2025.8.28
採用したのにすぐ退職…を防ぐ!スタッフが定着するクリニックの秘訣

「せっかく採用したのに、すぐに辞めてしまった…」
クリニック経営者の多くが一度は直面するこの悩み。多大な時間とコストをかけて採用した人材が、わずか数ヶ月で退職してしまうと、その損失は計り知れません。
実は、スタッフの定着率は、入社初日にすでに決まっています。求人票の魅力や面接での見極めも重要ですが、本当に優秀なスタッフに長く働いてもらうには、入社後のフォローアップが不可欠です。
この記事では、スタッフが「このクリニックで長く働きたい」と感じるような、具体的な定着率向上の秘訣を解説します。
入社後のミスマッチを防ぐ「採用前の戦略」
せっかく採用したスタッフが、入社後に「思っていたのと違った」と感じ、早期に退職してしまうケースは少なくありません。実は、このミスマッチは入社後ではなく、採用前の段階で防ぐことができます。
ここでは、面接や求人票を通じて、ミスマッチを未然に防ぐための戦略を解説します。
採用面接は「見極め」の場ではない
多くの経営者が、面接を「応募者を見極める場」だと考えています。もちろん、応募者のスキルや人柄を判断することは重要ですが、それ以上に「双方向のすり合わせ」の場であると捉えることが大切です。
クリニックの「ありのまま」を伝える
業務のやりがいだけでなく、大変な部分や課題も正直に伝えましょう。
たとえば、「繁忙期には残業が発生すること」や「新患対応で忙しい日が多いこと」などを具体的に共有します。これにより、応募者は入社後の働き方を具体的にイメージでき、ネガティブなギャップを減らすことができます。
応募者の本音を引き出す質問術

面接では、応募者の経験やスキルだけでなく、本音や価値観を引き出すことが、入社後のミスマッチを防ぐ上で不可欠です。
ここでは、応募者が本当に求めていることや、隠れた強みを見抜くための質問術を解説します。
「前の職場で一番やりがいを感じたことは何ですか?」
この質問は、応募者の仕事に対するモチベーションの源泉を探るためのものです。給与や待遇といった条件面だけでなく、仕事そのものに何を求めているのかが分かります。
「クリニックのどんな点に魅力を感じましたか?」
この質問から、応募者が自院をどれだけ研究してきたか、そして応募の動機がどれだけ明確かを見極められます。
「苦手な患者さんやスタッフへの対応方法は?」
この質問は、応募者のコミュニケーション能力や問題解決能力を測るものです。実際の業務を想定した質問をすることで、応募者がどのように困難な状況を乗り越えるかを具体的に知ることができます。
「入職後、3ヶ月でどんなことを達成したいですか?」
この質問は、応募者の仕事への意欲や成長への意識を確認するものです。
ただし、面接時の質問内容や採用基準を間違えると、後々の労務トラブルにつながる可能性があります。
採用面接での質問の仕方や採用基準、健康状態の確認方法など、法律上の注意点を知りたい先生は、その採用大丈夫?医療専門税理士が教えるクリニック労務トラブル回避策をぜひご覧ください。

自院に合った人材を惹きつける「求人票」の力
ミスマッチを防ぐための最初の関門は、やはり求人票です。求人票は単なる条件の羅列ではなく、クリニックの「リアル」を伝えるツールとして活用しましょう。
業務内容を具体的に記載する
「看護師業務全般」「医療事務業務」といった漠然とした表現ではなく、「一日平均〇〇名の患者さん対応」「レセプト業務は専門スタッフが担当」など、具体的な業務内容や分担を明記します。
クリニックの理念や雰囲気を伝える
「当院の強みはチームワークです」といった抽象的な言葉だけでなく、「定期的にチームミーティングを行い、患者さん情報の共有を徹底しています」など、具体的なエピソードを添えましょう。
期待する役割を明確にする
「チームのムードメーカーとして活躍してほしい」「患者さん一人ひとりに寄り添った対応を期待します」など、入社後の役割を具体的に示すことで、応募者は自分に合っているかを判断しやすくなります。
採用したい人材を引き寄せる求人票の具体的な書き方について、さらに詳しく知りたい先生は【例文あり】クリニック求人票の書き方|求職者に響く募集要項作成術をご覧ください。

入社初日が定着のカギを握る
採用したスタッフが「すぐに辞めてしまった」というケースの多くは、入社直後の不安が解消されずに放置されることから生じます。入社初日とそれに続く数日間は、新人がクリニックの文化やチームの一員として受け入れられたと感じるための最も重要な期間です。この時期をどう過ごすかが、その後の定着率を大きく左右します。
ここでは、新人が感じる3つの不安に焦点を当て、それらを解消するための具体的なアクションを解説します。
新人が感じる「3つの不安」とは

新人は、新しい環境に足を踏み入れた瞬間から、以下のような不安を抱えています。
環境への不安
「自分の席はどこだろう?」「休憩室はどこ?」「ロッカーの使い方は?」など、基本的なクリニックのルールや設備の使い方が分からず、困惑します。人間関係への不安
「この人はどんな人だろう?」「自分はうまくクリニックに馴染めるだろうか?」といった、人間関係の構築に対する不安です。話しかけるきっかけが見つからず、孤独を感じることもあります。業務内容への不安
「マニュアル通りにできるかな?」「患者さんの前で失敗したらどうしよう?」といった、業務遂行能力に対する不安です。新しい業務内容やクリニック独自のルールを覚えることにプレッシャーを感じます。
これらの不安が解消されないまま放置されると、新人は「ここに自分の居場所はない」と感じ、早期退職につながる可能性が高まります。
オリエンテーションで不安を取り除く
これらの不安を解消するために、入社初日に丁寧なオリエンテーションを実施しましょう。
クリニックの理念とビジョンを共有する
院長自身が、なぜこのクリニックを開業したのか、どのような患者さんに貢献したいのかを直接話すことで、新人は働く目的と価値を理解し、クリニックへの帰属意識が高まります。
スタッフ全員に新人を正式に紹介する
業務に入る前に、休憩時間などを利用して、新人の自己紹介の場を設けましょう。名前だけでなく、簡単な趣味や経歴を共有することで、他のスタッフも話しかけやすくなります。
「クリニックガイド」を渡す
業務マニュアルだけでなく、ロッカーの場所、休憩時間のルール、電子カルテのログイン方法など、新人が初日に困りがちな情報をまとめた簡易的なガイドを用意しておくと非常に親切です。
初日の業務をシンプルにする
入社初日から多くの業務を任せるのではなく、まずは「電子カルテの入力練習」「簡単な備品整理」など、小さな成功体験を積めるようなタスクを割り当てましょう。
成長を支援するOJTと教育体制
新人スタッフが、入社初日の不安を乗り越えたとしても、その後の成長をサポートする体制がなければ、再びモチベーションを失い、早期退職につながる可能性があります。スタッフの定着には、継続的な学びと成長を支援する教育体制が不可欠です。
ここでは、日々の業務を通じてスタッフを育てるOJT(On-the-Job Training)の具体的な方法と、教育体制を構築する上でのポイントを解説します。
放置は厳禁!「メンター制度」のススメ

新人を現場に「放置」することは、不安を再燃させ、早期退職を招く最も危険な行為の一つです。新人の定着を促すには、安心して質問や相談ができる専属のサポート役が必要です。
メンター制度の導入
経験豊富な先輩スタッフを「メンター(指導役)」として、新人スタッフ一人ひとりに割り当てましょう。
メンターは、業務の指導だけでなく、クリニックのルールや人間関係の相談役も担います。
入社後数日間は一緒に昼食をとるなど、業務以外の時間でもコミュニケーションを図る機会を設けることで、新人は「この人に聞けば大丈夫」という安心感を得ることができ、孤独を感じることなく業務に集中できます。
メンターの役割を明確にする
メンターには、「新人の成長をサポートする」「定期的に面談を行う」「困っていることがないか声をかける」といった具体的な役割を伝え、そのための時間を確保してあげましょう。
段階的な目標設定でモチベーションを維持
人は、自分がどこに向かっているのか分からなくなると、モチベーションを失いがちです。新人スタッフが成長を実感し、やりがいを感じ続けるためには、明確で達成可能な目標が必要です。
短期的な目標を設定する
入社1週間、1ヶ月、3ヶ月といった短いスパンで、「電子カルテの基本操作を覚える」「患者さんの顔と名前を一致させる」「簡単な受付対応を一人でこなせるようになる」といった具体的な目標を一緒に設定しましょう。
成功体験を積み重ねる
小さな目標を達成するたびに、「〇〇ができるようになったね、素晴らしい!」と具体的に褒めることで、新人は「自分は成長している」という実感を得ることができます。
この成功体験の積み重ねが、次なるステップへの自信となり、長期的なモチベーション維持に繋がります。
評価とフィードバックでキャリアを描く
入社初日の不安を乗り越え、日々のOJTでスキルを身につけたスタッフも、自分の仕事が正当に評価されなければ、モチベーションを維持することはできません。スタッフの定着には、日頃の頑張りを認め、成長を促すための評価とフィードバックの仕組みが不可欠です。
特に小規模クリニックでは、「わざわざ評価制度なんて…」と感じるかもしれません。
しかし、評価を「頑張りを見える化する」ことだと捉えることで、スタッフとの信頼関係を築くことができます。ここでは、不満の芽を摘み、スタッフが長期的なキャリアを描けるような方法を解説します。
不満の芽を摘む「定期面談」の重要性
スタッフの不満や悩みは、気づかないうちに溜まり、ある日突然退職という形で表面化することがあります。これを防ぐためには、不満が小さなうちに発見し、解決する機会を定期的に設けることが重要です。
定期面談を制度化する
院長やメンターが、月1回や四半期に1回など、定期的にスタッフと1対1で話す時間を作りましょう。
この面談は、業務の進捗確認だけでなく、「最近困っていることはない?」「働き方で改善してほしいことはある?」といった、本音で話し合える場にすることが大切です。
「話を聞く」ことに徹する
面談の目的は、スタッフの意見や悩みを傾聴することです。一方的に指導するのではなく、スタッフが安心して話せる雰囲気を作りましょう。
聞き取った内容は、メモを取り、後で振り返れるようにしておくことで、スタッフは「自分の意見を真剣に受け止めてくれている」と感じ、信頼関係が深まります。
公正な評価が「頑張りを見える化」する

頑張りが正当に評価される仕組みがあることは、スタッフの働く意欲を維持する上で欠かせません。
小規模クリニックでも、公正な評価を「見える化」することで、スタッフのモチベーションを維持できます。
評価の「見える化」をシンプルに行う
大規模な評価シートは不要です。
「〇〇ができるようになったね」「先月の患者さん対応、すごく良かったよ」など、具体的な行動を言葉で伝えましょう。日々の業務での小さな成果を、その場で積極的に褒めることで、スタッフは自分の頑張りが院長先生に届いていると実感できます。
評価を給与やポジションに反映する:
「昇給の基準は、患者さんからの感謝の声〇件、チームへの貢献度、業務知識の向上を総合的に判断します」といった、シンプルで明確な基準をスタッフに伝えましょう。
これにより、スタッフは自分が何を目指して頑張ればいいのかを理解し、「リーダー候補」といった長期的なキャリアパスを描くことができます。
まとめ:採用した人材を『資産』に変える
スタッフの早期退職は、単なる欠員ではなく、クリニックにとって大きな「投資の損失」です。多大な時間とコストをかけて採用した人材がすぐに辞めてしまうと、その分、新たな採用コストや教育コストが繰り返し発生してしまいます。
この記事では、スタッフの定着率を上げるために、入社前の戦略から入社後のフォローアップまで、一貫したアプローチが重要であることを解説しました。
採用前の段階から、正直な情報提供と適切な面接を通じてミスマッチを防ぐ。
入社直後は、丁寧なオリエンテーションやメンター制度で不安を解消し、心理的な安全を確保する。
入社後も、継続的な教育と公正な評価で成長を支援し、モチベーションを維持する。
これらは全て、採用した人材を単なる労働力ではなく、クリニックの成長に貢献する「貴重な資産」へと変えるための戦略です。
ぜひ、今回の記事で解説したポイントを実践し、スタッフが自律的に働き、活気あふれるクリニックを築いてください。
私たち税理士法人シーガルは、開業医・医療法人専門の税理士として、税務顧問業務のほか、医療法人設立、一般社団法人による診療所開設、医院経営に関するご相談なども幅広く対応可能です。
「求人票の書き方で悩んでいる」「採用してもすぐ辞めてしまう…」とお考えの先生は、ぜひ一度、私たちにご相談ください。
クリニックのスタッフ採用・育成・定着について、さらに深く知りたい方は、「【クリニック向け】優秀なスタッフ採用・育成・定着の完全ガイド」をぜひご覧ください。
この記事の監修者

税理士法人シーガル
代表社員/
税理士・公認会計士
中込 政博
あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、税理士法人シーガルを設立。税金に関する相談はもちろんのこと、公認会計士ですので、医業経営についてもぜひご相談ください!

税理士法人シーガル
代表社員/
税理士・行政書士
遠藤 大樹
医療特化会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、税理士法人シーガルを設立。医師・歯科医師に対する税務顧問の他、相続税申告や相続対策・医業承継もお任せください!
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