2026.3.19
認定医療法人の役員報酬は3600万円が壁?NGラインと対策を解説
「認定医療法人に移行したいが、今の役員報酬が高すぎると言われないか不安だ」
「3600万円という数字をよく聞くが、本当にそこが壁なのだろうか」
理事長先生から、こうしたご相談をいただくことは少なくありません。認定医療法人には、一定の要件を満たしたうえで持分に対応する相続税の納税猶予や、持分の放棄など一定の場合の免除につながる特例があります。その一方で、役員報酬については「不当に高額にならないような支給基準」が求められるため、ここで足が止まりやすいのも事実です。
結論、認定医療法人に「年額3600万円以下」という一律の法定上限があるわけではありません。 ただし、厚生労働省のQ&Aでは、役員報酬の判断材料として特定医療法人の役員報酬額が参考資料に挙げられており、特定医療法人には役職員一人につき年間給与総額3,600万円以下という明確な基準があります。このため、認定医療法人でも3600万円はかなり強く意識される金額です。
もっとも、3600万円を超えたら即NG、という話でもありません。厚生労働省のQ&Aでは、一般的な役員業務に加えて、医師として夜間当直や休日当直などを恒常的に行っている場合には、一般的な役員報酬額を超える支給でも不当に高額ではないと判断されることがあるとされています。しかも、判断の基準時点は原則として申請時点です。ですから、今の報酬額だけで諦める必要はありません。大事なのは、申請時点までに報酬規程、支給実態、説明資料をどう整えるかです。
- 認定医療法人の役員報酬に明確な上限はある?
- 認定医療法人の役員報酬で3600万円が意識される理由
- 認定医療法人の役員報酬でNGになりやすいケース
- 3600万円を超えているのに、説明資料が薄いケース
- 役員報酬だけを見て、使用人給与や賞与を別で考えているケース
- 勤務実態と報酬額が見合っていないケース
- 法人の経理状況に対して報酬が重すぎるケース
- 規程だけ直して、実態が追いついていないケース
- 認定医療法人の役員報酬が3600万円超でも認定を目指せるケース
- 認定医療法人の役員報酬で申請前に整えたい資料
- 役員報酬規程と、必要なら使用人給与の支給基準
- 役員ごとの実際の支給額がわかる資料
- 勤務実績を示す資料
- 比較のための相場資料
- 規程改定の議事録と、適用時期がわかる資料
- 認定医療法人の役員報酬は、金額より「説明できる状態」が大切です
- 税理士法人シーガルの支援事例
- 関東の医療法人(純資産3億円台)で、理事長報酬の見直しを含めて認定申請の準備を進めたケース
- 関西の医療法人(純資産5億円台)で、院長給与と役員報酬をあわせて整理したケース
- 四国の医療法人(純資産4億円台)で、申請時点に合わせて役員報酬規程を整えたケース
- まとめ
- 認定医療法人の検討は、役員報酬だけで終わらないテーマです
認定医療法人の役員報酬に明確な上限はある?

まず押さえたいのは、認定医療法人の要件は「3600万円以下でなければならない」という単純な線引きではない、という点です。制度上求められているのは、理事等に対する報酬等が不当に高額とならないような支給基準を定めていることです。つまり、審査で見られるのは金額だけではなく、その金額が妥当かどうかです。
ここで注意したいのは、審査対象が「役員報酬」だけではなく、報酬等だという点です。厚生労働省の資料では、報酬等には報酬、賞与、その他の職務遂行の対価として受ける財産上の利益、退職手当が含まれると整理されています。さらに、理事等が使用人として給与や賞与を受けている場合は、役員としての報酬等と、使用人として受ける給与や賞与を併せて評価するとされています。
医療法人では、理事長が院長や医師としての立場を兼ねていることが珍しくありません。そのため、理事長報酬だけを見て「3600万円未満だから大丈夫」と考えるのは危ないです。院長給与、賞与、役員報酬、退職金の設計まで含めて全体で見られると理解しておいた方が安全です。
認定医療法人の役員報酬で3600万円が意識される理由
3600万円がよく話題になるのは、もともとこの数字が特定医療法人の基準だからです。厚生労働省の制度説明では、特定医療法人の承認基準の一つとして、役職員一人につき年間の給与総額が3,600万円を超えないことが明記されています。認定医療法人と特定医療法人は別の制度ですが、認定医療法人のQ&Aでも、役員報酬額の参考資料として特定医療法人の役員報酬額が挙げられています。
加えて、厚生労働省の申請書記載例では、役員報酬規程の例として「理事長 年3,600万円以内」という記載例が示されています。もちろん、これはあくまで記載例であって、認定医療法人の絶対基準を示したものではありません。ただ、実務で3600万円がかなり意識される理由としては十分です。
では、相場感はどうでしょうか。直近公表の第25回医療経済実態調査では、令和6年度の平均給与計として、一般病院(医療法人)の病院長は29,004,897円、一般診療所(医療法人)の院長は28,978,974円でした。中央値は、一般病院(医療法人)の病院長が25,200,000円、一般診療所(医療法人)の院長が22,800,000円です。3600万円はこの水準より一段高く、平均をかなり上回る金額だとわかります。
そのため、3600万円は「絶対上限」ではないが、「説明責任が重くなる金額」と考えるのが実務に近いです。ここをそう捉えておくと、記事タイトルの「壁」という表現も、読者にとってはわかりやすくなります。
認定医療法人の役員報酬でNGになりやすいケース

3600万円を超えているのに、説明資料が薄いケース
最もわかりやすいのは、支給額が高いのに、その理由を客観的に説明できないケースです。厚生労働省のQ&Aでは、判断にあたって一般的な医療法人や民間事業者の役員報酬、従業員給与、当該医療法人の経理状況を考慮するとされています。単に「理事長として頑張っている」「業績が良いから」というだけでは弱いです。
役員報酬だけを見て、使用人給与や賞与を別で考えているケース
これは医療法人でかなり起きやすい論点です。理事長報酬は抑えていても、院長給与や賞与を別建てで受けている場合、審査では合算で見られます。ですから、形式上だけ分けていても、実質的に高額なら整理が必要です。
勤務実態と報酬額が見合っていないケース
厚生労働省のQ&Aでは、一般的な役員業務に加えて更なる勤務実態があれば高額支給も認めうる、としています。逆にいえば、勤務時間、当直、オンコール、手術件数、経営責任の重さなどが十分でないのに高額報酬となっている場合は、不当に高額と見られやすくなります。非常勤に近い関与なのに高い報酬を出しているケースは、とくに説明が難しくなります。
法人の経理状況に対して報酬が重すぎるケース
役員報酬の判断では、法人の規模や利益率も一要素になりますが、厚生労働省は収益額に比例して無制限に役員報酬を認めるものではないと明言しています。売上が伸びているからそのまま報酬も大きく伸ばせる、という考え方は通りません。職員給与とのバランスや、法人に利益を残せているかどうかも見られます。
規程だけ直して、実態が追いついていないケース
ここは見落としがちです。厚生労働省のQ&Aでは、例えば3月に役員報酬規程を改正して4月1日から適正額に下げることにした場合、3月31日時点の申請では要件を満たさず、4月以降の申請なら満たしうると整理しています。つまり、規程の文言だけでは足りず、申請時点でその規程が実際に適用されていることまで求められます。
認定医療法人の役員報酬が3600万円超でも認定を目指せるケース

結論からいうと、3600万円超でも余地はあります。 厚生労働省のQ&Aでは、医療法人の役員としての一般的な業務に加えて、医師として夜間当直や休日当直などを恒常的に行っている場合には、一般的な役員報酬額を超える支給であっても、不当に高額ではないと判断されることがあるとしています。
さらに、厚生労働省は高額な支給理由の説明書類として、医師としての勤務実績(当直、オンコール対応、手術件数等)、これまでの法人への貢献度や地域での活動、医療法人の役職員全体の平均給与などの説明を求めることがあるとしています。つまり、3600万円を超えている場合は、金額そのものよりも、なぜその金額になるのかを資料で示せるかどうかが重要です。
また、判断時点は原則として申請時点です。したがって、現在の役員報酬が高い場合でも、申請前に規程と支給実態を適正化し、その状態で申請するという進め方はありえます。ただし、先ほど触れたとおり、改正後の規程がまだ適用前であれば足りません。申請のタイミングまで含めて設計する必要があります。
実務では、ここを言葉だけで説明しようとして失敗しやすいです。高額報酬を維持したいのか、申請前に見直すのかで、用意すべき資料もスケジュールも変わります。認定医療法人の役員報酬は、税務の数字だけで決まる話ではなく、勤務実態と法人運営の説明まで含めて整理するテーマだと考えた方がいいです。
認定医療法人の役員報酬で申請前に整えたい資料
役員報酬規程と、必要なら使用人給与の支給基準
まず基本になるのが、役員報酬規程です。理事長、常勤理事、非常勤理事、監事など、勤務形態に応じた区分と支給方法がわかる形で整えておく必要があります。理事が使用人として給与や賞与を受けている場合は、使用人としての給与等の支給基準もあわせて整理が必要です。
役員ごとの実際の支給額がわかる資料
厚生労働省の申請書記載例では、直近に終了した会計年度における役員ごとの支給額を記載し、申請時点で役員報酬額を変更している場合は、申請時点の報酬金額もあわせて記載するとされています。規程だけでなく、実際にどう支給しているかが見られる、ということです。
勤務実績を示す資料
3600万円超や、それに近い水準の報酬を説明するなら、勤務実績の裏付けが必要です。夜間当直表、休日当直表、オンコール対応記録、手術件数、診療日数、理事会出席状況、経営上の担当業務など、役員としての責務と医師としての実働が見える資料を揃えます。厚生労働省のQ&Aでも、高額な支給理由の説明資料としてこうした情報が挙げられています。
比較のための相場資料
自院の中だけで説明すると、どうしても主観的になります。そのため、医療経済実態調査などの公的データ、自院の職員平均給与、法人規模や医療機能に照らした比較資料を並べて、突出の程度をどう見るかを整理しておくと説明しやすくなります。厚生労働省のQ&Aでも、医療経済実態調査、特定医療法人の役員報酬額、人事院調査が参考資料として挙げられています。
規程改定の議事録と、適用時期がわかる資料
申請時点で判断される以上、理事会や社員総会の決議日、改定内容、適用開始日がわかる資料は欠かせません。とくに、申請日より後に効く改定では足りないため、スケジュール管理がそのまま認定の可否に響きます。ここは後回しにしない方がいいです。

認定医療法人の役員報酬は、金額より「説明できる状態」が大切です
認定医療法人の役員報酬は、「3600万円以下なら安心」「3600万円超なら諦めるしかない」という話ではありません。法令上は一律の金額基準ではなく、不当に高額かどうかを個別に判断する仕組みです。その判断では、一般的な報酬水準、従業員給与、法人の経理状況、勤務実態、そして申請時点の規程と支給実態が見られます。
そのため、本当に大事なのは金額そのものより、その金額を説明できる状態になっているかどうかです。役員報酬規程だけでなく、使用人給与、賞与、退職手当、勤務実績、議事録、比較資料まで揃ってはじめて、審査に耐える形になります。
税理士法人シーガルの支援事例
※守秘義務の観点から、地域・純資産額の一部を調整しています。
関東の医療法人(純資産3億円台)で、理事長報酬の見直しを含めて認定申請の準備を進めたケース
関東の純資産3億円台の医療法人から、認定医療法人への移行を見据えたご相談をいただきました。ご相談時の大きな論点は、理事長の報酬水準が高く、申請時点でどのように整理すべきかという点でした。
このケースでは、月額の役員報酬だけでなく、院長給与、賞与、退職手当の設計まで含めて全体像を確認しました。そのうえで、理事長としての経営責任に加え、診療日数、当直、オンコール対応、訪問診療件数などを整理し、金額の根拠として説明できる資料を順番に揃えました。
認定医療法人の検討では、単に「報酬額が高いかどうか」だけで結論は決まりません。実際には、報酬規程の内容、実際の支給状況、勤務実態、申請のタイミングまで含めて見ていく必要があります。このケースでも、申請時点までに何を整えるべきかを明確にしたことで、役員報酬の論点を他の認定要件とあわせて整理しやすくなりました。
関西の医療法人(純資産5億円台)で、院長給与と役員報酬をあわせて整理したケース
関西の純資産5億円台の医療法人では、「役員報酬そのものは極端に高くないが、このまま認定医療法人を検討してよいのか」というご相談がありました。確認を進めると、理事長報酬だけでなく、院長給与や賞与も含めて全体を見直した方がよい状態でした。
このケースでは、役員としての報酬と、医師としての給与の区分を整理したうえで、規程、議事録、実際の支給状況にズレがないかを確認しました。見た目の役員報酬額だけでは問題が分かりにくくても、全体で見ると説明が弱くなるケースは少なくありません。
認定医療法人の役員報酬は、月額の役員報酬だけを見て判断しにくいテーマです。このケースでも、院長給与や賞与まで含めて支給の考え方を整理したことで、申請に向けた論点が明確になりました。
四国の医療法人(純資産4億円台)で、申請時点に合わせて役員報酬規程を整えたケース
四国で診療所を運営する純資産4億円台の医療法人では、役員報酬の見直し自体は決まっていたものの、認定申請のタイミングをどう考えるべきかが課題になっていました。
このケースでポイントになったのは、金額そのものよりも、いつから新しい報酬規程を適用し、申請時点でどの状態になっているかでした。理事会の決議日、適用開始日、実際の支給開始時期を確認し、申請時点で説明が通る状態を整える必要がありました。
認定医療法人の検討では、「いくらにするか」だけでは足りません。どの規程を、どの時点で、実際の支給にどう反映させるかまで整理してはじめて、申請準備が進めやすくなります。このケースでも、申請書類だけでなく、日々の運営実務とあわせて整えることが重要でした。
まとめ
認定医療法人の役員報酬には、法令上の一律上限があるわけではありません。もっとも、実務では3600万円がひとつの目安として意識されやすく、この水準を超える場合は、勤務実態や法人の状況を踏まえた説明がより重要になります。
また、審査で見られるのは、月額の役員報酬だけではありません。院長給与、賞与、退職手当、役員報酬規程、議事録、申請時点での支給実態まで含めて、全体として整合が取れているかが問われます。
そのため、「今の金額で申請できるか」だけを切り出して考えるのではなく、申請までのスケジュール、報酬の見直し、必要書類の整備をまとめて考えることが大切です。
認定医療法人の検討は、役員報酬だけで終わらないテーマです
認定医療法人への移行は、申請書類を作れば終わる手続ではありません。役員報酬の金額だけでなく、院長給与との整理、決算の着地、理事会議事録の整備、持分対策、将来の医業承継や相続まで、ひとつながりで見ていく必要があります。
だからこそ、単発で「この金額なら大丈夫か」を確認するだけでは、判断しきれない場面が出てきます。実際には、今の報酬水準をどう考えるか、いつ見直すか、申請時点までに何を整えるかといった論点が続きます。認定医療法人の検討は、日々の税務や法人運営と切り離しにくいテーマです。
私たち税理士法人シーガルは、開業医・医療法人専門の税理士法人です。税務顧問では、日々の会計や申告だけでなく、医療法人設立、相続、医業承継まで含めて、理事長先生ごとの状況に合わせて整理しています。認定医療法人の検討でも、今の役員報酬で進められるか、どこを見直すべきか、どの順番で準備を進めるべきかを、日々の数字を踏まえて考えやすいのが税務顧問の強みです。
無料相談では、まず現在のお悩みや検討状況を伺い、どの論点を整理する必要があるかを確認します。認定医療法人のように、ひとつの判断が申請全体やその後の承継対策にもつながるテーマでは、早い段階で全体像を整理しておくことが大切です。
「理事長報酬が3600万円を超えているが、このまま進められるのか」
「院長給与や賞与も含めて、どこまで見直せばよいのか」
「認定申請に向けて、いつから準備を始めるべきか」
「役員報酬だけでなく、将来の承継も含めて整理したい」
このようなお悩みがある理事長先生は、自己判断だけで進める前に、一度全体像を整理してみてください。
認定医療法人の検討では、金額の大小だけでなく、どの時点で、どの内容を、どこまで整えるかが結果を左右します。
役員報酬の論点も、単体で見るのではなく、税務と承継を含めた全体の中で考えることが大切です。
この記事の監修者

税理士法人シーガル
代表社員/
税理士・公認会計士
中込 政博
あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、税理士法人シーガルを設立。税金に関する相談はもちろんのこと、公認会計士ですので、医業経営についてもぜひご相談ください!

税理士法人シーガル
代表社員/
税理士・行政書士
遠藤 大樹
医療特化会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、税理士法人シーガルを設立。医師・歯科医師に対する税務顧問の他、相続税申告や相続対策・医業承継もお任せください!
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