2025.8.15
開業医・医療法人専門税理士解説|クリニックの設備投資で節税になる?

「高額な医療機器を導入したいけれど、税金の負担が心配…」
「クリニックの設備投資は、節税に繋がると聞いたけど本当?」
クリニックを経営されている先生方の中には、このようなお悩みや疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
設備投資は、医療の質を高めるために不可欠ですが、多額の費用がかかります。その費用を経費として計上し、税金対策に繋げたいと考えるのは当然のことです。しかし、誤った認識で設備投資を行うと、かえって資金繰りを悪化させるリスクもあります。
この記事では、医療法人・開業医専門の税理士である私たちが、クリニックの設備投資が節税になる仕組みについて、初心者の方でも分かりやすく解説します。
具体的には、減価償却費の基本から、知っておくべき特例制度、そして税務調査で指摘されやすいポイントまで、実務に即した情報をお届けします。この記事を読めば、設備投資を賢く行い、無理なく節税につなげるための具体的な方法が理解できます。
ぜひ最後までお読みいただき、今後のクリニック経営にお役立てください。
はじめに:クリニックの設備投資は節税になるのか?
結論:節税効果はあるが注意が必要
結論からお伝えすると、クリニックの設備投資は、節税に繋がります。
ただし、何も考えずに高額な設備を導入すれば良いというわけではありません。設備投資による節税の仕組みを正しく理解し、計画的に実行することが大切です。
設備投資は、医療機器やシステムの購入にかかった費用を、減価償却費という形で数年にわたって経費として計上することができます。これにより、その年の課税対象となる利益を圧縮し、法人税や所得税といった税金の負担を軽減する効果が期待できます。
しかし、減価償却のルールや、適用できる税制優遇措置には細かな規定があります。これらを無視して投資を行うと、かえって資金繰りを悪化させたり、税務調査で指摘を受けたりするリスクも伴います。
そのため、設備投資は、節税効果だけでなく、クリニックの経営状況全体を考慮して慎重に判断することが重要です。
この記事でわかること
この記事では、クリニック経営者の皆様が、設備投資を賢く節税に活かすために知っておくべきポイントを、専門家である税理士の視点からわかりやすく解説します。具体的には、以下の内容を網羅しています。
設備投資が節税になる基本的な仕組み(減価償却)
30万円未満の資産や特定の設備に適用できる税制優遇制度
中古車など資産購入時の節税の注意点
設備投資で失敗しないための注意点や税務調査対策
この記事を最後までお読みいただくことで、設備投資を単なる経費ではなく、クリニック経営を向上させるための有効なツールとして活用できるようになります。
設備投資による節税の基本的な仕組み「減価償却」とは
減価償却のルールと計算方法
高額な医療機器やパソコンなどの設備は、一度購入した費用を全額その年の経費として計上することはできません。なぜなら、これらの資産は購入した年に限らず、数年にわたってクリニックの収益に貢献すると考えられるからです。
そこで用いられるのが「減価償却」という仕組みです。
減価償却とは、取得した資産の費用を、その資産が使用できる期間(耐用年数)に応じて少しずつ経費として計上していく会計処理のことです。この減価償却費が毎年、所得から差し引かれるため、税負担を軽減する効果があります。
減価償却費の計算方法には、主に以下の2つがあります。
定額法: 毎年、同額の減価償却費を計上する方法です。
定率法: 毎年、未償却残高に一定の率をかけて減価償却費を計上する方法です。初年度の償却費が最も大きくなります。
具体的な計算例を見てみましょう。 たとえば、取得価額500万円、耐用年数5年の設備を購入した場合、以下のようになります。(※定額法償却率0.200、定率法償却率0.400、改定償却率0.500、保証率0.108で計算)
定額法(毎年同額を計上) | 定率法(初年度に多く計上) | |
|---|---|---|
1年目 | 500万円 × 0.200 = 100万円 | 500万円 × 0.400 = 200万円 |
2年目 | 500万円 × 0.200 = 100万円 | (500万円 - 200万円) × 0.400 = 120万円 |
3年目 | 500万円 × 0.200 = 100万円 | (500万円 - 320万円) × 0.400 = 72万円 |
4年目 | 500万円 × 0.200 = 100万円 | (500万円 - 392万円) × 0.500 = 54万円 |
5年目 | 500万円 × 0.200 = 100万円 | (500万円 - 446万円)= 54万円 |
この比較をグラフで示すと、両者の違いが一目で分かります。
【定額法グラフ】

【定率法グラフ】

このように、定額法は毎年安定して一定額を経費にできるため、利益予測がしやすいというメリットがあります。一方、定率法は初年度の節税効果が高いため、開業初年度など、初期投資の負担を抑えたい場合に有効です。
どちらの計算方法を選ぶかによって、節税できるタイミングが変わってきます。
一括償却資産・少額減価償却資産の特例
しかし、すべての資産が減価償却の対象となるわけではありません。一定の条件を満たせば、購入した年に一括で経費計上できる特例制度があります。
1. 一括償却資産(取得価額が10万円以上20万円未満の資産)
取得価額が10万円以上20万円未満の資産は、3年間で均等に経費として計上できます。減価償却とは異なり、定額で計上できるため、会計処理がシンプルになります。
2. 少額減価償却資産の特例(取得価額が30万円未満の資産)
青色申告をしている中小企業者(医療法人も含む)は、取得価額が30万円未満の資産を、年間300万円までその年の経費として一括で計上できます。この特例を活用すれば、決算直前の設備投資で大きな節税効果を得ることも可能です。
クリニックの設備投資で活用できる具体的な節税制度
中小企業投資促進税制

設備投資による節税効果をさらに高めるには、国が設けている優遇税制を積極的に活用することが重要です。その代表例が「中小企業投資促進税制」です。
この制度は、青色申告書を提出する中小企業者等が、指定された設備(機械装置、工具、器具備品、ソフトウェアなど)を取得した場合に、以下のいずれかの優遇措置を受けられるものです。
特別償却
取得価額の30%を、通常の減価償却とは別に、初年度に経費として計上できる税額控除
投資額の一定割合(7%)を法人税または所得税から差し引く
この制度の対象となるソフトウェアには、電子カルテシステムも含まれます。高額になりがちな電子カルテシステムの導入費用を、この制度で賢く節税できる可能性があります。
税額控除は、資本金3,000万円以下の法人または個人事業主が選択できる優遇措置です。全ての設備が対象になるわけではなく、事前に要件を確認する必要がありますが、この制度はクリニック経営者にとって非常に大きな節税効果をもたらす可能性があるため、検討する価値のある制度です。
中古車の購入も節税になる?
中古車の購入も、設備投資と同様に節税対策として活用できます。
特に中古車は法定耐用年数が短いため、購入費用を短期間で一括して経費にできるという大きなメリットがあります。例えば、耐用年数が短い中古車であれば、購入した年にほぼ全額を経費として計上し、大きな節税効果を得ることが可能です。
ただし、中古車の購入による節税には、車種や年式、利用状況など、いくつかの注意点があります。詳細については、「医療専門税理士解説|医療法人で買った車は経費?何台まで?高級車は?」という記事で詳しく解説していますので、こちらも合わせてご確認ください。

設備投資と税務上の注意点
税金対策だけでなく、キャッシュフローも考慮する
節税は、クリニックの経営を安定させる上で重要ですが、節税ばかりに意識が向いてしまうと、かえって経営を圧迫するリスクがあります。
設備投資は大きな出費です。たとえ税金が減ったとしても、手元に残る現金(キャッシュフロー)が減ってしまっては、その後の経営に支障をきたす可能性があります。
キャッシュフローを健全に保つためには、以下の計算式で「投資後に手元に残るお金がプラスになるか」を確認することが大切です。
税引き後の利益 + 減価償却費 - 借入金の年間返済額 = 投資後のキャッシュフロー
この計算式でプラスになるように、無理のない設備投資計画を立てることが重要です。
そのため、設備投資を行う際は、節税効果だけでなく、本当に必要な設備か、借入金返済を含めた資金繰りは問題ないかを事前にしっかりと検討することが大切です。
税務調査で指摘されやすいポイント
設備投資による減価償却は、税務調査でも特にチェックされやすい項目の一つです。以下のような点に注意が必要です。
固定資産の不自然な耐用年数
購入した固定資産の耐用年数を不自然に短縮し、過大な減価償却費を計上していないか私的利用の有無
購入した資産をプライベートでも使用していないか
これらの点を明確に説明できるよう、日頃から証拠書類を整理し、専門家である税理士に相談しておくことが重要です。
まとめ:設備投資は専門家と計画的に進めましょう

設備投資のタイミングや方法でお悩みの方へ
ここまで、設備投資を節税に活かすための基本的な仕組みや具体的な方法について解説してきました。しかし、ご自身のクリニックに最適な設備や、どのタイミングで投資すべきか、という判断は非常に難しいものです。
無理な設備投資で資金繰りを悪化させないためにも、専門家である税理士に相談し、中長期的な視点で計画を立てることが成功への鍵となります。
専門家である税理士に相談する重要性
高額な設備投資は、一度実行すると修正が非常に難しく、経営に大きな影響を及ぼします。 税制の複雑さや、適用できる優遇制度の見極め、そしてキャッシュフローの管理など、院長先生ご自身ですべてをカバーするのは非常に困難です。
耐用年数や減価償却の方法ひとつとっても、誤った判断は後々の税務調査での指摘につながるリスクをはらんでいます。
私たちのような開業医・医療法人専門の税理士に相談することで、 最適な設備投資計画・節税効果とキャッシュフローのバランスを考慮したアドバイス・など、専門家の視点から多角的なサポートを受けることができます。
「どの設備に投資すべきか悩んでいる」「設備投資で失敗したくない」とお考えの院長先生は、ぜひ一度、私たち税理士法人シーガルにご相談ください。
私たちは、開業医・医療法人専門の税理士法人として、税務顧問業務のほか、医療法人設立、一般社団法人による診療所開設、医院経営に関するご相談なども幅広く対応可能です。
この記事では、クリニックの設備投資で節税に焦点を当てて解説しました。しかし、クリニックの節税対策には、他にも役員報酬の見直し、設備投資の活用、医療法人化など、多岐にわたる選択肢が存在します。
これらの対策を単体で実行するのではなく、自院の経営状況に合わせて組み合わせることが、手元に残るお金を最大化するための鍵となります。
クリニックの節税対策の全体像を知りたい方は、「【開業医・医療法人専門税理士解説】クリニック経営者のための節税対策」をご覧ください。
この記事の監修者

税理士法人シーガル
代表社員/
税理士・公認会計士
中込 政博
あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、税理士法人シーガルを設立。税金に関する相談はもちろんのこと、公認会計士ですので、医業経営についてもぜひご相談ください!

税理士法人シーガル
代表社員/
税理士・行政書士
遠藤 大樹
医療特化会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、税理士法人シーガルを設立。医師・歯科医師に対する税務顧問の他、相続税申告や相続対策・医業承継もお任せください!
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