2025.6.13
医療専門税理士解説|医療法人で買った車は経費?何台まで?高級車は?
茅ヶ崎駅から徒歩4分の医療法人・個人開業医専門の税理士法人シーガルです。
「医療法人で車を買えば、節税になるって聞いたけど、本当に経費にできるの?」
「何台まで?」
「高級車でも大丈夫?」
こんな疑問をお持ちの先生も多いのではないでしょうか。
たしかに、医療法人で車を購入すると減価償却を通じて経費にでき、節税に繋がるのは事実です。
しかし、安易に車を購入してしまうと、思わぬ税務リスクや落とし穴があることも。
税務調査で指摘を受けないためにも、事前に知っておくべきポイントはたくさんあります。
そこで今回は、医療法人で車を購入し経費にする際に必ず知っておきたいポイントや注意点を、医療専門の税理士が分かりやすく解説します。
この記事は次のような先生に特におすすめです。
・医療法人で車を購入し、賢く節税したいと考えている先生
- 医療法人の車は経費になる?基本的な考え方
- 車の経費性判断の基準:業務で使用しているか
- どのように経費になるのか:減価償却費
- 医療法人が車を経費にする際のよくある誤解
- 誤解1:医療法人・MS法人での台数制限
- 誤解2:二人乗り車両は経費にならない?
- 誤解3:高級車は経費にならない?
- 誤解4:決算月が近くなり利益が出そうなので中古車で節税?中古資産の減価償却
- 誤解5:リセールバリューが悪い方が有利?本当の「節税」を考える
- 誤解6:減価償却終了後に1円で理事長個人に売却して節税
- フェラーリとクルーザーの裁決事例から学ぶ 高額資産の経費性判断のポイント
- 車両をスムーズに経費にするための準備と注意点
- 車両をスムーズに経費にするには
- 準備しておきたいことや注意点
- まとめ
医療法人の車は経費になる?基本的な考え方
医療法人で車を購入したからといって無条件に経費になるわけではありません。
法人の税金計算は「法人税法」という法律に基づいて行われますので、基本的な考え方を抑えていきましょう。
車の経費性判断の基準:業務で使用しているか
まず医療法人で購入した車が経費になるかどうかはどうやって判断すればよいのでしょうか?
端的にいえば、業務で使用している場合には経費になり、業務で使用しておらずプライベートでしか使用しないのであれば経費にはなりません。
医療法人でいえば、通勤・業務上の移動・往診などに使用しているのであれば業務で使用しているといえるでしょう。
逆に、自宅と診療所・病院の距離が近いため徒歩通勤している場合、往診は行っていない場合などは業務で使用しているとは言えない可能性もあります。
どのように経費になるのか:減価償却費
医療法人で購入した車はどのように経費になるのでしょうか?
車は「減価償却」という手続きにより「減価償却費」という名称の経費になっていきます。
減価償却とは、長期間にわたって使用する高額な資産の購入金額(資産の価値)が時間とともに減少するとみなし、その資産を使用する期間(国税庁で定められている耐用年数)にわたって、購入金額を毎年の費用として均等に配分する手続きのことです。
医療法人で新車を購入したときについて具体例でみてみましょう。
【前提条件】
購入金額:600万円
償却方法:定率法(車両は定率法により償却)
耐用年数:6年(国税庁の耐用年数表より)
償却率:0.333(国税庁の償却率等表より)
改定償却率:0.334( 〃 )
保証率:0.09911( 〃 )
償却保証額:594,660円(600万円×0.09911)

車については定率法という方法を用いて以下のように減価償却費を計算します。
1年目:6,000,000円×0.333=1,998,000円
2年目:4,002,000円(6,000,000円ー1,998,000円)×0.333=1,332,666円
3年目:2,669,334円(4,002,000円ー1,332,666円)×0.333=888,888円
また、定率法の場合には「保証率」と「改定償却率」という率があります。
減価償却費が、最低限確保するべき金額の基準である償却保証額(購入金額×「保証率」)を下回りそうな場合、「改定償却率」による算出が行われます。
具体的には4年目の減価償却費を計算する場合、3年目までと同様に減価償却費を計算しますと以下のようになります。
4年目:1,780,446円(2,669,334円ー888,888円)×0.333=592,888円
ただ、計算された金額が償却保証額である594,660円(600万円×0.09911)を下回ってしまうことになりますので、4年目と5年目は改定償却率を用いて以下のように減価償却費を計算します。
4年目:1,780,446円(2,669,334円ー888,888円)×0.334=594,668円
5年目:4年目と同額の594,668円
そして6年目は1円を残し、残り全てを減価償却費として計算します。
6年目:591,110円(1,780,446円ー594,668円ー594,668円)ー1円=591,109円
医療法人が車を経費にする際のよくある誤解
医療専門の税理士として多くの医師や歯科医師の先生方とお話しする中で、医療法人が車を経費にする際に誤解されやすいポイントがいくつか見受けられます。
ここでは、特に注意していただきたい6つの誤解についてご紹介します。
誤解1:医療法人・MS法人での台数制限
「医療法人では●台、MS法人では●台しか車を購入できないですよね?」と質問を受けることがありますが、「車の経費性判断の基準:業務で使用しているか」で記載したように、業務で使用していれば保有台数に制限はありません。
逆に業務で使用していないのであれば1台も経費にならないといえます。
ただし、法人に在籍する役員や従業員の人数が少ないのに複数台所有している場合、所有台数が増えるにつれて、その用途を説明することは難しくなっていくでしょう。
誤解2:二人乗り車両は経費にならない?
その車が経費になるかどうかの判断に、乗車人数やドアの枚数は関係ありません。
誤解1と同様に業務で使用していれば二人乗り車両であったとしても経費になります。
誤解3:高級車は経費にならない?
高級車の定義は人それぞれかと思いますが、基本的には誤解1や誤解2と同様に業務で使用していれば経費になります。
ただし、プレミアムがついたクラシックカーであれば話は異なります。
歴史的価値や希少価値を有して代替性のないものである場合には、購入金額(資産の価値)が時間とともに減少するとはいえず、減価償却をすることができない可能性もありますのでご注意ください。
誤解4:決算月が近くなり利益が出そうなので中古車で節税?中古資産の減価償却
「決算月が近づいてきましたが、今年利益が出そうなので、中古車で節税したほうがよいですか?」と質問を受けることがありますが、少し誤解があるためその理由と知っておくべき注意点について解説します。
まず、中古車が節税に繋がりやすいというのは事実です。
中古車についても新車と同様に、購入金額を減価償却し経費としますが、その際に用いる「耐用年数」について中古資産は異なる取扱いがあります。
国税庁タックスアンサー「No.5404 中古資産の耐用年数」で定められており、以下にポイントを記載いたします。
【中古資産の耐用年数に関するポイント】
使用可能期間での算定:中古資産を取得して事業に供した場合、法定耐用年数ではなく、その事業に供した時以後の「使用可能期間」として見積もられる年数を用いることができます。
簡便法の適用:使用可能期間の見積りが困難な場合は、以下の「簡便法」により算定した年数を用いることができます。
・法定耐用年数の「全部」を経過した資産:その法定耐用年数の20パーセントに相当する年数
・法定耐用年数の「一部」を経過した資産:その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に、経過年数の20パーセントに相当する年数を加えた年数
端数処理と最低年数:上記計算により算出した年数に1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨て、その年数が2年に満たない場合には2年とします。
文章だと分かりづらいため、医療法人で中古車を購入したときの耐用年数を具体例でみてみましょう。
【前提条件】
購入金額:600万円
初年登録年月日:2019年1月15日(車検証より)
中古車納車年月日:2025年2月18日
新車耐用年数:6年(国税庁の耐用年数表より)

まず、中古車納車年月日(2025年2月18日)時点で、初年登録年月日(2019年1月15日)からどれくらいの期間が経過しているかを計算します。
2019年1月15日から2025年1月14日まではちょうど6年です。
そこから2025年2月18日までは1ヶ月が経過しています。
したがって、この車両は新車耐用年数6年の「全部を経過した資産」に該当します。
この場合、簡便法(1)により、新車耐用年数6年 × 20% = 1.2年 と計算できます。
ここで重要なのが、算出された年数に1年未満の端数がある場合は切り捨て、さらに2年に満たない場合は2年とするというルールです。
そのため、この中古車の耐用年数は2年と計算されます。
中古車の耐用年数が分かったところで、実際に減価償却費について具体例でみていきましょう。
【前提条件】
購入金額:600万円
償却方法:定率法(車両は定率法により償却)
耐用年数:2年(中古資産の耐用年数の計算より)
償却率:1.000(国税庁の償却率等表より)

耐用年数が2年の場合には償却率が1.000となります。
これはつまり、購入金額600万円の全額を、初年度に減価償却費として計上できるということです。
そのため、中古資産は購入後すぐに多額の経費を計上できるため、節税に繋がりお得と言われているのです。
ただし、減価償却費については月数按分という考え方があります。
簡単にいえば、購入した初年度は購入した月から決算月までの月数分だけしか減価償却費を計上できないということです。
たとえば今回の例で決算月が2月だとすると、2月18日に納車された場合、減価償却費として計上できるのは600万円 ÷ 12ヶ月 × 1ヶ月 = 50万円のみとなります。
したがって、決算直前になって中古車を購入したとしても期待したほどの節税には繋がりにくいといえます。
誤解5:リセールバリューが悪い方が有利?本当の「節税」を考える
世の中で語られる「節税」の中には、結果的に資金が大きく流出している(損をしている)にもかかわらず、税金が減った分だけを見て「節税になった」と誤解されているケースが少なくありません。
リセールバリューが低い車ほど「節税になる」という話を聞いたことがあるかもしれませんが、これは「損の金額が大きいから税金が減る」という本質を見落としている可能性があります。
この点を具体例で確認してみましょう。
リセールバリューが良い場合(売却益が発生)
【前提条件】
購入金額:600万円
売却時期:購入から3年後
購入から3年後の売却時帳簿価額:178万円
売却金額:400万円(残価率67%)

3年経過時点での車の帳簿上の金額(未償却残高)は178万円です。この車を400万円で売却できたとすると、帳簿価額との差額222万円が車両の売却益となります。
この売却益222万円に対して、法人税・都県市区町村民税の合計税率(仮に30%)を乗じると、約66万円の税金が発生します。
リセールバリューが悪い場合(売却損が発生)
【前提条件】
購入金額:600万円
売却時期:購入から3年後
購入から3年後の売却時帳簿価額:178万円
売却金額:100万円(残価率16%)

同様に3年経過時点での帳簿上の金額は178万円です。この車を100万円で売却できたとすると、帳簿価額との差額78万円が車両の売却損となります。
売却損が発生しているため、この売却自体による税金はゼロです。
リセールバリューが悪い方が税金が少ないため有利に見えるかもしれません。しかし、最終的に手元に残るお金(キャッシュフロー)で考えると、全く異なる結果が見えてきます。

リセールバリューが400万円の場合の方が、手元に残るお金が約234万円多く、トータルで見ればはるかに有利であることが分かります。
その他の売却金額の場合についてもシミュレーションしたものが以下の表になりますので参考までにご覧ください。

このシミュレーションが示すように、リセールバリューが悪ければ悪いほど「有利」というのは大きな誤解です。
確かに税金は少なくなるかもしれませんが、それ以上に売却額が低い分、法人の資金は大きく減少していることになります。
節税は、事業を健全に成長させながら行うべきであり、不要な資金流出を伴う「損」を「節税」と捉えないよう注意が必要です。
車両購入を検討する際は、減価償却による節税効果だけでなく、その車両が将来どれくらいの価値を保つか(リセールバリュー)も総合的に考慮することが、賢い経営判断に繋がります。
誤解6:減価償却終了後に1円で理事長個人に売却して節税
「減価償却が終了した車を1円で理事長個人に売却し、最終的に理事長個人が自動車ディーラーに売却して節税したい」というご相談を受けることがありますが、これは大きな誤解です。
法人が何かを売却する際には、原則として「時価」で金額を算定する必要があります。「時価」とは市場価格のことであり、車の場合には中古車市場の価格を「時価」と考えて問題ありません。
減価償却が終了した車の帳簿価額が1円になっていたとしても、その車が中古車市場の見積もりで100万円の価値があると評価されれば、その車の時価は100万円になるということです。
仮に、この時価100万円の車を1円など時価よりも著しく低い金額で理事長個人に売却した場合、以下のような税務上の問題が発生しますので、ご注意ください。
理事長個人への課税:
実際の売却金額(1円)と時価(100万円)の差額(99万9,999円)は「現物給与」として取り扱われます。この現物給与は役員報酬とみなされ、理事長個人の所得として所得税と住民税が課税されます。
医療法人への影響:
理事長への現物給与は「役員賞与」として扱われます。
税務上、役員賞与は事前に届出を提出しない限り経費にすることはできません。
結果として時価で売却した場合に比べて、医療法人の税負担が増加します。
このように、一見お得に見えるような取引でも、税務上の正しい知識がないと思わぬ課税リスクを招くことになります。
フェラーリとクルーザーの裁決事例から学ぶ 高額資産の経費性判断のポイント
フェラーリとクルーザーが経費として認められるかが争点になった有名な裁決事例がありますのでご紹介いたします。
この裁決事例は、高額な資産が「会社の経費になるか、個人のものとみなされるか」の判断において、「本当に事業で使用されているか」という実態が最も重要であることを明確に示しています。
特に、高級車やクルーザーのような資産は、私的な利用と事業利用の線引きが曖昧になりがちであるため、以下の点がポイントとなります。
事案の概要:
消費者金融業を営むX社が、金融機関の接待や従業員の福利厚生目的で船舶(プレジャーボート)、役員の通勤・出張目的で高級外車(フェラーリ)を取得し、会社の経費としていました。
これに対し税務署は、これらを代表者の個人的なものと判断し、役員賞与と認定しました。X社はこれを不服として国税不服審判所に審査請求しました。
国税不服審判所の判断:
船舶(プレジャーボート):
「事業用とは認められない」と判断
審判所は、X社の主張(接待や福利厚生目的)を認めず、船舶の取得費用を役員賞与と認定しました。その主な理由は以下の通りです。
使用実態の不明確さ:航海日誌など、いつ、誰を、どのような目的で運航したかの記録が全くない。
福利厚生目的の利用規定がなく、全従業員が公平に使用できる状況になかった。
福利厚生として実際に使用された事実が確認できない。
結論:
事業の用に供されたと認めるに足る証拠がなく、代表者への「経済的利益の供与(役員賞与)」と判断されました。
高級外車(フェラーリ):
「事業用と認められる」と判断一方、高級外車(フェラーリ)については、X社の主張(通勤や支店巡回指導)を認め、経費性を承認しました。その主な理由は以下の通りです。
使用実態の客観的証拠:
車検記録から3年間で7,598kmの走行距離が確認された。
代表者には別途、交通費や通勤手当が支給されていなかった。
これらの事実から、実際にX社の事業のために使用されていたことが推認された。
個人的趣味や車種の高級性は関係ない:
車両が個人的趣味で選定された外国製のスポーツカータイプであっても、現実に事業に使用されている事実があれば、その経費性は認められると判断された。
代表者が別に個人所有の外国製車両3台を会社の資産としていない点も考慮された。
結論:
実際に事業の用に供されていたことが推認できるため、税務署の主張は採用されず、会社の経費として認められました。
この裁決事例から学ぶべきこと:
高額な資産、特に個人利用と混同されがちな車両や船舶の経費性を主張する際には、その「事業使用の実態」を客観的に証明できる記録(日報、運行記録、使用規定など)を日頃から残しておくことが極めて重要です。単に「事業用」と主張するだけでなく、その証拠を明確に提示できるかどうかが、税務調査時の判断を左右する大きなポイントとなります。
車両をスムーズに経費にするための準備と注意点
車両をスムーズに経費にするには
繰り返しになりますが、車両を会社の経費として計上するために最も重要な点は、その車両が「業務のために使用されている」ことを、いかにスムーズかつ客観的に説明できるかにあります。
準備しておきたいことや注意点
車両の用途を明確にする:
複数の車両を所有している場合は、それぞれの車両がどのような業務目的で使用されているかを具体的に説明できるようにしておきましょう。(例:往診用、通勤・事業所間移動用、送迎用など)
使用履歴の記録:
いつ、どのような目的で車両を使用したかを記録に残しておくことが重要です。
走行日報や、それに代わる客観的な記録(例:Googleマップのタイムライン、ETC利用履歴、ガソリン給油記録と走行距離の照合など)があると、より信頼性が高まります。
まとめ
医療法人での車両購入は、大きな節税効果が期待できる一方で、税務調査で指摘を受けやすい項目の一つでもあります。
安易な判断は思わぬ課税リスクにつながるため、「業務実態」と「客観的な記録」を常に意識することが不可欠です。
私たち税理士法人シーガルは開業医・医療法人専門の税理士法人ですので税務顧問業務のほか、医療法人設立、一般社団法人による診療所開設、医院経営に関するご相談なども対応可能です。
この記事では、医療法人で買った車は経費になるかに焦点を当てて解説しました。しかし、クリニックの節税対策には、他にも役員報酬の見直し、設備投資の活用、医療法人化など、多岐にわたる選択肢が存在します。
これらの対策を単体で実行するのではなく、自院の経営状況に合わせて組み合わせることが、手元に残るお金を最大化するための鍵となります。
クリニックの節税対策の全体像を知りたい方は、「【開業医・医療法人専門税理士解説】クリニック経営者のための節税対策」をご覧ください。
この記事の監修者

税理士法人シーガル
代表社員/
税理士・公認会計士
中込 政博
あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、税理士法人シーガルを設立。税金に関する相談はもちろんのこと、公認会計士ですので、医業経営についてもぜひご相談ください!

税理士法人シーガル
代表社員/
税理士・行政書士
遠藤 大樹
医療特化会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、税理士法人シーガルを設立。医師・歯科医師に対する税務顧問の他、相続税申告や相続対策・医業承継もお任せください!
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