しておくことです。
これは、オルカンやS&P500型投資信託を一律に否定するという意味ではありません。
むしろ、そのリスクを理解したうえで実行するなら、最初から打ち返せる準備をしておくべきということです。

9. 理事会等で目的・金額・リスク・見直し基準を残す
医療法人でオルカンやS&P500型投資信託を購入するなら、理事会等での整理を議事録に残すべきです。
議事録では、特に次の点を明確にしておくと実務的です。
購入目的
確実な有価証券として整理する理由
長期余裕資金の管理としての補助的な整理
短期売買益を目的としないこと
投資上限と停止基準
所轄庁から指摘を受けた場合の対応方針
なお、実際には各医療法人の定款や寄附行為によって、理事会だけで足りるのか、社員総会や評議員会での確認が必要かも変わります。
モデル定款でも、資産管理や決算・剰余金の処理について、理事会や社員総会の関与が予定されています。
したがって、各医療法人の定款・寄附行為に沿った手続を確認することも重要です。

SNS上の「人件費や物価高騰のためならOK」という説明はどう考えるか
XなどのSNSでは、「人件費や物価高騰に備えるためなら、医療法人でも資産運用できる」という説明を見かけることがあります。
この考え方は、方向性としては理解できます。
医療法人を長期で継続するには、人件費、材料費、医療機器、内装工事などの上昇に備える必要があります。
そのため、インフレ対応や将来の資金需要に備えるために、現預金だけでよいのかを考えること自体は重要です。
ただし、少なくとも本記事で確認している厚生労働省の一次資料では、「人件費や物価高騰に充てるためなら、どのような資産運用でもよい」という形の文言は見当たりません。
一次資料として押さえるべきなのは、医療法人運営管理指導要綱にある、「国公債若しくは確実な有価証券」という整理と、「売買利益の獲得を目的とした株式保有は適当でない」という整理です。
つまり、「人件費や物価高騰のためだから何でもよい」ではありません。
実務上は、インフレ対応という目的があることに加えて、商品内容が国公債や確実な有価証券として説明できるか、または少なくとも、医療法人の長期余裕資金の管理方法として、目的・金額・リスク・手続を個別に説明できるかが重要です。
SNS上の簡単な説明だけで判断するのではなく、厚生労働省資料の文言を起点に、医療法人ごとの資金状況、理事会等での説明、商品内容まで含めて判断することが大切です。
税理士が医療法人の資産運用を止める理由
税理士が医療法人の資産運用を止めることは少なくありません。
ただし、税理士が止める理由は、「医療法人は絶対に資産運用できないから」というより、説明が難しい運用を避けたいからです。
特に、医療法人運営管理指導要綱では、国公債や確実な有価証券への換え保管が示される一方で、売買利益目的の株式保有は適当でないとされています。
この文言があるため、税理士としては、株式や投資信託などを安易に勧めにくいのです。
また、医療法人として、なぜその資金を運用に回したのかを説明できる必要があります。
たとえば、特に重要なのは次の点です。
すぐに使う運転資金まで運用していないか
売買益目的に見えないか
定款上の現金保管規定と整合しているか
日本国債や米国債など、より説明しやすい選択肢を検討したか
指摘を受けた場合の対応方針を決めているか
所轄庁から常に細かい設備投資計画まで質問されるとは限りません。
ただし、理事会等で資金の使途や運用目的を整理しておくことは、医療法人の内部管理として重要です。
実務上は、税理士側からすると、個別に検討するよりも、「医療法人では資産運用はやめましょう」と一律で止める方が安全です。
ただ、それは税理士側の安全策であって、医療法人にとって最適とは限りません。
現預金が大きく積み上がっている医療法人では、インフレにより実質的な貨幣価値が目減りする可能性があります。
医療法人を長期で継続するなら、普通預金だけが常に正解とは言い切れません。
理事会等で整理しておきたいこと
医療法人で資産運用を始めるなら、理事会等で整理しておくことが大切です。
所轄庁から設備投資計画を細かく聞かれる場面は、通常そこまで多くないかもしれません。
ただ、理事会等で資産運用を決めるなら、少なくとも近い将来に使う予定の資金を確認したうえで、運用に回せる金額を判断するべきです。
1. すぐに使う資金を分ける
まず、すぐに使う可能性がある資金を分けます。
日常の運転資金
賞与資金
納税資金
借入返済資金
近い将来の設備投資資金
急な修繕や医療機器更新に備える資金
これらは、基本的に現預金で残すべきです。
本業に必要な資金をリスク性商品に回すべきではありません。
2. 本当に運用してよい金額を決める
余っているように見える資金と、本当に運用してよい資金は違います。
現預金残高だけを見て判断するのではなく、今後の支出予定、借入返済、設備更新、診療報酬の入金サイクルも踏まえて判断する必要があります。
「余っているから買う」ではなく、「本業に支障がない金額を先に決める」ことが重要です。
3. 運用目的を明確にする
理事会等では、運用目的を明確にした方がよいです。
たとえば、
インフレによる資金価値の目減りに備え、将来の設備更新資金を保全するため
という目的であれば、短期売買益狙いとは違う説明ができます。
一方で、
余裕資金を効率的に運用して利益を得るため
という表現は、医療法人の資金管理としては避けた方がよいです。
運用目的は、利益獲得ではなく、将来の医療提供体制を維持するための資金管理として整理することが大切です。
4. 商品選定理由を残す
なぜその商品を選んだのかも残しておくべきです。
特に、次の点は整理しておくと説明しやすくなります。
発行体又は投資対象の信用力
元本毀損リスク・為替リスク
医療法人の資金需要との整合性
定款上の現金保管規定との整合性
指摘を受けた場合の対応方針
5. 解約や見直しの基準を決める
資産運用は、始めた後の管理も大切です。
たとえば、
設備投資が必要になった場合
借入返済に影響が出る場合
商品のリスクが想定より大きくなった場合
医療法人の資金繰りが悪化した場合
所轄庁から指摘を受けた場合
このようなときにどう見直すかを決めておくと、理事会等決議としても実務的です。
見直し基準は、利益確定のためではなく、本業資金を守るために設定するものです。
シーガルは医療法人の資産運用をどう考えるか
シーガルでは、医療法人の資産運用を一律に禁止すべきだとは考えていません。
もちろん、何でも自由に運用してよいとは考えていません。
売買益狙いの株式投資や、投機性の高い商品は避けるべきです。
所轄庁から指摘を受ける可能性もゼロではありません。
ただ、現預金が積み上がっている医療法人に対して、
「医療法人だから絶対にダメです」
「普通預金以外はやめておきましょう」
とだけ言って終わるのは、少し乱暴だと考えています。
医療法人を長期で継続するには、将来の医療機器更新、内装工事、人件費、材料費、IT投資に対応できる資金力が必要です。
その意味で、インフレによる実質的な貨幣価値の目減りに備えることは、医療法人経営にとって重要なテーマです。
シーガルでは、医療法人の資産運用について、法人の状況に応じて主に次の4つを提案します。
1. 何も運用しない
最も保守的な選択肢です。
普通預金や定期預金の範囲で資金を置くため、所轄庁への説明はしやすくなります。
必要なときに資金を使いやすい点もメリットです。
一方で、インフレによる実質的な貨幣価値の目減りには対応しにくくなります。
医療機器、内装工事、人件費、材料費が上がる局面では、現預金を持っているだけでは、将来の支出に対応する力が実質的に下がる可能性があります。
つまり、何も運用しないことは安全ですが、長期的にはインフレリスクを受け入れる選択肢です。
2. 日本国債・米国債などの国公債又は信用力の高い債券を中心に検討する
2つ目は、日本国債や米国債などの国公債、又は日本国と同程度以上の信用力・格付けを持つ債券を中心に検討する方法です。
この考え方を採る理由は、医療法人運営管理指導要綱にあります。
指導要綱では、現金の保管方法として、銀行預金や信託だけでなく、国公債や確実な有価証券が示されています。
このため、シーガルでは、資産運用を検討する場合でも、まずは定款や指導要綱に照らして説明しやすい国公債から検討することを重視しています。
日本国債は、円建てであり、為替リスクがありません。
その意味では、医療法人の資金管理として最も説明しやすい選択肢の一つです。
一方、国公債や確実な有価証券という考え方を踏まえると、日本国と同程度以上の信用力・格付けを持つ国や公的機関が発行する債券も、検討対象になり得ると考えています。
その代表的な候補の一つが、米国債です。
S&P Global Ratingsでは、日本の長期ソブリン格付けがA+、米国の長期ソブリン格付けがAA+とされており、格付け上は米国が日本より上位です。
実際に、SBI証券の掲載例では、日本国債30年で税引前3%台後半、米国国債ストリップス債で税引前5%近辺の参考利回りが見られます。
ただし、米国債はドル建てです。
円高になれば、円換算の元本や利息は減る可能性があります。
また、長期債やストリップス債は、途中売却時の価格変動リスクが大きくなります。
したがって、米国債を検討する場合でも、利回りだけで判断してはいけません。
為替リスク、満期、途中売却時の価格変動リスク、円建て資金繰りへの影響を整理する必要があります。
シーガルとしては、国債や信用力の高い債券で目的を達成できるなら、まずその選択肢を検討する方が医療法人として説明しやすいと考えています。
3. 保険商品を活用する
3つ目は、保険商品を活用する方法です。
保険商品は、投資信託を直接購入する場合とは性質が異なります。
保険契約であれば、契約で定められた保険金支払事由が発生し、約款上の支払条件を満たした場合に、契約に基づいて保険金を請求することになります。
つまり、単に値上がり益を狙って金融商品を売買するのではなく、保険契約としての保障機能を持つ点が大きな違いです。
この点から、シーガルでは、保障目的や契約内容に合理性がある保険商品については、投資信託を直接購入する場合よりも説明しやすいことがあると考えています。
一方で、変額保険など運用実績に連動する商品では、解約返戻金や満期保険金に最低保証がないものがあります。変額保険は特別勘定の運用実績に基づいて積立金額や解約返戻金が増減し、投資リスクは契約者に帰属します。
さらに、変額保険は、払い込んだ保険料の全額がそのまま運用に回るわけではありません。
一般的に、変額保険には、保険契約の維持・管理に関する費用、保障に関する費用、資産運用関係費用、解約控除などがかかります。生命保険協会の資料でも、変額保険・変額年金保険では、特別勘定に属する資産の種類のほか、保険契約関係費や資産運用関係費等の説明が必要とされています。
また、保険商品の販売には、営業職員や代理店等への募集関連コストが含まれることがあります。
そのため、商品設計や契約初年度の費用構造によっては、1年目に支払った保険料のうち、実際に運用に回る金額がかなり少なくなる場合があります。
ここを理解しないまま、
変額保険は中身が投資信託だから、投資信託を直接買うのと同じように増えるはず
年5%で運用できれば、前年の解約返戻金もそのまま5%増えるはず
と考えるのは危険です。
仮に特別勘定の運用が年5%程度で回ったとしても、そこから保険関係費用や資産運用関係費用などが差し引かれます。
そのため、前年の解約返戻金額×105%が、そのまま今年の解約返戻金額になるとは限りません。
特に、法人保険は理事長がよく分からないまま契約しているケースもあります。
変額保険を検討する場合は、少なくとも次の点を確認すべきです。
死亡保障などの保障目的が本当に必要か
払込保険料のうち、実際に運用に回る部分はどれくらいか
保険関係費用・運用関係費用・解約控除はどれくらいか
解約返戻金の推移は、保守的な前提でも納得できるか
投資信託を直接購入する場合と比較して、どちらが説明しやすいか
保険商品については、保障機能があるため投資信託の直接購入より説明しやすい場面があります。
ただし、保険商品であっても、コスト構造を理解せずに契約すると、想定したほど資金が増えない可能性があります。
保険商品であっても、法人の資金繰りを圧迫する契約は避けるべきです。

4. 十分に準備したうえでオルカン・S&P500型投資信託を検討する
4つ目は、十分に準備したうえで、医療法人がオルカンやS&P500型投資信託などを購入する方法です。
この方法を嫌がる税理士は多いです。
投資信託を直接購入すると、資産運用をしていることがはっきり見えるためです。
商品内容によっては、株式比率が高かったり、価格変動が大きかったり、為替リスクがあったりします。
ただし、シーガルでは、投資信託の直接購入を一律に排除すべきとは考えていません。
問題は、投資信託という商品名そのものではなく、中身と目的と説明可能性です。
たとえば、少なくとも次の点を整理します。
確実な有価証券として整理する理由
長期余裕資金の管理としての補助的な整理
短期売買益を目的としない方針
投資上限・定期買付の停止基準
所轄庁から指摘を受けた場合の売却・見直し方針
という状態であれば、投資信託を直接購入することも、検討余地はあると考えています。
ただし、4つの選択肢の中では最も説明が必要です。
特に、オルカンやS&P500型投資信託のような株式型投資信託は、「確実な有価証券」として整理できる余地はあるものの、国債や高格付け債券に比べると指摘を受ける可能性が高いと考えています。
そのため、最初から投資信託ありきで進めるのではなく、法人の資金状況、理事会等運営、商品内容、定款、所轄庁の考え方を十分に整理したうえで判断すべきです。
シーガルのスタンスは、「投資信託を積極的に推奨する」ではありません。
国債や保険など、より説明しやすい選択肢を検討したうえで、それでも投資信託を使うなら、顧問先がリスクを理解したうえで、十分に打ち返せる準備をする、というスタンスです。
このような医療法人はシーガルへご相談ください
次のような医療法人は、資産運用を始める前に、シーガルへご相談ください。
顧問税理士から一律で「医療法人では資産運用はできない」と言われている
現預金がかなり積み上がっている
日本国債や米国債を医療法人で持てるか知りたい
日本国と同程度以上の信用力・格付けを持つ債券を検討したい
保険商品を使った運用提案を受けている
変額保険のコスト構造を確認したい
オルカンやS&P500を医療法人で持てるか知りたい
確実な有価証券として説明できるか整理したい
所轄庁に聞かれたときの説明資料まで整えておきたい
指摘を受けた場合の売却・見直し基準まで整理したい
医療法人の資産運用は、税務だけでなく、医療法人として説明できる資金管理になっているかまで含めて判断する必要があります。
今の税理士に止められている場合でも、資金の性格や運用方法によっては、検討の余地があるケースがあります。
よくある質問
医療法人は資産運用をしてはいけないのですか
一律に禁止されているわけではありません。
医療法人運営管理指導要綱では、現金を銀行や信託会社に預け入れること、信託すること、または国公債や確実な有価証券に換えて保管することが示されています。
ただし、売買益狙いの運用や投機性の高い運用は避けるべきです。
また、定款にモデル定款と同様の現金保管規定がある場合は、その定款との整合性も確認する必要があります。
「確実な有価証券」とは何ですか
明確な商品リストがあるわけではありません。
そのため、発行体の信用力、元本毀損リスク、換金性、商品内容の説明可能性をもとに判断する必要があります。
シーガルでは、国公債が明示されていることを踏まえ、日本国の信用水準をひとつの目安にしています。
また、S&P Global Ratingsの長期ソブリン格付けでは、日本がA+、米国がAA+であり、格付け上は米国が日本より上位です。
そのため、日本国と同程度以上の信用力・格付けを持つ国や公的機関が発行する債券は、検討対象として整理しやすいと考えています。
ただし、これは厚生労働省が「日本国と同程度以上の信用力であれば認められる」と明示しているという意味ではありません。
あくまで、国公債が例示されていることを踏まえた、安全性判断の一つの目安です。
日本国債なら医療法人でも使いやすいですか
日本国債は、医療法人にとって比較的説明しやすい選択肢です。
理由は、医療法人運営管理指導要綱やモデル定款に、現金の保管方法として国公債が示されているからです。
ただし、日本国債であっても、長期債を途中売却する場合には価格変動リスクがあります。
たとえば、20年国債や30年国債は、満期まで保有すれば額面償還が予定されていますが、途中売却時には市場金利の影響を受けます。
そのため、医療法人で検討する場合は、満期まで保有できる資金なのか、途中で設備投資や借入返済に使う可能性がないかを確認する必要があります。
米国債なら医療法人でも使いやすいですか
米国債は、発行体の信用力や利回りの面では、株式型投資信託より説明しやすい面があります。
ただし、米国債を検討する流れとしては、いきなり米国債ありきではなく、まず国公債や確実な有価証券という文言から整理することが大切です。
医療法人運営管理指導要綱やモデル定款には、現金の保管方法として国公債が示されています。
そのため、まず日本国債が説明しやすい選択肢になります。
そのうえで、S&P Global Ratingsの長期ソブリン格付けでは、日本がA+、米国がAA+です。
つまり、米国債は、日本国と同程度以上の信用力・格付けを持つ国の国債として、検討対象になり得ると整理できます。
ただし、米国債はドル建てです。
そのため、米ドルでは元利金の支払いが予定されていても、円高になれば円換算額が減る可能性があります。
また、長期債やストリップス債は、途中売却時の価格変動リスクも大きくなります。
医療法人で米国債を検討する場合は、為替リスク、満期、途中売却時の価格変動リスク、円建て資金繰りへの影響を理事会等で整理する必要があります。
米国債で利回り5%近辺なら、オルカンやS&P500よりよいですか
一概にはいえません。
ただし、医療法人の説明可能性という意味では、株式型投資信託より米国債の方が説明しやすい場面はあります。
米国債は、米国政府が発行する債券であり、満期、利率、償還日が明確です。
一方で、オルカンやS&P500型投資信託は、株式市場に連動する商品であり、満期償還も元本保証もありません。
そのため、医療法人で資産運用を考える場合は、いきなりオルカンやS&P500を検討するのではなく、日本国債や米国債で目的を達成できないかを先に確認する方が自然です。
もっとも、米国債には為替リスクがあります。
また、5%近辺の利回りが見える米国国債ストリップス債は、長期であることが多く、途中売却時の価格変動リスクも大きくなります。
したがって、「利回り5%だから安全」という整理は避けるべきです。
オルカンやS&P500は医療法人で購入できますか
シーガルでは、オルカンやS&P500型の投資信託を、医療法人が購入することを一律に不可とまでは考えていません。
むしろ、確実な有価証券について明確な商品リストがない以上、オルカンやS&P500型投資信託についても、商品内容、分散性、流動性、長期保有方針、資金の性格を整理したうえで、「確実な有価証券」として整理を試みる余地はあると考えています。
ただし、これらは株式市場に連動する投資信託であり、価格変動リスクや為替リスクがあります。
そのため、国債や高格付け債券と比べると、所轄庁等から指摘を受ける可能性は高いです。
購入を検討する場合は、少なくとも次の整理が必要です。
確実な有価証券として整理する理由
長期余裕資金の管理としての補助的な整理
短期売買益を目的としないこと
投資上限・定期買付の停止基準
所轄庁から指摘を受けた場合の対応方針
つまり、「医療法人だから絶対に買えない」とは考えていません。
一方で、個人の資産形成と同じ感覚で、余裕資金を自由に投資してよいわけでもありません。
また、長期余裕資金の管理という整理は、確実な有価証券に該当しない商品を当然に適法化する根拠ではありません。
仮に所轄庁から「確実な有価証券ではない」と指摘された場合には、追加説明、投資額の縮小、又は売却を検討しなければならない可能性があります。
定期買付なら問題ありませんか
定期買付は、相場判断による売買や短期売買益目的の運用とは違う説明がしやすい方法です。
ただし、定期買付であれば何でも問題ないわけではありません。
医療法人で定期買付を行う場合は、少なくとも次の点を決めておくべきです。
購入金額・購入頻度
投資上限
買付停止基準
本業資金への影響確認
指摘を受けた場合の対応方針
また、下落したから買い増す、上がったから売る、成績が良い商品に乗り換える、という運用は、売買益目的に見えやすくなります。
したがって、定期買付を行う場合でも、途中売買や利益確定売りを前提とせず、あらかじめ決めた範囲内で長期保有することが重要です。
変額保険なら医療法人でも使いやすいですか
変額保険は、保険契約としての保障機能があるため、投資信託を直接購入する場合より説明しやすい場面があります。
ただし、変額保険は、運用実績に応じて積立金額や解約返戻金が増減する商品であり、解約返戻金や満期保険金に最低保証がないものがあります。
また、変額保険は、払い込んだ保険料がすべて運用に回るわけではありません。
保険契約関係費用、資産運用関係費用、解約控除などがかかるため、商品によっては、特に契約初年度に実際に運用へ回る金額が少なくなることがあります。
そのため、仮に運用部分が年5%程度で運用されたとしても、前年の解約返戻金額×105%が、そのまま今年の解約返戻金額になるとは限りません。
変額保険を検討する場合は、保障機能、費用構造、解約返戻金の推移、投資信託を直接購入する場合との違いを確認することが大切です。
所轄庁から指摘を受けたらどうなりますか
所轄庁から指摘を受けた場合には、まず、購入目的、商品内容、定款との関係、資金の性格、投資上限、理事会等での決議内容を説明することになります。
ただし、説明しても所轄庁が納得しない場合には、投資方針の見直し、投資額の縮小、定期買付の停止、又は売却を検討しなければならない可能性があります。
東京都の資料でも、医療法人の業務や会計が法令、東京都知事の処分、定款又は寄附行為に違反している疑いがある場合、報告徴求や立入検査が行われることがあり、違反等が認められる場合には必要な措置をとるべき旨を命ずることがあるとされています。
そのため、オルカンやS&P500型投資信託を購入する場合は、指摘を受けたときに売却しなければならない可能性があることを、事前に理解しておく必要があります。
顧問税理士に止められていますが、相談できますか
はい、相談できます。
現在の税理士の判断が間違っているとは限りません。
ただし、一律にダメと言われている場合は、別の視点で整理する価値があります。
医療法人の資産運用は、税務だけでなく、資金繰り、理事会等手続、商品内容、定款、所轄庁への説明可能性まで見て判断する必要があります。
シーガルでは、顧問先がリスクを理解したうえで実行する判断を、一律に否定することはしません。
その代わり、そのリスクができる限り小さくなるように、事前準備、議事録、資料作成、見直し基準まで整理することを重視しています。
医療法人の資産運用を相談したい方へ
医療法人の資産運用は、制度だけを見ても判断しにくい部分があります。
同じ金融商品でも、法人の資金繰り、借入状況、理事会等運営、定款、商品内容によって、判断は変わります。
「顧問税理士から一律でダメと言われている」
「本当に普通預金しか選択肢がないのか知りたい」
「インフレ対応として、どこまで検討できるのか知りたい」
「日本国債や米国債を医療法人で持てるか知りたい」
「確実な有価証券として整理できるか相談したい」
「定期買付ならどう整理できるのか知りたい」
「変額保険のコスト構造を確認したい」
「オルカンやS&P500を医療法人で持てるか知りたい」
「所轄庁に聞かれても説明できる形で整理したい」
「指摘を受けた場合の売却・見直し基準まで整理したい」
このような医療法人は、ご状況に応じてご相談ください。
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今の税理士と比較しながら、医療法人の資産運用を整理したい方は、ゆるやかな税理士変更プランをご確認ください。

まとめ
医療法人の資産運用は、一律に禁止されているわけではありません。
医療法人運営管理指導要綱では、現金を銀行や信託会社に預け入れること、信託すること、又は国公債や確実な有価証券に換えて保管することが示されています。
一方で、売買利益を目的とした株式保有は適当でないとされています。
特に大切なのが、「国公債」や「確実な有価証券」をどう整理するかです。
明確な商品リストがあるわけではないため、シーガルでは、日本国の信用水準をひとつの目安にしながら、発行体の信用力、元本毀損リスク、換金性、商品内容の説明可能性を確認します。
医療法人で資産運用を考えるなら、最初からオルカンやS&P500型投資信託ありきで考えるべきではありません。
まずは、普通預金・定期預金、日本国債など、より説明しやすい選択肢を検討すべきです。
そのうえで、国公債や確実な有価証券という考え方を踏まえると、日本国と同程度以上の信用力・格付けを持つ国や公的機関が発行する債券も、検討対象になり得ると考えています。
S&P Global Ratingsの長期ソブリン格付けでは、日本がA+、米国がAA+です。
このため、米国債は、日本国と同程度以上の信用力を持つ国の国債として検討対象になり得ると整理できます。
実際に、SBI証券の掲載例では、日本国債30年で税引前3%台後半の参考利回り、米国国債ストリップス債で税引前5%近辺の参考利回りが見られます。
ただし、米国債には為替リスクがあります。
長期債やストリップス債には、途中売却時の価格変動リスクもあります。
したがって、国債であっても、利回りだけで判断してはいけません。
また、保険商品、特に変額保険を検討する場合は、保障機能がある一方で、払い込んだ保険料の全額が運用に回るわけではないことを理解する必要があります。
変額保険では、保険契約関係費用、資産運用関係費用、解約控除などがかかるため、仮に運用部分が年5%程度で運用されたとしても、前年の解約返戻金額×105%が、そのまま今年の解約返戻金額になるとは限りません。
一方、オルカンやS&P500のような株式型の投資信託についても、シーガルでは一律に否定する立場ではありません。
確実な有価証券について明確な商品リストがない以上、オルカンやS&P500型投資信託についても、商品内容、分散性、流動性、長期保有方針、資金の性格を整理したうえで、「確実な有価証券」として整理を試みる余地はあると考えています。
ただし、この整理は突っ込まれる可能性が高い整理です。
オルカンやS&P500型投資信託は、株式市場に連動する商品であり、元本保証もありません。
そのため、所轄庁から「確実な有価証券ではない」と指摘される可能性があります。
その場合には、追加説明、投資方針の見直し、投資額の縮小、定期買付の停止、又は売却を検討しなければならない可能性があります。
また、ここでいう「長期余裕資金の管理」という整理は、確実な有価証券に該当するという話から出てくるものではありません。
医療法人の非営利性は、利益を出すこと自体の禁止ではなく、剰余金を社員等へ分配しないことが中心です。
また、厚生労働省資料でも、剰余金は設備整備、法人職員の給与改善、将来の施設整備に係る積立金など、医療の向上や安定的な財政基盤の確保に使われるものとして整理されています。
さらに、医療法人運営管理指導要綱が問題にしているのは、運用財産の不適正管理、みだりな処分、そして売買利益目的の株式保有です。
ここから、医療法人の剰余金や内部留保は、将来の医療提供体制、設備更新、人件費、財政基盤の確保に使うべきものであり、その中で、直近の運転資金・納税資金・借入返済資金・設備投資資金を除いた資金について、将来の医療提供体制を維持するために管理する、という説明はあり得ます。
これが、ここでいう長期余裕資金の管理です。
ただし、繰り返しになりますが、長期余裕資金の管理という整理は、確実な有価証券に該当しない商品を当然に適法化する根拠ではありません。
あくまで、確実な有価証券としての整理を補強し、短期売買益目的ではなく、本業資金を損なわない資金管理であることを説明するための補助的な整理です。
また、オルカンやS&P500型投資信託を購入する場合でも、相場判断による途中売買や利益確定売りは避けるべきです。
定期買付を行う場合でも、あらかじめ決めた投資上限、購入頻度、購入金額、停止基準の範囲内で行い、売買益目的に見えないように整理する必要があります。
シーガルでは、医療法人の状況に応じて、主に次の4つの選択肢を整理します。
何も運用しない
日本国債・米国債などの国公債又は信用力の高い債券を中心に検討する
保険商品を活用する
十分に準備したうえで、オルカン・S&P500型投資信託などを検討する
医療法人の資産運用は、単なる投資ではありません。
長期的に法人を継続するための資金管理として整理することが重要です。
特に、インフレが続く環境では、現預金を持っているだけでは、将来の医療機器更新、内装工事、人件費、材料費に対応する力が弱くなる可能性があります。
だからこそ、シーガルでは、医療法人の資産運用を一律に止めるのではなく、インフレ対応、運転資金、商品内容、理事会手続、定款、所轄庁への説明可能性まで含めて整理することを重視しています。
国債で目的を達成できるなら、まず国債でよい。
日本国と同程度以上の信用力・格付けを持つ債券で説明できるなら、その選択肢も検討する。
保険商品を使うなら、保障機能だけでなく、費用構造と解約返戻金の推移まで確認する。
それでもオルカンやS&P500に投資するなら、顧問先がリスクを理解したうえで、指摘されたときに打ち返せるだけの準備をする。
シーガルは、顧問先が理解して選択するリスクを一律に否定するのではなく、そのリスクができる限り小さくなるように準備する。
これが、シーガルの基本的な考え方です。




