2025.8.10
医療法人の保険活用|節税しながら投資|返戻率100%未満は注意!

「法人税の負担を少しでも減らしたい」
「将来に向けた資産形成も同時に進めたい」
「でも、どんな保険を選べばいいか分からない…」
もしあなたが、このような悩みを抱えている医療法人の院長先生であれば、この記事はきっとお役に立ちます。
医療法人の経営者にとって、節税は永遠の課題です。
しかし、やみくもに節税対策を講じても、かえって大切なキャッシュを減らしてしまうリスクがあります。
特に、解約返戻率が100%未満の保険を選んでしまうと、税金を減らせても、手元に残るお金が少なくなってしまいます。
この記事では、医療法人専門の税理士である私たちが、「節税」と「資産形成」を両立させる保険の賢い活用法を解説します。
具体的には、
なぜ、医療法人が行えない投資を変額保険で実現できるのか
「返戻率が100%未満」の保険で注意すべきこと
最終的なキャッシュを最大化する「キャッシュ増減表」の考え方
など、具体的なノウハウをすべてお伝えします。
この記事を読めば、あなたは自信を持って最適な保険を選び、効果的な節税と資産形成を同時に進めることができるようになるでしょう。
ぜひ最後までお読みください。
医療法人の節税対策、保険をどう選ぶ?
この章では、なぜ医療法人の節税対策に保険が有効なのか、そして節税と資産形成を両立させるための基本的な考え方について解説します。
そもそもなぜ医療法人が保険を活用するのか?

医療法人は、事業で得た利益に対して法人税が課せられます。利益が大きくなるほど税負担も重くなるため、節税対策は経営における重要な課題です。
しかし、保険を活用する理由は節税だけではありません。
近年、診療報酬が減少傾向にある一方で、人件費は増加の一途をたどっています。
このような状況下では、将来的に利益が減少し、経営が圧迫されるリスクも無視できません。
そこで重要になるのが、「今ある利益を将来に繰り延べて、不測の事態に備える」という考え方です。
保険は、支払った保険料を「損金」として計上することで、現在の課税所得を減らし、税負担を軽減します。
さらに、多くの保険には「解約返戻金」という仕組みがあります。
この仕組みをうまく利用することで、税金を減らしつつ、将来的に大きなキャッシュとして受け取ることが可能です。
つまり、保険は単なる節税ツールではなく、将来の経営基盤を盤石にするための「利益の積み立て」と「リスクへの備え」を兼ね備えた、戦略的な手段なのです。
節税と資産形成を両立する保険の基本
節税と資産形成を両立させる保険には、いくつかの共通した特徴があります。
それは、「保険料を損金に計上できる」ことと、「将来的に高い解約返戻金が期待できる」ことです。
具体的には、以下のような流れで活用します。
保険料支払い時: 支払った保険料の一定割合を損金に算入し、法人税を圧縮します。
保険期間中: 運用期間が長くなるほど、解約返戻金が支払保険料の総額を上回るように設計されている商品を選びます。
解約時: 役員退職金の準備など、必要なタイミングで保険を解約します。その際、受け取った解約返戻金は「雑収入」として計上されますが、退職金と相殺することで課税を繰り延べることができます。
重要なのは、単に税負担を減らすだけでなく、将来のキャッシュフローをどのように増やすかという視点を持つことです。
一般的な保険の税務処理はどうなる?
保険料の税務上の扱いは、保険の種類や契約形態によって大きく異なります。
ここでは、代表的な保険商品の税務処理について解説します。
定期保険(長期平準定期保険や逓増定期保険など)

【特徴】
契約時に定めた期間(10年間、60歳までなど)のみ保障が受けられる保険です。法人契約では、主に役員や従業員の死亡保障や退職金準備に利用されます。
【税務処理】
保険期間や最高解約返戻率の割合に応じて、支払った保険料を100%損金から10%損金として扱うなど、細かくルールが定められています。最高解約返戻率が高い商品ほど、損金として認められる割合は低くなる傾向があります。
養老保険

【特徴】
満期保険金や死亡保険金が支払われる保険で、生死混合保険とも呼ばれます。満期時には被保険者が生存していても保険金が受け取れるため、福利厚生目的で使われることが多いです。
【税務処理】
従業員全員を対象とした福利厚生目的で加入し、死亡保険金の受取人を遺族、満期保険金の受取人を法人に指定した場合、保険料の50%を損金に計上できます。
終身保険

【特徴】
一度加入すれば一生涯保障が続く保険です。途中で解約すると解約返戻金が受け取れるため、貯蓄性も高いのが特徴です。
【税務処理】
貯蓄性が高いため、保険料の100%を資産に計上します。損金にはできません。
このように、保険を選ぶ際には、税務上のルールを理解した上で、医療法人の目的に合った商品を選ぶことが非常に重要です。この知識を踏まえ、次の章でより具体的な保険活用法を見ていきましょう。
税理士が教える!節税しながら投資もできる保険活用法
医療法人の節税対策として保険を検討する際、多くの方が「医療法人で投資なんてできるの?」と疑問に思うかもしれません。
ここではその疑問にお答えし、医療法人専門の税理士だからこそ知っている、変額保険を活用した具体的な方法を解説します。
「医療法人は投資ができない」というルールと保険の関係
まず大前提として、医療法人は原則として、株式や不動産といった投機的事業を行うことができません。
これは、非営利性が求められる医療法人の公共性を保つために定められた重要なルールです。
しかし、このルールは「保険の契約」まで禁止しているわけではありません。
保険は本来、保障機能を持つ商品であり、資産形成機能を持つものであっても「保険商品」として認められています。
つまり、医療法人は直接的な投資はできませんが、「保険商品」という形であれば、実質的に投資効果のある商品を活用することができるのです。
変額保険が医療法人の投資に適している理由
変額保険は、医療法人が原則として行えない投資を、安全な「保険商品」という枠組みの中で実現するための有効な手段です。
一般的な保険と異なり、支払った保険料は全額が運用されるわけではありません。
特に契約初年度は、保障に必要な経費や手数料が多く差し引かれるため、運用に回せる金額は非常に少ないという特徴があります。
しかし、この経費は年々減少していくため、長期的に継続することで運用効率が向上します。
支払った保険料から経費を差し引いた一部が、「特別勘定」と呼ばれる専用の勘定で運用されます。
この特別勘定で運用される資産の増減によって、将来受け取れる解約返戻金が変動する仕組みです。
これにより、医療法人は変額保険を活用することで、以下のメリットが得られます。
節税効果
最高解約返戻率に応じて支払った保険料を損金に算入し、法人税を圧縮できます。
資産形成
運用が成功すれば、実質的な資産増加につながります。
利益の繰り延べ
運用益は、保険を解約するまで課税対象にならないため、利益の繰り延べが可能です。
【シミュレーション】年間6%の運用で回せた場合
ここでは、年間保険料100万円、運用利回り6%で運用した場合の変額保険のシミュレーションを見てみましょう。

※ご注意ください
上記のシミュレーションは、将来の運用成果を保証するものではありません。
運用実績によっては、払込保険料の総額を下回ることがあります(元本割れのリスクがあります)。
シミュレーションの数値は目安であり、実際の運用結果とは異なります。
危険!返戻率100%未満の保険がNGな3つの理由
節税対策として保険を検討する際、最も注意しなければならないのが「解約返戻率100%未満の保険」です。
一見すると節税効果があるように見えますが、実は大きな落とし穴が潜んでいます。
ここでは、なぜ返戻率100%未満の保険がNGなのか、その理由を専門家が解説します。
専門家が警鐘!「返戻率100%未満」の保険で注意すべきこと
保険の税務処理は、支払った保険料を損金(経費)として計上できるため、法人税を圧縮する効果があります。
しかし、支払った保険料をすべて損金にできるわけではありません。
また、将来保険を解約した際に受け取る「解約返戻金」は、会社の雑収入として課税されます。
もし解約返戻率が100%未満の保険を選んでしまうと、以下の問題が発生します。
税金は減るが、手元のキャッシュも減る
支払った保険料が損金になり節税効果は得られますが、解約時に受け取る金額が支払った総額を下回るため、結果として会社の手元に残るお金が減ってしまいます。本末転倒な結果に
節税のために保険に加入したにもかかわらず、最終的に会社の財産が減ってしまうという、本末転倒な結果を招いてしまいます。
誤解されがちな「税効果+返戻率で100%以上になる」という説明
保険の営業担当者の中には、「税効果を考慮すれば、解約返戻率が100%未満でも最終的にプラスになる」と説明するケースがあります。
例えば、実効税率30%の医療法人が、年間50万円の保険料を支払ったとします。
このうち20万円が損金として認められると、法人税は6万円(20万円×30%)安くなります。
しかし、この「税効果」はあくまで一時的なものであり、将来解約した際に受け取る解約返戻金が、支払った保険料の総額を下回っていれば、会社のキャッシュは最終的にマイナスになってしまいます。
節税効果と解約返戻率を単純に足し合わせる考え方は、会社の最終的なキャッシュの増減を正確に把握できていないため、非常に危険です。
【重要】「キャッシュ増減表」を作成して判断する
では、どのように保険の良し悪しを判断すれば良いのでしょうか?
最も重要なのは、「キャッシュ増減表」を作成して、会社のキャッシュフローがどう変化するかを客観的に見ることです。
キャッシュ増減表とは、保険料の支払いから解約・満期まで、「実際の現金がどう増減するか」を時系列で示したものです。
【キャッシュ増減表の作成手順】
保険料支払いによるキャッシュの減少額を計算する
支払った保険料から、損金算入による節税額を差し引いた金額を計算します。解約返戻金によるキャッシュの増加額を計算する
解約返戻金から、雑収入にかかる法人税を差し引いた金額を計算します。総合的なキャッシュの増減を把握する
最終的に、支払った金額と受け取った金額を比較し、キャッシュがどれだけ増減したかを確認します。
【弊社が使用しているキャッシュ増減表のサンプル】

このキャッシュ増減表を作成することで、表面的な節税効果に惑わされず、本当に会社にとって有益な保険かどうかを正確に判断することができます。
たとえば、こちらのサンプルの長期平準定期保険ではキャッシュ変動として25年経過した時点で148万円がマイナスになっておりますので、その分だけキャッシュが減少するということです。
保険を選ぶ際は、必ずこの作業を行うようにしてください。
まとめ:失敗しない保険選びのために
ここまで、医療法人の節税と資産形成を両立させる保険の活用法について解説してきました。
最後に、失敗しない保険選びのための重要なポイントを再確認しましょう。
重要なのは「最終的なキャッシュの増加」
表面的な節税効果だけに目を奪われてはいけません。
最も大切なのは、保険料の支払いから解約・満期まで、「最終的に会社のキャッシュがどれだけ増えるか」という視点です。
解約返戻率が100%未満の保険は、税金が安くなっても、結果として手元の現金が減ってしまうリスクがあります。
必ず「キャッシュ増減表」を作成し、客観的に判断することが重要です。
専門家である税理士に相談する重要性
医療法人の保険活用には、複雑な税務ルールが絡んできます。
保険商品によって税務処理が異なり、最新の税制改正にも対応しなければなりません。
誤った判断は、思わぬ追徴課税につながるリスクもあります。
弊社のような医療法人専門の税理士に相談することで、
貴院の財務状況や経営計画に合わせた最適な保険選び
将来を見据えたキャッシュフローのシミュレーション
最新の税務ルールに基づいた正確な税務処理
など、多角的な視点からサポートを受けることができます。
「保険で投資をしたい」「適切な保険を選びたい」とお考えの先生は、ぜひ一度、私たち税理士法人シーガルにご相談ください。
私たちは、開業医・医療法人専門の税理士法人として、税務顧問業務のほか、医療法人設立、一般社団法人による診療所開設、医院経営に関するご相談なども幅広く対応可能です。
この記事では、保険について節税しながら投資×返戻率100%未満は注意に焦点を当てて解説しました。しかし、クリニックの節税対策には、他にも役員報酬の見直し、設備投資の活用、医療法人化など、多岐にわたる選択肢が存在します。
これらの対策を単体で実行するのではなく、自院の経営状況に合わせて組み合わせることが、手元に残るお金を最大化するための鍵となります。
クリニックの節税対策の全体像を知りたい方は、「【開業医・医療法人専門税理士解説】クリニック経営者のための節税対策」をご覧ください。
この記事の監修者

税理士法人シーガル
代表社員/
税理士・公認会計士
中込 政博
あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、税理士法人シーガルを設立。税金に関する相談はもちろんのこと、公認会計士ですので、医業経営についてもぜひご相談ください!

税理士法人シーガル
代表社員/
税理士・行政書士
遠藤 大樹
医療特化会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、税理士法人シーガルを設立。医師・歯科医師に対する税務顧問の他、相続税申告や相続対策・医業承継もお任せください!
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