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JOURNAL

2025.9.23

開業医が知っておくべき運転資金の目安|融資額の決め方と計算方法

開業医の運転資金に関する悩みを税理士に相談する様子

自分のクリニックを開業したいと考える先生は多いでしょう。しかし、その夢を形にするには、診療とは全く違う経営の知識が必要です。特に、開業後の運営を支える「運転資金」をどう確保するかは、大きな不安の種ではないでしょうか。

本記事では、開業医・医療法人専門の税理士法人シーガルが、多くの医師をサポートしてきた経験から、融資を成功に導く運転資金の目安や計算方法を、実践的な視点から徹底解説します。

なお、本記事の解説のベースとなっている事業計画書のテンプレート(Excelファイル)は、ホームページからお問い合わせいただいた方限定でプレゼントしております。ぜひご活用いただき、あなたの開業を成功へと導く確かな一歩となれば幸いです。

そもそも運転資金とは?なぜ必要なのか?

開業後の資金繰りの流れを示す図

運転資金とは、クリニックの運営を続けていくために必要な、日々の支払いに使うお金のことです。たとえば、家賃、人件費、水道光熱費、広告費などがこれにあたります。

特に開業当初は、患者さんが安定して来院するまでに時間がかかります。そのため、毎月の収入が支出を上回るまで、この運転資金がクリニックの経営を支えることになります。

運転資金をしっかり確保しておけば、たとえ開業直後の経営が計画通りにいかなくても、安心して診療に集中できます。事業を軌道に乗せるまでの期間を乗り切るためにも、運転資金の準備は不可欠です。

運転資金の準備は不可欠です。しかし、「どこから借りるか」という融資先の戦略も同じくらい重要です。最適な融資の選び方や金融機関との付き合い方といった全体戦略については、別記事「医師が開業融資を成功させるための完全ガイド|最適な選び方と借り方」で詳しく解説しています。

運転資金の計算方法と融資の目安

いくつかの金融機関に聞いてみたところ、融資額に明確な目安はないという意見でした。しかし、多くの開業医が参考にしているのは、医業費用の3〜6ヶ月分という一般的な目安です。ここでは、ご自身の状況に合わせて、事業計画書テンプレートの「資金計画」「損益計算書+資金繰り表」のシートを活用した具体的な計算方法を解説します。

ここで解説する運転資金の計算方法は、事業計画書を作成するための重要な要素です。事業計画書全体の作成方法やテンプレートの活用法を知りたい方は、別記事「開業医専門の税理士が教える|融資の鍵を握る事業計画書完全ガイド」を併せてお読みください。

STEP1:運転資金なしで事業計画書を作成し、最低限必要な金額を把握する

まず、運転資金を借りない前提で、事業計画書テンプレートの「資金計画」と「資金繰り表」を作成してください。この時、資金残高が最もマイナスになる時点の金額を把握します。

今回の例では、2年目の2月に資金残高が▲12,919千円となっています。これが、開業当初に最低限必要な運転資金の金額です。

運転資金なしの資金繰り表の例
運転資金なしの資金繰り表の例

STEP2:医業費用の何か月分になるか計算する

次に、STEP1で算出したマイナスの金額が、毎月の医業費用の何ヶ月分に相当するかを計算します。

今回の例では、資金不足額が12,919千円なので、これは毎月の医業費用の約2.5ヶ月分に相当します。これにより、客観的な根拠に基づいた運転資金の目安がわかります。

STEP3:余裕を持たせた運転資金を上乗せし、再度シミュレーションする

もし、一般的に言われる医業費用の3〜6ヶ月分に満たない、あるいはもっと余裕を持ちたいと考えるなら、運転資金を上乗せして再度事業計画書を作成します。資金繰り表で、借入後の資金残高が常にプラスになるかを確認しましょう。

今回の具体例では、運転資金として約30,000千円を借り入れたところ、一番低くなっているときでも15,404千円は確保できている状態となりました。これにより、開業後の不測の事態にも対応できる、より堅実な計画となります。

運転資金について融資を受けた場合の資金繰り表の例

借入金は「借金」であり、悪いものだというイメージを持つ方も少なくありません。しかし、事業を成功させる上で、借入金は決して悪いことではありません

むしろ、自己資金だけでは難しい大規模な投資や、事業を軌道に乗せるための運転資金を確保することで、事業の成長を加速させるための大切な手段となります。事業の拡大に合わせて適切に借入金を使うことは、堅実な経営戦略の一つなのです。

仮に年利1.5%で融資を受け、多めに借り入れた分が必要なかったとしても、その利息は微々たるものです。仮に15,000千円を多めに借り入れたとしても、1年間の利息は225千円となります。このわずかなコストで資金繰りの不安を解消し、開業後の経営を安定させられることのメリットは計り知れません。

また、資金計画を作成する際は、事業主の生活費も必ず含めておきましょう。生活費は事業経費とは別ですが、開業当初は事業の利益から捻出できないため、運転資金とは別に個人の生活資金も考慮に入れることが重要です

融資はいくらでも借りられる?上限を決める3つの要因

融資額を決める3つの要因をまとめた図

「返済能力があれば、いくらでも借りられるのではないか?」と考える方もいるかもしれません。しかし、融資額は返済能力だけで決まるわけではありません。

金融機関は、以下の3つの要因を総合的に判断して、最終的な融資額を決定します。

自己資金の割合

開業資金を考える際、自己資金は「使わないことが基本」でありながら、「必要不可欠」なものです。

なぜなら、開業後の運転資金は全額融資でまかなうことが原則だからです。手元にある自己資金は、万が一の資金ショートに備えるための最後の砦として、残しておくべきです。

では、なぜ自己資金が必要なのでしょうか?

それは、融資が実行されるまでの間を繋ぐためです。

通常、開業場所を決めてから融資が実行されるまでには、早くても3ヶ月ほどかかります。しかし、テナント契約の敷金や礼金、前家賃などは、場所を決めてから1ヶ月以内に支払う必要があります。

つまり、融資資金が振り込まれる前に発生する、こうした契約に必要な費用を自己資金として用意しておくことが大切なのです。

具体的な目安としては、開業にかかる総資金の10%~20%にあたる1,000万円から2,000万円程度を準備しておくと良いでしょう。

資金使途の妥当性

借り入れたお金を何に使うのか、その目的(資金使途)が妥当かどうかも、融資額を決定する上で重要です。

事業規模に対して高額すぎる医療機器の導入や、豪華すぎる内装工事などは、「本当に必要な投資なのか?」と厳しく見られます。なぜその投資が必要なのか、それが収益にどうつながるのかを明確に説明できることが不可欠です。

事業計画の実現可能性

金融機関が最も重視するのは、事業計画が「本当にできるのか」という点です。どんなに素晴らしい構想でも、現実離れした売上予測や費用計画では、融資は通りません。

前述の収支計画(シミュレーション)で、根拠に基づいた現実的な数字を示すことが、融資成功の鍵となります。楽観的な数字ではなく、保守的な計画を立てることで、金融機関はあなたの堅実な経営姿勢を評価してくれるでしょう。

まとめ:運転資金の計画も専門家の力を借りよう

この記事では、運転資金の目安や計算方法、そして融資を成功に導くためのポイントを解説しました。

運転資金の計画は、事業計画書全体と密接に関わっています。診療とは異なる専門的な知識が必要なため、ご自身だけで完璧に仕上げるのは簡単ではありません。

私たち税理士法人シーガルは、開業医・医療法人専門の税理士として、運転資金を含む資金計画の作成や融資交渉のサポートも行っています。先生方の開業をトータルでサポートすることが私たちの使命です。

本記事の解説のベースとなっている事業計画書のテンプレート(Excelファイル)は、お問い合わせいただいた方限定でプレゼントしております。ぜひご活用いただき、あなたの開業を成功へと導く確かな一歩となれば幸いです。

この記事の監修者

中込 政博

税理士法人シーガル

代表社員/

税理士・公認会計士

中込 政博

あずさ監査法人・辻本郷税理士法人を経て、税理士法人シーガルを設立。税金に関する相談はもちろんのこと、公認会計士ですので、医業経営についてもぜひご相談ください!

遠藤 大樹

税理士法人シーガル

代表社員/

税理士・行政書士

遠藤 大樹

医療特化会計事務所・税理士法人山田&パートナーズを経て、税理士法人シーガルを設立。医師・歯科医師に対する税務顧問の他、相続税申告や相続対策・医業承継もお任せください!

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